(09/03/26追記)
本文で挙げたマイコミジャーナルの記事は、現在、次のような断り書きとともに内容が修正され、タイトルも『新しいFirefoxの新規タブには円形の隠れ蓑が現れる?』に変更済みだ。
本稿は当初、『新しいFirefoxのタブは円形になるかもしれない』という記事として掲載していましたが、内容に誤りがあったため、タイトルおよび本文に対して大きな修正を加えています。ご迷惑をおかけしました読者の皆様、ならびに関係各位には深くお詫び申し上げます。
以下は、この修正が入る前の内容を扱った文章である。
<追記ここまで>
マイコミジャーナルの記事『新しいFirefoxのタブは円形になるかもしれない』を読んで非常に驚いた。理解が完全に間違っているからだ。
同記事では、こう書かれている。
次にMozilla Labsから発表されたのが『Cognitive Shield』と呼ばれるタブスクリーンだ。現在主力のWebブラウザはファイラで使っているタブのイメージをそのまま導入したものだが、『Cognitive Shield』はこれをマウスに対して構築しなおしたような作りになっている。マウスを使っている場合、タブのある上部までマウスを移動させてタブをクリックするのは面倒といえば面倒だ。マウスポイントがある部分にナビゲータを表示させるというのはひとつのアイディアとしてはおもしろい。
画像も原文から引用されているが、"Cognitive Shield"では、円周上にWebページを示す円形のファビコンが8個並ぶ。
同記事の記述を読む限り、これはユーザーナビゲーションのための仕組みだと受け取れる。ちょうどアイコンが並んだアプリケーション・ランチャのように、ファビコンをクリックするとそのタブに移動するといった具合だ。
しかし、実際はそのようなものでは全くない。そもそも、なぜ"Cognitive Shield"(認知的シールド)という名前が付いているのか、記者の方は疑問に思わなかったのだろうか。シールドとは、何を防ぐものなのか。
原文の"Firefox New Tab Page: Cognitive Shield"を読めばすぐにわかることだが、これはユーザーの注意を無用に引きつけるのを防ぐためにあるのだ。決してナビゲーション機能を提供するものではない。
Mozilla Labsが公開しているAbout:Tabアドオンは、当初の想定では、ユーザーの中心的な視野から外れた位置にメニュー(ファビコンを含むWebページのリスト)を置くことで、ユーザーの注意を元の作業からそらさないでおけるはずだった。しかし、実際にはメニューが出ればどうしてもそちらに関心が向いてしまう。パフォーマンスも考慮してサムネイルは外したが、それでも問題は解決しなかった。要するに、この機能を使いたくない人にとっては、メニューが現れること自体、目障りになりかねないのである。他方で、ユーザーが使いたいと思ったときにメニューが手元になければ、いちいちリストを呼び出すのは面倒なので、使われないまま終わってしまうだろう。
この矛盾に対処すべく考え出されたのが、"Cognitive Shield"である。この円形のリストは、目立たないようにあえてグレースケール(白黒)で表示されている。ユーザーのマウス動作に反応して、本来のメニューが現れる仕組みだ。たとえば、[Ctrl]+[T]キーなどのショートカットで新しいタブを開くとしよう。このとき、フォーカスはロケーションバーに移る。ユーザーがURLなどを打ち込んでいる間、マウスカーソルは動かないのでメニューも出ず、邪魔にならない。タブバー上の「+」ボタンを押してタブを開いたときも、マウスカーソルをページ表示領域に移動させなければ、メニューは出ない。ユーザーがロケーションバーに何か文字を打ち込むべく操作していれば、注意をそらされることはない。
これに対し、メニューを使いたいときはマウスカーソルをページ表示領域で動かせばいい。円形のリストがアニメーションとともにメニューへと展開される。うまいアイデアだ。
というわけで、この"Cognitive Shield"は一時的に表示されるものとして作られている。ユーザーがクリックする対象ですらない。
さらにいうと、展開後のメニューは、ユーザーの訪問頻度などをもとに算出された基準によって、履歴からピックアップされたWebページがリスト化されている。ユーザーがその時点で開いているタブ群と直接の関係はない。したがって、仮に今回のケースと違ってMozilla Labsがこうした円形のページランチャを提供していたのだとしても、『Firefoxのタブが円形に〜』というタイトルを付けるのはおかしい。Firefox 3.5から外された「タブプレビューパネル」あたりと勘違いしているのではないか。
教訓:ちゃんと原文は読むべきだ。