Mozilla Flux

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Firefox Quantumでトラッキング防止機能の全面有効化が可能に

トラッキング防止の新設定

Firefox 42以降、プライベートブラウジングモードではトラッキング防止機能有効化されるようになっているが、Firefox Quantumでは通常モードでもこの機能を有効化する設定が追加された(Bug 1393627)。トラッキング防止機能を有効化した場合、たとえばGoogleアナリティクスなどもブロックされるが、目に見える効果として大きいのは、一部の広告が出なくなる点だろう。

設定を開くには、まずFirefoxのウィンドウの上部右隅からメニューパネルを開き、歯車のアイコンがついた「オプション」をクリックする。次いで南京錠のアイコンがついた〔プライバシーとセキュリティ〕をクリック。画面を下にスクロールさせていくと、トラッキング保護*1の欄が出てくる。初期設定は「プライベートウィンドウのみ」になっているが、これを「常に」に変更するとトラッキング防止機能が有効化される。

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Firefox Quantumの新しいトラッキング防止設定画面

ちなみに、『ブロックリストを変更』というボタンを押すと、リストの選択画面に移る。初期設定は簡易ブロックだが、より強力な広範ブロックを選ぶことも可能だ。*2

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ブロックリストの選択画面

トラッキング防止機能の効果を確かめるため、同一のWebページで有効・無効を切り替えてみよう。本機能が無効(初期設定)の場合、記事の上側や右側に広告が表示されるのは、よくあることだ。本機能を有効化するとそうした広告が除去され、これに伴ってページの読み込みも高速化される。

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左:初期設定 右:トラッキング防止機能有効

トラッキング防止機能が働いているときは、アドレスバーに盾のアイコンが表示される。サイト単位で有効・無効の切り替えを行うこともできるので、ふだんは有効化しておき、表示が崩れる場合だけ機能を無効化するといった使い方も可能だ。機能を有効化した直後にチュートリアルが出るようになっているので、内容を覚えておこう。

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トラッキング防止機能のチュートリアル

Polarisイニシアティブの到達点

Firefoxのトラッキング防止機能は、提携先であるDisconnectトラッキング防止リストを使用している。追跡者のリストはオープンにされており、見直されることもある。また、すべての追跡者がシャットアウトされるわけではなく、Do Not Track(DNT)の設定を尊重するWebサイトが除外されるほか、ユーザーの利便性も考慮されているようだ。

Mozillaは、ユーザーのオンラインプライバシーの保護向上を目的とするPolarisイニシアティブの一環として、2014年11月にこの機能の開発をアナウンスし、前述のとおりFirefox 42で製品版に取り込んだ後も、全面有効化に向けた研究・開発を続けてきた。Firefox Quantumに導入された設定画面も、2016年1月にFirefox Nightly 46(開発版)で実装されていたものだ。

2016年9月下旬にはTracking ProtectionがFirefox Test Pilotの実験に追加され、2017年2月中旬まで実験が続けられた。そこで得られた知見は、"Test Pilot Tracking Protection Graduation Report"という記事にまとめられている。実験の際、ユーザーがトラッキング防止機能を無効化したWebサイトは少なかったようだが、ユーザーからのフィードバックを受けたMozillaがDisconnectと協議し、たとえばTwitterに投稿された画像がブロックされないように調整したそうだ。

その後も1万9000人以上を対象にした詳細な実地試験を経て、2017年8月にはトラッキング防止機能を有効化しても、恐れていたほどWebサイトの表示は崩れないとの結論が得られた。この結論がFirefox Quantumにおける設定追加の前提となっているとみられる。

Firefox Quantumでトラッキング防止機能の全面有効化が可能となった背景には、こうした過去の研究・開発の積み重ねがある。Polarisイニシアティブの1つの到達点と言えるだろう。拡張機能を入れなくても、設定を変更するだけで実効性のあるプライバシー保護の措置を講じられるというのは、素晴らしいことではないだろうか。

(17/11/23追記)
本記事掲載後、Firefox Private Browsing vs. Chrome Incognito: Which is Faster? - The Mozilla Blogが速度向上に焦点を当ててトラッキング防止機能を紹介している。速くなったと評判の「Firefox Quantum」をもっと速く使う方法が明らかにされる - やじうまの杜 - 窓の杜がこれを比較的詳しく取り上げているが、要するにMozillaに調査によれば、ページの読み込みに要する時間が半分以下になったという。

また、Tracking Protectionの公式な訳語が、「トラッキング保護」から「トラッキング防止」に変更されることになった。関係者の迅速な対応に感謝したい。

*1:本記事ではあえて公式とは違うトラッキング「防止」の呼称を用いている。通常、プライバシー保護といえばプライバシー「を」保護することを指すが、ここでいうトラッキング保護機能は、トラッキング「から」ユーザーを保護するものだ。プライバシー保護のためのトラッキング保護機能という呼び方は、どうも据わりが悪い。

*2:リストの切り替えには本体の再起動を要するが、Firefox 58では不要になる(Bug 1363969)。