Mozilla Flux

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FasterFox問題のフォローアップ

幸いにして、拙記事『FasterFoxは本当に悪か?』はみなさんの注目を集めることができた。また、複数の方からリアクションをいただいた。嬉しい限りである。

実は、この記事を書いたとき、意外に思われるかもしれないが、誰かに論破されることを期待していた。FasterFoxだけを悪者呼ばわりできない理由を記事の中で思いつく限り挙げたわけだが、これに対する説得的な批判は、FasterFoxを使ってはいけない根拠として有力なものになるはずだと思った。たんなるレッテル張り以上のところで話を進めないと、今後ますますチューニングによるメリットにばかり目が向けられかねない。ちゃんとデメリットを示せるようにすべく、ひとまずやや偽悪的にFasterFoxを擁護してみたのが、あの記事だ。

こうした意図があったため、あえて挑発的な書き方にした。日本のMozillaコミュニティに貢献していらっしゃる「とおやま」さんを厳しく批判したのは、問題の輪郭をはっきりさせるためである。内心では怒られることも覚悟していたが、大人の態度で冷静な返答をくださった。無礼な言辞をお詫びするとともに、返答に対しお礼申し上げます。

とおやまさんのご意見は、「設定によっては接続先の高負荷を招くような設定」はロックをかけて、変更できないようにすべきというものだ。サーバーの性能が向上したとはいっても、社内サーバーのように少数のユーザーを対象にした環境では、それほど高価なものは使えない。最大持続接続数などを増やしたFirefoxのアクセスが集中することは好ましくない。

おっしゃる趣旨はよくわかる。しかし、設定にロックをかけるといった、ユーザーの自由を奪う措置には、とりわけヘビーユーザーから強い反発があるだろう。また、高性能なサーバーが安価に入手できるようになれば、社内サーバーも次第に置き換わっていくはずで、とおやまさんの主張によっても、「当面は使うべきでない」というにとどまることになる。

さらに、もう少し先に進んで考えてみると、会社内でFirefoxを利用する際、ユーザーがインストールするアドオンに規制をかけられない仕組みこそがおかしいのではないかとの見方もできそうだ。Makoto Kato氏が『Firefoxに欠けているもの』で問題視している点とも通じると思うが、本題からは外れるので、別の機会に検討してみたい。

元記事のコメント欄で素晴らしい反論を書いてくださったのは、id:KoshianXさんだ。

そこでは、サーバーのポートを占有してしまう点が最大の問題であるとされている。サーバー当たりの最大持続接続数を増やすと、サーバーからデータを引き出している間は、その分だけポートが塞がってしまう。たとえば256がポートの限界だとして、全ユーザーが最大持続接続数2でアクセスすれば、128人が同時にアクセスできる。他方で、この数がみんな8だとすると、32人しかアクセスできない。実際に128人が同時にアクセスしていたケースだと、96人は"Service Temporarily Unavailable"(サービスを一時的に利用できません)というメッセージを目にするだけで、Webページを閲覧できない。いわば、電源プラグを差し込もうとしてもコンセントが埋まっている状態だ。

では、Video DownloadHelperはどうなのかというと、こちらはポートを一つしか占有しない。たとえるなら、電力の消費は激しいが、プラグ受けは一つしか埋まらない。転送の負荷が過大なものでないかぎり、他のユーザーを押しのけてしまう危険はない。

回線が速くてユーザーが短時間でデータを引き出し終わるなら、塞がっていたポートは解放されるが、ユーザー側の回線の速さはサーバー側でコントロールできない。Video DownloadHelperのユーザーがFasterFoxを併用すれば、多くのポートが長時間にわたって一人のユーザーに占有されてしまうだろう。

また、サーバーソフトの設定によってIPアドレス単位で同時接続数を制限した場合、会社や学校からインターネットを利用しているケースでは、限りあるIPアドレスを有効活用するため、動的な割り当てをおこなっていることがほとんどなので、同じ場所から接続しているのに、アクセスできるユーザーとできないユーザーが出てきてしまうという問題もある。

以上のデメリットから、KoshianXさんは、「この設定はユーザーがいじれるようにしないほうがいい」と主張する。FasterFoxも使うべきではないことになる。具体的で説得力のある意見だ。

しかし、ここでも、設定をロックするのはユーザーの自由を奪うという問題が顔を覗かせる。サーバーが高機能化して、ユーザーの要求を短時間で捌けるようになれば反対する理由が乏しくなる点も同様だ。

加えて、はてなブックマークには、「KoshianXのコメがhttpd.conf作り込むのめんどくせぇ、と言ってるように見えた」というコメントも見られた。サーバーソフトの設定ファイルで、IPアドレスを制限する以外の対処はできないのだろうか。たとえば、ユーザーがポートを3つ以上占有するときは、自動的に2つまで下げるといったように。それができるのなら、FasterFoxの使用にはさほど問題がないようにも思えるのだが。

(09/02/07追記)
上でコメントを引用したid:momdoさんが、『FasterFox(Firefoxアドオン)に関する意見っぽいもの』で議論を深めてくださっている。

要点としては、「Internet Explorerについてサーバー当たりの最大持続接続数を増やせるソフトは昔からあったのに、非難されていない」、「10年前のRFCが"SHOULD NOT"と言っていることにどれほどの意味があるのか」、「Webサーバソフトの設定でユーザーに対応可能ではないか」といったところ。

第二、第三の点に関しては、筆者の主張と重なると思われる。とくに、第二の点に関しては、Firefox 3がRFCを尊重しなかった以上、もはやRFCを云々してFasterFoxを非難するのは苦しいのではないか。

第一の点は鋭い指摘だ。これに対し、FasterFoxは「ターボチャージャー」というユーザーの目を惹く名前をつけて、ワンタッチで設定を変更できるようにしている点が問題だとの反論が考えられる。しかし、インターネットの接続を快適にすると謳う市販ソフトも、おそらくIEに関して同様のことをおこなっているだろう。ユーザーから金をとって、他人に迷惑をかける行為に出るよう仕向けているとみれば、FasterFoxより悪質ともいえる。FasterFoxだけを批判して、こうした市販ソフトを批判しないのでは、不平等にならないか。