Mozilla Flux

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FirefoxのFlash無効化は2019年4月ころの見通し

Firefox 55がリリースされてしばらく経つが、Adobe Flashプラグインに関し、本記事執筆時点で5%のユーザーが「実行時に確認する」の初期設定になっている(Bug 1372237参照)。Flashコンテンツの再生・実行時にユーザーのクリックまたはタップが要求されることから、クリック・トゥ・プレイ(CtP)と呼ばれるのがこの設定だ。

対象ユーザーの範囲は、いったん25%に引き上げられた後で100%に引き上げられる形で、段階的に広がっていく。本来なら既に25%のステージにいるはずなのだが、展開が遅れており、この様子だとCtPの100%達成はFirefox 56のリリースを待つことになるかもしれない。

今回のCtP化は、Mozillaの脱Flashの動きの一環だ。Adobe自身が2020年末をもってFlashプレイヤーの更新と配布を終了すると発表しており、MozillaもESR(延長サポート版)を除き2019年中には大半のユーザーを対象に初期設定でFlashを無効化するとアナウンスしている。とはいえ、Flashを利用するWebサイトはまだまだ多い。Mozillaは、焦らずゆっくりと、しかし着実に脱Flashに向けた歩みを進めていく。

Plugin Roadmap for Firefox - Plugins | MDNが公表されているロードマップだ。それによると、MozillaはFirefox 55の時点で、FlashのCtP化のほかにドメイン単位のブロックを行っている。これは、プラグインの有効・無効をドメイン単位でコントロールするホワイトリスト/ブラックリストの仕組み*1を前提に、他のWebサイトに埋め込まれたWebサイトが起動させるプラグインや、有名なWebサイトが不必要に用いるプラグインをブロックするというもの。アドオンマネージャの〔プラグイン〕からShockwave Flashの詳細ページを開くと、「危険で出しゃばりなFlashコンテンツをブロック」にチェックが入っており、この機能が有効化されていることがわかる(Bug 1348089参照)。*2

次のFirefox 56では、Android版においてプラグインのサポートが廃止される。また、プラグインの初期化処理の非同期化に関するコードも削除されるAsynchronous Plugin Initialization: Requiem - Aaron Klotz at Mozillaで説明されているとおり、この機能は一度もリリース版に投入されることのないままお蔵入りとなった。

2018年の後半になると、FirefoxはFlashの設定を記憶しなくなる。現在の仕様では、FlashがCtP化されていても、ユーザーはFlashを「常に許可する」ドメインを指定できるが、ロードマップの記載は、この仕様を廃止することを意味する。もっとも、ユーザーがアドオンマネージャなどからFlashを「常に有効化する」ことができると、この措置は骨抜きになってしまう。おそらく2018年の前半のうちに、包括的な常時有効化の設定は排除されるだろう。

2019年の初めころから、FirefoxはFlashの利用を続けるWebサイトで警告を表示するようになる。Flashが初期設定で無効化されるのはその数か月後だ。ユーザーは設定を変更して再度有効化できるが、その対象は一部のWebサイトに限定されるという。ホワイトリストに掲載されたドメイン以外では、Flashの有効化を認めないということだろう。従前からのリリーススケジュールを考慮すると、Flash無効化の時期は2019年4月ころになるとみられる。

2020年の初めころ、Firefoxの通常版ではついにFlashのサポートが全面的に廃止される。他方、ESRでは2020年末までFlashのサポートが続く。筆者はかつて、FirefoxにおけるFlashのサポートが完全に廃止されるのは、通常版で2018年半ばから後半にかけて、ESRで2019年第1四半期以降になると予想したのだが、実際のロードマップはより漸進的であった。

なお、MozillaはNPAPI版のサポートを続けることが負担であるとして、FirefoxのFlashプラグインをPPAPI版に切り替える計画を持っていた(Bug 1264552)のだが、PPAPI自体の存続に疑問があるらしく、計画の先行きが不透明になっている

(17/09/11追記)
PPAPI版FlashプラグインをFirefoxに標準搭載する計画は中止された。Mozillaは今後も上記のロードマップで現行のNPAPI版Flashをサポートし続けるほかない。

そうなると懸念されるのは、Firefoxの安定性への影響だ。Firefox 57で旧式のアドオンのサポートを廃止した後、Flashを原因とするクラッシュがFirefoxの安定性にとってネックになってくる可能性がある。

*1:Bug 1307604およびBug 1345611

*2:そのほか、Firefox 55ではFlashコンテンツの読み込みがHTTP/HTTPS接続からに制限され(Bug 1335475)、情報バーにプラグイン関係の情報が表示されることもなくなっている(Bug 1377036)。