Mozilla Flux

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MozillaがUIを大きく変更したネットブック版Thunderbird 3を開発中

MozillaWikiのThunderbird/Netbooksによれば、Mozilla Messagingはネットブックユーザーにとって使いやすいユーザーインターフェイス(UI)を採用した、Thunderbird 3の新たなバリエーションを開発中だという(”Bug 533875 - Improve netbooks experience [meta]”)。

Thunderbird 3.0と3.1の間に、このネットブック版Thunderbird 3(Netbook Tb3)をリリースする予定で、当初はアドオン形式で開発を進め、機能が固まったら本体に統合していく。あくまでUIが変更されるだけで、機能制限などはない。

Thunderbird/Netbooks/Designs/Ideasに暫定的なモックアップが出ており、草案なので今後変わる可能性があるとはいえ、デザインの方向性は見て取れる。機能別のタブを左端に配置し、メニューはツールバーに集約、2ペイン型にしてコンテンツはGmailのスレッドビューのような形で表示するというものだ。

ネットブックは、画面の横幅こそある程度確保されているが、縦幅が狭い。そこで、UI領域を圧縮するとともに、横幅があることを活用し、コンテンツ領域を広く取るのが合理的だ。また、独立したウィンドウを使うのも極力避けたいところだ。たとえば、アカウント設定の画面は、管理するアカウント数が増えると縦に長くなっていく。ネットブックの画面に収まりきらない場合も出てくるだろう。

そこで、Netbook Tb3では、まず、メニューバーはツールバーに統合して、ドロップダウンメニューとしてまとめる。

また、メッセージペインはスレッドビューを採用することで、件名や差出人を表示する部分と本文を表示する部分を融合させてスペースを節約することが可能になる。この際、各メッセージの開閉を簡単にするため、大きなボタンを置くことも検討されている。ただ、タブ表示のメリットは相当程度犠牲になってしまうだろう。

ここまでのデザインは、「メインメッセージタブ」に関するものだ。画面左端のアイコンをクリックすると、「作成タブ」に切り替わる。そこでもやはりメニューバーとツールバーは統合されるが、さらに、ツールバーに差出人欄も追加される。そして、宛先欄もできるだけ一列に並べて占有スペースを減らすようにする。ここで、宛先欄のドロップダウンメニューは色分けされ、Ccなのかどうかといった点が一目で判別できるという。

「アドレス帳タブ」でも従来のアドレス帳のUIに大きな変更が加わる。個々の連絡先はアドレスリストを起点にツリー表示され、連絡先を選択した時点で画面右側にカードの内容が現れる。タブ化することで逆に画面を広く使えるようになり、恩恵を被った形だ。

残るもう一つのタブについては今のところ説明がないが、アイコンの形状からしてオプションウィンドウをタブ化したものと考えて間違いないだろう。

モックアップにはアドレスバーがないようにも見え、その扱いがどうなるかも気になるところだが、テーマなどのアドオンとバッティングするおそれがあるとはいえ、全体的にはけっこう魅力的なデザインといえるのではないだろうか。Netbook Tb3の新UIが好評なら、通常版に取り入れることも検討されてよい。元のUIと切り替えられるようにしておけば、さほどの混乱もないと思われる。

2009年12月のFirefoxシェア

NetApplications社の月例統計によれば、2009年12月時点におけるFirefox全体のマーケットシェアは、24.61%(前月-0.11%)である。2009年中の25%越えはならず、予想外の展開となった。

StatCounterのデータも同様の傾向を示しており、Firefoxの12月のシェアは31.97%(前月-0.24%)である。2つの有力な指標がシェア低下という結果になっており、その確度は高いといえよう。

では、Firefoxのシェアはどこに流れたのか。競合するWebブラウザのシェアを眺めてみる。

IE Safari Chrome Opera
2009年10月 64.64% 4.42% 3.58% 2.17%
2009年11月 63.62% 4.36% 3.93% 2.31%
2009年12月 62.69% 4.46% 4.63% 2.40%

