Mozilla Flux

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Firefox 3.6以降は小刻みなリリースに移行する?

Scene Side B『Firefox 3.7』で既報だが、Firefox.nextのプランが大きく変更されたようだ。これまでは、α版を矢継ぎ早にリリースして、β版は一つだけに絞り、早ければ10か月で次のバージョンを出す予定になっており、開発に遅れが出ればおそらく1年後という話だった。ところが、新プランでは今年の秋にFirefox 3.6を、来年の春にはFirefox 3.7を出すという。

現在公開されている情報を基にすると、Mozillaは7月末にブランチを切り、Gecko 1.9.2をFennec 1.0とFirefox 3.6の基盤とする。Fennec 1.0は「end of summer」というから、8月末から9月の頭くらいにはリリースされる。これに対し、Firefox 3.6は「mid-to-late fall」。10月から11月のどこかで出るとみられる。

いったんブランチを作成してしまうと、もう大幅な変更はきかない。Firefox 3.5のときは例外的にいろいろ機能が入ったが、Firefox 3.6のリリース予定から考えて、同じことが繰り返されることはまずないだろう。そうなると、Firefox 3.5との差は小さいものにならざるを得ない。Firefox.nextの目玉と考えられていた機能の多くはおそらく間に合わない。

では、Firefox 3.7はどうだろう。こちらは「late spring 2010」とあるので、2010年5月くらいのリリースと考えられる。が、ブランチを切るのは早く、「mid-to-late fall」つまりFirefox 3.6がリリースされたころとなる。Geckoのバージョンは1.9.3だ。

2009年10〜11月以降は大幅な変更を加えないのだとすると、コンテンツとクロームの分離は省かれる可能性が高い。Firefox全般への影響が大きい一方、開発は容易ではなく、タイミング的に厳しいからだ。

また、3Dアクセラレーションも2010年に入ってからでないと実装できないと言われていたはずで、そうなるとこれも外れるだろう。

このように、リリースを小刻みにすると大がかりな変更を加える時期の見極めが重要になってくる。先送りにすれば楽だが、ユーザーの期待に応えられなくなるデメリットがある。Trunkを二本にして、Firefox 3.7がリリースされた直後くらいからFirefox 4.0のαテストを始めるくらいの措置が求められるように思う。

MozillaがNamorokaのプランをリセットした陰には、Google Chromeの影響があるような気がしてならない。Firefoxと比較して短期間でメジャーバージョンアップを行うChromeは、そのたびにJavaScriptエンジンを強化してきており、今後もベンチマークをとったときにFirefox 3.5との差が開いていくであろうと予想される。だが、FirefoxのアップデートペースをChromeに合わせれば、そうした事態は避けられよう。

とはいえ、今回の決定で梯子を外されたのがAsa Dotzler氏だ。同氏は、マイコミジャーナルのインタビューに対し、次のように述べていた(『【インタビュー】僕がMozillaで働く理由は"情熱"』)。

Asa Dotzler氏はリリース間隔については"バランス"が大切だと指摘する。現在のChromeのようにユーザベースが少数でありアーリーアダプターが採用している場合には頻繁なリリースが実施できるものの、一般ユーザはそうした頻繁なアップグレードを好まないという。ブラウザの更新はユーザにある種の変更を求めることになるから、現状に満足している一般ユーザはアップデートを避ける傾向があるという。

これはFirefoxも経験してきたことだとAsa Dotzler氏。Firefoxもユーザベースが1億人を突破するまでは短いリリースサイクルでも問題なく、自動アップデートもうまくいっていたという。しかしユーザベースが1億人を突破したあたりから、自動アップデート機能を無効にしてアップデートを好まないユーザが急増したという。そうしたユーザに対してもアップデートを促し、かつ、開発者の要求にも答えるリリース期間が1年間というわけだ。GoogleのアプローチはWebサービスを提供する視点に立っており、デスクトッププロダクトの現状を反映していないという。

Dotzler氏に「Firefox 3.6は3.5から5か月ほどでリリースされるようですが、これはデスクトッププロダクトの現状を反映していない、バランスを欠いたものなのですか?」と尋ねたら、彼はどう答えるのだろうか。