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Mozilla Flux

Mozilla関係の情報に特化したブログです。

Thunderbird 24がリリース間近 延長サポート版は通常版に統合へ

ソフトウェア基盤はFirefox 24と共通

Thunderbird 24がもうすぐリリースされる。「2013年9月17日の週」(米国時間)の予定なので、Firefox 24よりは少し後の登場となりそうだ。サイレントアップデート機能のおかげで、Thunderbirdを起動していなくてもバックグラウンドでアップデートが行われ、ユーザーは最新版を入手できる。

Thunderbird 17からバージョン番号が一気に上がっているのは、Firefox 24と共通のソフトウェア基盤(Mozillaプラットフォーム)を採用したためだ。最新のGeckoレンダリングエンジンやJavaScriptエンジンなどによってパフォーマンスが向上しているほか、セキュリティ面でも恩恵を受ける。WebRTCや新しい通知APIにも対応した(Bug 839272/Bug 852461)。この点がThunderbird 24のセールスポイントといえる。

他方、GeckoのAPI変更がアドオンの互換性にかなり影響を与えるため、注意が必要だ("Bunch of API changes on trunk break many add-ons")。リリース当初は動かないアドオンが多数出る可能性がある。幸いシステム要件は変更がないようなので、Thunderbird 17が動作するOSなら24も動作する。Windows 8から8.1にバージョンアップするのも大丈夫そうだ(Bug 893100)。

なお、Thunderbird 24のリリースに合わせて、アドオンのLightning 2.6もリリースされる予定になっている。

固有の新機能も若干追加

Firefoxの高速リリースサイクルに慣れていると、Thunderbirdのメジャーリリースの間隔は大きいように感じるが、実際には1年も経っていない。後述するとおり新機能を開発する人員が限られていることもあり、Thunderbird固有の新機能はあまり実装されていないのが実情である。Thunderbird 18から24までの各β版がリリースされた際に公開されたリスト(18/19/20/21/22/23/24)を基に、目立つ箇所を挙げてみよう。

  • 作成ウィンドウにズーム機能を追加(Bug 738194:キーボードショートカットは閲覧ウィンドウと同一)
  • メッセージフィルタ設定でフィルタ名を検索した際、該当するフィルタがないときはその旨を表示(Bug 800091
  • Instantbirdからの移植でチャット機能を強化(Bug 812921
  • 複数の宛先のある受信メールの全員に返信する際、宛先を維持し、勝手にCcに変更しない(Bug 250187
  • 国際化ドメインネーム(IDN)をサポートし、日本語を利用したメールアドレス宛にも送信が可能に(Bug 127399
  • Twitter API v1.1をサポート(Bug 857049
  • JavaScriptベースの新MIMEパーザ採用(Bug 746052/"Removing libmime functionality")
  • MacのHiDPIモードに対応(Bug 781333
  • ローカルフォルダの受信トレイが4GB以上になることを許容(Bug 640371
  • Mac版のツールバーアイコンを更新(Bug 861867
  • 新着メール通知画面のデザインを改良(Bug 856432

これ以外にも細かなところで多数の修正が加えられていることはいうまでもない。

延長サポート版の統合は開発体制の影響

Thunderbird 24のリリース後は、安定版と延長サポート版(ESR)の区別がなくなるものの、これまでと同様に、原則として6週間ごとにセキュリティ問題の修正を含むマイナーアップデートが提供される。現行ESRのユーザーには、17.0.10esrのリリースから6週間後に、24.0.2通常版が提供される予定だ。次のメジャーリリースはThunderbird 31となり、現在開発が進められている。

なぜ、安定版とESRが統合されるのか。逆にいえば、実質的に同一内容のものがリリースされていたにもかかわらず、これまで区別されていたのはなぜなのか。この疑問を解くためには、Thunderbird 17のリリースを機に変更された開発体制について知る必要がある。

2012年7月6日、Mozilla Foundation理事長のMitchell Baker氏は、一つの重大な発表を行った("Thunderbird: Stability and Community Innovation")。Mozillaは、今後、Thunderbirdに割くリソースをメンテナンスに限定し、セキュリティ等に関する修正は提供するが、新機能の開発はコミュニティに委ねるというものであった。当時、Thunderbirdを開発していたMozilla Messagingは既にMozilla Corporationに統合されており、方針転換が発表されること自体に驚きはなかったものの、後ろ向きとも思える発表内容のため、Thunderbirdの存続を危ぶむ声もあった。

