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Mozilla Flux

Mozilla関係の情報に特化したブログです。

Thunderbird 31は通過点 開発体制の強化が課題

リリースノートに書かれていない新機能

Thunderbird 31がリリースされてからしばらくになるが、Lightning 3.3と合わせて特に問題は見られないようだ。

もっとも、リリースノートには、メールアドレスの補完機能など、新機能として3つが挙げられているにすぎない。Firefox 31と共通のソフトウェア基盤(Mozillaプラットフォーム)を採用していることが前提とはいえ、固有の新機能が本当にこれだけだとすれば少なすぎるだろう。

実際のところ、掘り下げていけばいろいろと新機能はある。リリースノートが控えめすぎるのだ。そこで、Thunderbird 24のときと同様に、Thunderbird 25から31までの各β版がリリースされた際に公開されたリスト(25/26/27/28/29/30/31)を基に、注目点をピックアップしておきたい。

  • Instantbirdとの統合を強化(Bug 951944:チャット機能の開発の成果がThunderbird側にも反映されるようになり、定期的な移植が不要になった。)
  • デザインをFirefoxのAustralisに近づける形で変更(Bug 942005
  • メール作成画面のユーザーインターフェイス(UI)を改良(Windows版:Bug 960672/Mac版:Bug 867161/Linux版:Bug 906264
  • ファイルの添付忘れがないか通知する(Bug 521158:デフォルトでオン。オプション > 編集 > 一般から「キーワード」ボタンをクリックして、添付忘れ通知のキーワードを追加、編集、削除することができる。)
  • 画像などのリモートコンテンツの読み込みを許可するかどうかをユーザーが明示的に決定する仕組みを導入(Bug 457296:従来は送信者がアドレス帳に登録済みかどうかで判別していたが、ホワイトリストを別に設けた。オプション > プライバシー > メールコンテンツから「例外」ボタンをクリックすると許可済みのアドレスが一覧表示され、一部または全部を削除することもできる。)
  • メールの添付画像を表示領域に合わせてリサイズし、ExifのOrientation属性の情報も参照する(Bug 534083/Bug 877520
  • 名前またはメールアドレスの一部を入力すると自動補完機能が働く(Bug 529584/Bug 558931:リリースノートで既出)
  • 同一ドメインのホスト名を認識することで迷惑メールの検出機能を強化(Bug 296952
  • インスペクタ、スクラッチパッド、デバッガなど、Firefoxの開発ツールがThunderbird上でも動作する(Bug 876636:詳細は"Thunderbird Developer Tools Wrapup"を参照)
  • JavaScriptベースのMIMEパーザが0.2にバージョンアップ(Bug 959309:詳細は"Announcing jsmime 0.2"を参照)
  • 受信メールのチェック中やサーバからエラーが返ってきた際、ステータスバーに対象アカウント名を表示(Bug 224436/Bug 214854
  • サブフォルダに新着メールがあったときはルートフォルダの表示にも反映される(Bug 95193
  • ハードウェア・アクセラレーションを再有効化(Bug 950133:動作の安定のためThunderbird 9以降で無効化されていた。)
  • アドレス帳のアドレス検索の結果画面で連絡先が削除可能に(Bug 749564
  • メール作成画面で印刷プレビューが可能に(Bug 251953
  • ニュースグループ名を自動補完(Bug 61491:リリースノートで既出)
  • アドレス帳でドメイン名の大文字・小文字を区別しなくなった(Bug 446571:連絡先が無意味に重複することを防止する。)
  • Windows版において添付ファイルを保存する際、ファイル名を変更しても拡張子が失われない(Bug 414865

以上のうち、すぐに目につくのはデザインの変更だろう。Australis化にはWindows 8への対応も含まれている。ちなみに、Firefoxとは異なり、旧デザインに戻すためのアドオンは見当たらないが、StylishをインストールしたうえでOld Style for Thunderbirdというスタイルを適用すれば、Thunderbird 24のデザインにやや近づく。

また、Mozillaプラットフォーム(GeckoレンダリングエンジンやJavaScriptエンジン)の改良とハードウェア・アクセラレーションの再有効化とが相まって、パフォーマンスも向上しているはずだ。

とはいえ、全体的にみてあまり大きな変化はなく、Thunderbird 31は、節目というよりも通過点と捉えたほうが適切といえる。

開発体制を強化できるか

筆者は、かつて次のように書いた。

2012年9月12日に公開された"Thunderbird projects and roadmaps"では、今後の課題として、Lightningの統合、メール作成コンポーネントの全面改修、アドレス帳の全面改修Maildir形式の本格的導入、Thunderbird Syncの実装などが挙げられている。残念なことに、1年が経過した現在もこれらの課題は解決を見ていない。

また、Thunderbird 24のリリース後、開発チームは、コミュニティベースの開発でも新機能を提供できることを示すため、実装対象を絞ることを検討していた。その際に候補となったのは、暗号化チャット、ビデオチャット、アドレス帳の全面改修、メールアドレスの国際化、タブのピン留め、メール作成画面のUI改修であった。

しかし、上記のとおり、実装された新機能はメール作成画面のUI改修にとどまる。メールアドレスの国際化もGmailに先を越された。そして、Thunderbirdの開発チームの中では、「アドレス帳」、「データベース」、「検索/フィルタ」、「MIMEとメール作成」、「インポート機能」、「IMAP・SMTP・POP・NNTP」、「コードのテスト」といった項目が技術的負債として認識されるに至っている。

大型の新機能を導入できず、技術的負債が増大している原因は、人手不足に尽きる。Mozillaプラットフォームの改良に追随してThunderbirdの動作を安定させることに多大な労力を費やしているため、新機能の開発にまで手が回らないのだという("Thunderbird’s Future: the TL;DR Version")。開発者会議では、もっと端的に、フルタイムで働く開発者があと3人必要だとしている。

今のところ開発者を増やすための妙案はないようだが、2014年10月には、カナダのトロントで「Thunderbird Summit」という会合が開かれ、Thunderbirdの将来について話し合われる予定である。これまでの経過を踏まえると、ボランティアの開発者が急激に増えることはないだろう。利用者数はいまだ伸びているとのことなので、そこをうまく収入に結びつけて開発者を雇う道を探るほかなさそうだ。