Google Chrome(以下Chrome)である。SafariやOperaも多少増えてはいるが、0.70%の上昇を見せたChromeには遠く及ばない。例によってInternet Explorerが1%弱のシェアを失っていることも考慮すると、まさにChromeのひとり勝ちだ。Safariのシェアをあっさりと抜いてしまったことも特筆に値する。

Chromeの躍進は、StatCounterのデータからも裏付けられている。12月と11月のグラフを比べると、Chromeのバーがはっきりと長くなっている。
〈12月〉

〈11月〉

12月にChromeのメジャーバージョンアップが実施されたわけではない。とすると、やはりGoogle Chrome Extensions(拡張機能ギャラリー)がBeta版として公開された影響なのだろう。かなりの数のアーリーアダプターがChromeの拡張機能が本格的に提供されるのを待っていたところ、ギャラリーの公開を機に一斉に使い出したのでシェアが伸びたわけだ。

この現象が一過性のものなのか、それとも定着するのか、はたまた大躍進の第一歩なのか。Firefoxのシェアが現に下がったこともあり、非常に注目されるところだ。

次に、NetApplications調べによるバージョン別のシェアでは、Firefox 3.5が16.32%(前月+1.16%)、Firefox 3が6.91%(前月-1.22%)である。Firefox 3についても、予想に反して7%を割った。その落ち込み分をFirefox 3.5が吸収できていない点が、全体シェアの数値に響いている。

他のブラウザに目を向けると、IE6のシェアは20.99%まで低下し、IE8の20.86%と僅差となった。ただ、IE8の互換モードだけで2.80%もあり、これを加えると完全に逆転する。IE6にはさまざまなエディションがあるようだが、それらを合わせても2%にも満たないとみられ、実質的にIE6は首位の座を譲った。

12月はStatCounterのデータを基にMozillaのエバンジェリストAsa Dotzler氏が『firefox 3.5 is the most popular browser in the world』という記事を書き、これを受けて日本でもFirefox 3.5がシェアでトップに立ったかのような報道がなされた(ITmedia News『Firefox 3.5、ブラウザ市場でシェア1位に』など)。しかし、NetApplicationsのデータでは、トップにはほど遠い。

Dotzler氏は職業柄シェアの推移を詳細に追っているようであり、上記の記事を書いた12月20日(米国時間)の時点で、Firefoxの伸びが止まっていることや、Chromeの好調さを把握していた可能性が高い。にもかかわらずFirefox 3.5が順調に普及しているとアピールするのは、恣意的との批判を免れない。

冷静にシェアデータを眺めれば、さらにもう1つの懸念材料があることに気づくだろう。それは、Chrome 4.0が0.75%であるのに対し、Firefox 3.6が0.30%しかない点だ。どちらも現在Beta版の段階にあり、1月中に正式版がリリースされそうな点も同じである。開発段階に大きな差がないのに、シェアの差は明らかとなっている。特定のブラウザを熱心にアピールしてくれる層がChromeに流れすぎるのは、Firefoxのマーケティングという観点からすると問題だ。そして、Firefoxの開発総責任者Mike Beltzner氏は、このことを完全に理解しているように思われる。Firefox 3.7(または3.6.2/3.6.3)を3月末〜4月初めにリリースすることにこだわっているのも、Chrome 5.0に先んじたいからではないか。

最後に、1月のFirefoxシェアを予想する。12月の波乱で、予想はとても難しくなった。Firefox 3.6がリリースされて注目を集めるとしても、確実に25%を超えるという保証はない。ただ、IE8がIE全体の落ち込みをカバーできておらず、脅威にならないと判明したことだけは救いだ。悪くてもFirefoxは現状を維持することだろう。

(10/01/10追記)
CNET Japan『12月世界ブラウザシェア、「Chrome」が「Safari」を上回る--Net Applications調査:ニュース』の次のような指摘は的を射ていると思う。

Chromeのシェアが急激に拡大したのは、Googleが「Mac OS X」およびLinuxコンピュータ向けに最初のChromeベータバージョンをリリースしたためである。それまでは、開発者プレビューバージョンのみが公開されていた。