実際Mozillaは、Thunderbirdの安全性を保つのに必要な限りで有給の従業員を提供するが、新しく人を雇うことはないと発表し、ISPのデータベースもMozillaのインフラのもとでコミュニティが管理することになり、support.mozilla.org(SUMO)からもThunderbirdをサポートする専任スタッフがいなくなった

しかし、Thunderbirdには、多数のユーザーがいる。2013年8月時点でも、800万の常用ユーザーがいるという。Mozillaは、Webベースのコミュニケーションに注力すると決めたが、Thunderbirdユーザーを見捨てたわけではない。

2012年11月に発表された"Thunderbird/New Release and Governance Model"によれば、Mozillaからは、開発リーダーのMark Banner氏をはじめとする7人の有給の従業員が開発、品質検証(QA)、Web開発などに携わり、ビルド用のインフラやサポートも引き続き提供されることになった。

開発プロセスの面では、メジャーリリースまでの間、Geckoの開発サイクルに合わせたβ版が順次提供されることになった。つまり、アドオン開発者やアーリーアダプター向けに、新バージョンのMozillaプラットフォームを取り込んだβ版が、Thunderbird 18β、19β、20β……とリリースされていくわけだ(FirefoxのAuroraに相当するEarlybirdもある)。そして、通常版は、Thunderbird固有の新機能が充分に揃った場合、1回に限り中間リリースが出る可能性が残された。

とはいえ、Mozillaプラットフォームの更新を伴わないこの中間リリースは、Thunderbird 24までは提供されないことになったため、実質的にはあまり意味がなかった。今回、Thunderbird 31までに中間リリースを提供できる見込みがなくなり、通常版とESRを区別する理由は失われた。これが統合の背景だ。

新機能の開発は流動的

2012年9月12日に公開された"Thunderbird projects and roadmaps"では、今後の課題として、Lightningの統合、メール作成コンポーネントの全面改修、アドレス帳の全面改修Maildir形式の本格的導入、Thunderbird Syncの実装などが挙げられている。残念なことに、1年が経過した現在もこれらの課題は解決を見ていない。

根本的な原因は、やはり人手不足にある。"Thunderbird/Community Members"には大勢の名前が記載されているが、実働ははるかに少ない。Instantbirdの主要開発者であるFlorian Queze氏がチャット機能の開発を行っているとか、フランスのLinagora社協力を申し出るなど、いい材料もあるものの、新機能の開発をコミュニティに委ねた結果は、今までのところ芳しくない。

開発リソースが限られているという上記の状況を踏まえると、Thunderbirdの開発の方向性を明確に定め、それに沿って実装する新機能を大幅に絞ることも考慮されるべきだろう。Thunderbirdは、メールの蓄積をいわば資産として扱い、全文検索によってその資産を活用する道を選んだはず。こうしたストック重視のソフトに、IRCやTwitterなどのフロー重視のサービスを単純に足し合わせるだけでは、独自性にはつながりにくい。あくまでストック重視の道を貫き、たとえばTogetterのように、リアルタイムでやりとりされたメッセージの中からユーザーが重要なものを選別して編集し、ローカルに保存する(ユーザーが許可した相手とは共有する)機能を実装するというのはどうだろうか。

メールソフトは枯れた分野かもしれないが、ビジネスでの利用など、まだまだその重要度は高い。また、開発の成果を800万の常用ユーザーに届けられるソフトは、それほど多くないだろう。いちユーザーとして、Thunderbirdの開発というこの重要かつ大きなプロジェクトに参加する開発者が増えることを願ってやまない。

(13/10/04追記)
Thunderbird 24.0は2013年9月17日にリリースされた。リリースノートには、新機能として、メールをスレッド単位で無視できるようになったこと、IDNに基づくメールアドレスにメールを送れるようになったこと、編集ウィンドウにズーム機能が実装されたことの3つが記載されている。なお、Lightning 2.6もリリース済みだ