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対応アドオンは少ないが、Thunderbird 3 Beta 3はThunderbird 2の上位版として使える

5か月かかった。当初Beta 2から10週間後とされ、ゴールデンウィークにはリリースされると言われていたThunderbird 3 Beta 3(TB3b3)。実際には、予定の倍以上の時間を開発に費やし、7月下旬になってようやく登場した。

えむもじら『Thunderbird 3 Beta 3 リリース』やMozilla Re-Mix『Thunderbird 3.0 Beta3リリース。』、それからMozillaZine.jp『Thunderbird 3 Beta 3 がリリースされた』に新バージョンの概要が掲載されている。

だが、開発が遅れた割に、地味な印象を受けないだろうか。原因は、ユーザーインターフェイス(UI)の変更を後回しにした点にある。もともとBeta 3の次はRC1、つまりリリース候補版になるはずだった。ところが、Beta 3の作業量が膨大になると判明し、Beta 4を間に挟むことになった。しかも、そのBeta 4も、Beta 3からさほど間を置かずに出るという話だったのが、先送りにした機能が増えたため、今ではどうなるかわからなくなっている。

革新的な検索システムも本格的な投入は見送られ、フォルダサマリーの表示など目立つ部分もBeta 4に回った。Beta 3のポイントは古いコードを整理したところにあり、たとえば『What is up with the thread pane (and friends) UI refactoring on bug 474701』で説明されているように、かなり大がかりな変更だったようだ。アドオンの互換性にも相当影響するが、タイミング的に今しかないということで断行された。

Thunderbird 3はおそらくGecko 1.9.1.xベースになるが、Thunderbird 2(Gecko 1.8.1.xベース)と比較すると、エンジン部分に限らずFirefox 2(Gecko 1.8.1.xベース)から一気にFirefox 3.5(Gecko 1.9.1.x)へとバージョンアップするくらいの大幅なジャンプを目指しているので、完成までの道のりはどうしても長くなる。TB3b3で土台を固めて家まで建て始めるつもりが、途中で力尽きて土台だけのままでリリースした感じだ。

とはいえ、600近い修正が加えられた中には、エンドユーザーにとって魅力的なものも含まれている。その筆頭がタブ機能の強化で、メールのタイトルをクリックするとタブ表示され、ウィンドウを閉じても復元されるのはなかなか便利だ。

また、未完成ながらAutoconfigと呼ばれるアカウントの自動設定機能も加わった。以前、やってMotors『アカウント設定の自動化に動きが ~ Thunderbird 3 情報』で採り上げられていたこの機能、TB3b3に投入されたことは『Thunderbird 3.0 beta 3 shipped!』で確認できる。ユーザーがメールアカウント情報を入力するだけで、プロバイダの設定を自動で行ってくれるというもの。プライバシーに配慮しているのはもちろん、Mozillaのセキュリティ担当者が設計に問題がないか点検済みだ(『autoconfig security』)。

より実用的なレベルでは、複数のアカウントを設定していても、一回の受信ですべてのメールを受信してくれるようになった。たとえば、Gmail(IMAP4)とHotmail(POP3)のアカウントがあったとして、これまでは起動時にGmailを受信するようにしていると、Hotmailのメールをチェックするためには、カーソルを合わせて再度受信ボタンを押す必要があった。TB3b3なら、そんなまだるっこしいことはしなくて済む。

対応するアドオンが少ないことに目をつぶると、TB3b3はメールアプリケーションとして優秀だ。Thunderbird 2からそれほどユーザーインターフェイスが変わっていないぶん、既存ユーザーにも取っつきやすいかもしれない。Firefox 3.5と共通のエンジンを使っているだけあって、動作は軽快だし、Beta版としてはかなり安定しているほうだろう。

メッセージヘッダのコンパクト表示が無くなったため、画面が狭いPCだとやや厳しいが、Thunderbird 2からの乗り換えを本気で考えたくなる仕上がりだ。それだけに、リリースの遅れが悔やまれる。このクオリティのものがせめて5月中に出せていれば、もっと注目を集めただろうから。