Mozilla Flux

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私信的なもの #4

Latest topics > Thunderbirdのパッチが2つとも蹴られた』についてですが、Piroさんの発言のインパクトを考えると、コメント欄で個人的にやりとりするよりは、ブログで説明するほうが適当と考え、この記事を書くことにしました。

Piroさんのお気持ちはわかります。最初から付いている機能を正常に動作させるパッチが、なぜチェックインを許されないのかと。しかし、Dan Mosedale氏(Mozilla Messaging社CTO)のコメントをもう一度ご覧ください。彼は、Bug 468774Bug 472621に同一のコメントを残しています。

We have too few resources to introduce any risk into the branch for patches which are not security or stability problems. Unfortunately, this doesn't qualify as either of those. Apologies.

Mosedale氏が述べていることを客観的に見れば、ブランチ(2.0.0.x系列)にチェックインが認められるパッチは、セキュリティか安定性の問題を修正するものに限られるというポリシーが存在すると読み取れるでしょう。なぜそのようなポリシーになっているのかといえば、「リソースが少なすぎるから」、つまり人手不足で派生的な問題に対処しきれないからです。

したがって、「そんなに重要じゃないから」チェックインを認めなかったと断じると、大事な点が見過ごされてしまいます。たしかに、セキュリティや安定性に関わるパッチよりは重要性が低いと判断されたことは事実です。しかし、ポリシーから外れたパッチは、一律に受け入れられないことになっている点にも目を向けるべきです。

ポイントは、一つの例外を許せば、別の多くの例外を許さざるを得なくなることにあります。Piroさんのパッチは、おそらくリグレッションを引き起こしたりはしないのでしょう。それでも、リスクの高低を見極めるのが難しいことは、私などよりもPiroさんのほうがよくご存じのはず。他の開発者が別のパッチについて同じことを要求してきたケースを考えてみてください。

Thunderbird 3の開発で手一杯の状態にあることを踏まえると、こうしたポリシーを採用することはやむを得ません。例外を許せば、承認を求めてきたパッチの有用性とリスクを毎回審査せねばならず、チェックインを許したせいでリグレッションが発生すれば、マイルストーンのリリース前後に対処せねばなりません。Firefoxのように開発者が大勢いれば手の打ちようもあるでしょうが、無い袖は振れないのです。

結論を言えば、Mosedale氏がPiroさんのパッチに否定的な評価をしたとみるのは酷でしょう。また、いうまでもなくMozilla Messagingが日本語環境を軽視しているわけでもありません。パッチの内容ではなく、手続き的な事情なのですから。