Mozilla Flux

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ServoのWindows版Nightlyが公開 ギーク向けのプレα版

待望のWindows版

窓の杜で既報だが、ServoのWindows版Nightlyが公開されている。ダウンロードページからMSI形式のインストーラを取得することができ、Windows 7以降で動作する。

Servoはモダンかつ高パフォーマンスを謳うブラウザエンジンであり、MozillaはServoの開発過程で得られた成果をFirefoxの基盤となるGeckoに採り入れていく予定だ。その意味で重要なソフトウェアなのだが、Windows版Nightlyの提供は遅れに遅れた。

macOS版とLinux(64bit)版が公開されたのは、2016年6月30日(米国時間。以下同じ)のこと。このときWindows版は近日公開とされ、7月20日が当初の目標であり、現に7月28日にはダウンロード用のリンクもGitHubで公開された。だが、そこからが長かった。Blockerバグが潰されては新しく登録されることが繰り返された。2017年に入っても状況は変わらず、3月14日にはMozilla Corp.でSenior Research Engineerを務めるJack Moffitt氏が次のようにコメントしていた。

We'll be shipping core components of Servo in Firefox releases later this year, focusing on the Windows platform. However, Servo by itself is not web compatible enough yet that you can use it as a replacement for Chrome or Firefox, and so at this stage we have focused on core functionality that is platform agnostic rather than platform specific functionality. What platform specific functionality we do have now is a direct result of the individuals working on Servo making it usable for themselves during development, not the result of targeting deployment for specific OSes.

我々はServoのコアコンポーネントを今年後半にFirefoxのリリース版に投入する予定で、Windowsプラットフォームがその対象となる。しかし、Servoそれ自体は今のところWeb互換性が十分でなく、ChromeやFirefoxの代わりとしては使えない。そのため、現段階で我々はプラットフォーム特有の機能ではなく、プラットフォームに依存しないコア機能に注力している。今あるプラットフォーム特有の機能は、Servoに取り組んでいる個々人が開発の過程で使えるようにしただけで、特定のOSへの展開を狙った結果ではない。

ユーザー規模の大きいWindows版を早く公開すべきとの声もあったが、開発者たちはあくまでも慎重で、4月13日にようやく正式発表(Windows nightly builds now available | Servo Blog)に至った。なお、4月6日にはMozilla Hacksの記事において自分でWindows版Servoをビルドする方法が紹介されている。

日常的な利用には適さず

Nightlyをインストール後、Servo Tech Demoを起動すると、フロントエンドであるBrowser.htmlが表示される。Firefoxの新規タブページのように、所定のページへのリンクとなるタイルが並べられ、上部には検索バーもある。検索バーのさらに上に見える「<」の記号は、戻るボタンだ。

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画面右上にはタブを追加する「+」ボタンがあり、その脇のメニューボタンをクリックすると、タブの切り替え画面に遷移する。この切り替え画面では、既存のタブを閉じることができるほか、ピン留めのボタンをクリックして画面右端にタブバーを固定することも可能だ。

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ミニマリスト的なUIはロケーションバーも排除している。Firefoxとは勝手が違うものの、Microsoft Edgeと同じなのでさほど違和感はないはずだ。デフォルトの検索エンジンはDuckDuckGoに設定されている。一応入力補完機能は備わっているが、処理は遅くあまり使いものにならない。日本語の直接入力にも対応していない。

英語を用いた静的なWebページは大体崩れずに表示できるようだ。表示速度はまちまちで、中には高速に表示されるコンテンツもあるが、概ねもっさりとした印象を受ける。

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他方、マルチバイト対応は限定されており、日本語が上手く表示できるケースはまれだ。

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終了ボタンがないので、ウィンドウを閉じて終わらせる。ただ、正常に終了しないことも多く、タスクマネージャからバックグラウンドプロセスが残っていないか、毎回確認する必要があるだろう。また、ハングもしょっちゅう起きる。エラーメッセージが出てきた際、UIがハングしていたためGitHub上のServoのページへリンクするボタンが押せないことがあった。

ブックマーク機能や履歴の表示機能も実装されておらず、初期設定にないWebページは毎回手入力で呼び出すことになる。本体のみでアップデートを完結させることもできず、更新にはインストーラが必須だ。

以上のとおり、プレα版なので仕方ないが、機能の面でも安定性の面でも完全にギーク向けとなっている。せめてWeb上の各種ベンチマークを完走させられるようになれば、もう少しユーザーを呼び込めると思うのだが、当分先になりそうである。