Mozilla Flux

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Thunderbird 3 Beta 3に向けて

最近リリースされたThunderbird 3 Beta 2は、好評のようだ。Status Meeting(2009-03-03版)によれば、そのユーザー数は35万人だという。Thunderbirdの起動時にMozilla Messagingのサイトへアクセスがあることを考えると、このカウントは正確だろう。

短期間でこれだけのユーザーが利用しているのは、関心の高さの表れに他ならない。アクティブユーザーが8000万人以上いるFirefoxでも、3.1 Beta 2を日々利用するユーザーの数は38万人にとどまっている。カウントの方法が違うので単純な比較はできないが、Thunderbirdのユーザー数が500〜1000万人だとされている(スライド6枚目)ことを思えば、熱心なユーザーの割合ではFirefoxに負けていないのかもしれない。

次のBeta 3が気になるところだが、BlockerバグについてはRumbling Edgeで公開されているものの、スケジュールは未定だ。ただ、Beta 2に関する反省会では、今後週に一度開発者向けに小規模なマイルストーンを作成する予定であることが明かされた。たとえば、"b3week1"といった名称のものだ。

ほかにもっといい資料はないのか……。Mozilla Wikiを探してみたところ、Driver Meetingの要旨を発見した。Driverとは製品(この場合はThunderbird)の開発責任者のことであり、Driver Meetingとは、Thunderbirdでは、Status Meetingの直前に開かれる、Driverたちの打ち合わせのことを指す。その結果要旨をWebで公開するのだからすごい。ここまで開発プロセスを見せているソフトは珍しいだろう。

(同日追記:訂正と新情報の追加
情けない話だが、大きく間違えた。自らの不明を恥じるしかない。お詫びして訂正します。古い文章はいちおう残しますが、読まなかったことにしてください。

さて、気を取り直してThunderbird 3のスケジュールを再検討する。Meeting要旨において、"two 10-week milestones"が最重要語句であることは確かだ。従来のスケジュールや、Gecko 1.9.1の話に引きずられて、深読みして解釈したのがまずかった。コメント欄でのご指摘どおり、これは10週ごとに計2回マイルストーンをリリースするという意味だ。

それだと、RC1のリリースはすごく先になってしまうではないか。そのとおり。筆者の予想をはるかに超えて、Thunderbird 3のスケジュールは延期されていたのである。

それを示す証拠が、かつての記事で触れたこともある"Straw Man Schedule"、つまり、スケジュールのたたき台だ。どうやら、この記事をアップした直後くらいに、それが更新されていたらしい。みると、Beta 3のコードフリーズは4月28日、RC1のそれは7月7日と記載されている。

Friday, April 24               Friday, June 26
3.0b3 slushy string freeze     3.0 slushy string freeze
       |                           |
=============+====+================+===============+=========
                  |                                |
    3.0b3 firm string/code freeze       3.0rc1 firm string/code freeze
              Tuesday, April 28                Tuesday, July 7
                  ^
                  |
                  |
           3.0 feature slush
        3.0 extension API slush

リリースはコードフリーズの約1週間後になるのがふつうなので、Beta3は5月はじめ、RC1は7月中旬となる。この分だと正式版リリースは8月にならざるを得ない。

これだけ引き延ばせば、さすがに予定された機能のカットもないはずだ。それにしても、当初は3月末にRC1のコードフリーズだといっていたのに、その話はどこへ消えたのやら。また、Gecko 1.9.1は、Thunderbird 3 Branchにおいて、Beta 3のリリース後はマージを止めるのかもしれないが、このあたりは謎だ。さらに、こうなることが大まかには予想されていた時点で、Lightningの統合が断念されたのだから、いかにLightningの開発ペースが落ちていたかわかろうというもの。

新スケジュールは、ユーザーの一人として非常に残念だが、気長に待つしかなさそうだ。

さて、肝心の要旨の内容だが、そこにあった"two 10-week milestones"が最重要語句だと思われる。これは、今後10週の間に、二つのマイルストーン、すなわちBeta 3とRC1をリリースすることを示していると解釈できる。118個ものBlockerバグがあることから、その期間内に処理するのは極めて厳しいと書かれているが、この10週間が目標となっていることは確かだ。

118個の内訳は、71個がBeta 3向けで、30個がRC1向け、17個が未確定となっている。Blockerの数は今後も変動するだろうが、Beta 3向けのBlockerのほうが多いことは間違いない。Beta 3でフィーチャーフリーズを目指すのだから当然とも言える。

とすると、10週間の配分として、Beta 3に6週間、RC1に4週間と考えてもそれほど不自然ではないだろう。問題は、このペースで本当に進むのかという点にある。Beta 2は、いくつかの大きな機能を先送りすることで、スケジュールを達成した。だが、もはやその手は使えない。ThunderBarとGloda、それにAutoConfigなど、Thunderbird 3の目玉機能を実装しなければならない。それなのに6週間で足りるのか。

仮に今から6週間後にBeta 3をリリースできるなら、それは4月半ばになる。そこから4週間後だと5月上旬で、RC1をそこに投入できれば、5月中のリリースも夢ではない。現に、参加者の発言の中に、Gecko 1.9.1の完成前のバージョンを搭載してリリースし、完成後にThunderbirdを修正するかもしれないというものがある。これは、Gecko 1.9.1が、ひいてはFirefox 3.5(3.1から改称予定)がThunderbird 3より遅れることを暗に述べている。Thunderbird 3とFirefox 3.5の間隔を4週間空けるならば、Firefox 3.5のリリースが6月中とみられる以上、Thunderbird 3は5月中のリリースを目指すしかなく、このタイミングを逃すとリリースが7月になってしまう。

ここから導き出されるシナリオは、予定されていた機能の一部をカットすることだ。といっても、さすがに大きな機能はいまさら外せないだろうから、上に挙げたのとは別の、細かなものがそれに当たるはずである。

Firefox 3.5 Beta 4のリリースが決まったとき、Thunderbirdのスケジュールにも影響することは指摘しておいたが、前倒しの道を選択したのはやや意外だった。どの機能が残り、また外れるのかは今後の開発状況に委ねられている。もしすべて実装できたとしたら……素直に拍手を送ろう。