Mozilla Flux

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Firefoxの開発者会議

Firefoxの主要開発者たちは、週に2回公式の会議を行って、開発の進捗状況を報告し合い、問題があればそれについて話し合い、あるいは今後の開発プランを練っている。開発者が世界中にちらばっているので、IRCなどのツールを活用し、共通語はもちろん英語だ。それぞれ"Development Meeting"と"Firefox Product Delivery Meeting"と呼ばれているが、これらの会議は、事実上、製品開発に関する意思決定機関として機能している。

たとえMozilla CorporationのCEOであっても、この会議の決定に口を挟むことはできない。「一開発者として」というのもなしだ。そのことは、CEOのJohn Lilly氏本人が、Firefox 3のリリース前、2008年5月下旬に行われたインタビューの中で明言している。該当部分を訳して引用しておく。

Firefox 3がいつリリースされると思ってよいのか、特定してもらえますか?

いや、それはエンジニアが決めることで、CEOが決めることじゃありません(それは私たちが他と違ったやり方をとっている点の1つです)。<以下略>

Mozillaのためにコードを書いてますか? もしそうなら、どの程度、そしてどこで?

いいえ、書いていません。Firefoxのユーザーはみんなそのことに感謝すべきです。私にはコンピューターサイエンスの素養がありますが、私が修士号を取ったのは、人間とコンピューターの相互作用についてなので、ユーザーインターフェイスとソフトウェアの使われ方にはかなり注意を払っています。だからUIのことではbeltzner、alex、mconnor、johnath(訳注:開発責任者クラスのプログラマーたち)とたくさん議論をしますが、コードは書きません。

しかも、会議で話し合われた内容は、要旨がMozilla Wikiで公開されている。これを読めば開発者でなくても開発の動向がわかるし、リリースのスケジュールが最初に発表される媒体がこの会議要旨であることも多い。Firefoxの最新情報を追いかける場合、真っ先にチェックすべきポイントといえる。

二つの会議の沿革についても述べておく。Firefox 3のリリース後、次期バージョンの検討を行う場として、"Firefox 3.1/Gecko 1.9.1 Meeting"という会議が開かれるようになった。一方、"Mozilla 2 Status Meeting"という会議も別に存在し、こちらはいわばFirefox 4を扱う会議だった。

2008年7月上旬、会議の再編が行われた。Firefox 3.1/Gecko 1.9.1 Meetingのうち、Gecko 1.9.1のトピックに関する部分を切り離して、"Firefox 3.1 Meeting"という形に純化させた。また、Gecko 1.9.1のトピックはMozilla 2 Status Meetingで扱うことにし、"Platform Meeting"という名前に改称した。基盤技術を扱うPlatform Meeting、アプリケーションとしてのFirefox 3.1を扱うFirefox 3.1 Meetingという仕切りである。このときから、"Weekly Status Meeting"は後者を指すようになった。

しかし、この新たな仕切りに対する不満も出た。実際の開発の場で基盤技術とアプリケーションをきれいに切り分けられるものでもないため、どちらの会議で話をすればよいのか決めかねた開発者が、結局両方に出席するといった無駄が生じたからだ。

そこで、9月初めに会議をもう一度再編し、現在の形に落ち着いた。Firefox 3.1 Meeting改め"Firefox Product Delivery Meeting"は、次にリリースする製品を扱う会議と位置づけられた。他方、Platform Meeting改め"Development Meeting"は、その先にリリースする製品を扱う会議となった。また、リリースのスケジュールはその週の開発状況を踏まえたほうが決めやすいということで、開催する曜日を入れ替えてFirefox Product Delivery Meetingを水曜日にもってくるといった措置がとられた。

要するに、「Product Delivery Meeting -> 次のリリース」と「Development Meeting -> 将来のリリース」というコンセプトだ。ただ、厳密にこのコンセプトに従って会議が進められているわけではない。Development MeetingでFirefox 3.1のβ版に関するスケジュールが話し合われることもある。最新情報を得ようとすれば、両方の会議要旨のチェックが欠かせない。