Mozillaは稼働中のFirefoxから技術的な対話データを収集しているが、最近、その膨大なデータを基にFirefox Public Data Reportを公開した。Let’s be Transparent - The Mozilla Blogや上記サイト内の説明によれば、既に2年前から存在するFirefox Hardware Reportを大幅に拡張したもので、3つのセクションに分かれて統計資料が掲載されており、データは毎週更新されるという。今のところデスクトップ版Firefoxのみが対象となっているけれども、そう遠くないうちにモバイル版の資料も加わるようだ。
初期設定では全世界(Worldwide)の資料が表示される。ブラジル、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、ポーランド、ロシアそして米国の10か国については、個別の資料を見ることもできる。Firefox Public Data Reportは、報道関係者や研究者が参照することはもちろん、Mozillaによるデータの使い方をユーザーに広く知らせる手段ともなることが期待されている。
3つのセクションを順に紹介しよう。1つ目はUser Activityである。デスクトップ版Firefoxの利用者数や日々の利用時間、新規プロファイルの作成率、最新版の利用割合などが掲載されている。注目すべきはFirefoxの月間アクティブユーザー数(MAU)だろう。過去28日間においてアクティブであったデスクトップクライアントの数を計測したもので、本記事執筆時点では、2017年4月1日からの推移がグラフ化されている。ちなみに、2018年9月1日現在のMAUは2億5834万8840クライアントだ。
2つ目はUsage Behaviorである。利用者数の多い言語、トラッキング防止機能の常時有効化率(2018年9月1日現在で1.282%)、アドオン利用率などが掲載されている。最後のアドオン利用率は、ユーザーが1つでも(プラグインを除く)アドオンをインストールしているとカウントされるようだ。2018年9月1日現在で34.577%となっているが、Firefox Quantumのリリース前後でさほど変化がないのは興味深い。
利用者数の多いアドオンのトップ10も掲載されており、広告ブロック系の拡張機能を利用しているユーザーが多いことがわかる。
3つ目はHardware Across the Webである。従前はこのセクションに該当する項目だけが公開されていた。Firefoxユーザーの利用環境をまとめたもので、GPUモデル、GPUベンダー、ディスプレイ解像度、CPUベンダー、CPUコア数、CPU動作周波率、メモリ容量、利用OS、Flashプラグインの有効化率などが掲載されている。
ややデータが古くて2018年5月27日現在のものではあるが、CPUは圧倒的にIntel製が多く、OSはトップのWindows 7と次点のWindows 10で約8割を占め、Flashはいまだにほぼ6割の環境で有効化されていることがわかる。
64bit版と32bit版の利用率の推移も見逃せない。Windows向け64bit版Firefoxのアップデート提供が始まる前、利用割合は64bit版が2割弱、32bit版が8割強という比率になっていた。アップデートの提供開始を機にその比率が急速に逆転したものの、64bit版の伸びが止まり、近時は64bit版が7割、32bit版が3割で安定している。
今のところローカライズはされておらず、日本語版Firefox固有のデータが存在しない点もやや残念だが、Firefox Public Data Reportにおいて公開されている各種資料は、今後Firefoxに関する議論や考察を進めるうえで不可欠の材料となるだろう。