Mozilla Add-ons(AMO)は、「サンドボックス」モデル、つまりスタッフ(エディター)によるレビューを受けていないアドオンを限定された形でのみ公開するという枠組みを捨てるつもりだ。Mozilla Add-ons Blog『Removing the Sandbox』でその意向が明らかにされた。それに伴い、実験的アドオンというカテゴリーも廃止され、さまざまな要素から算出されたスコアに基づき、各アドオンに対して一定の権限が付与されるようになる。
これまでも、サンドボックスは制約が緩められる傾向にあった。実験的アドオンがAMOの検索結果に含められるようになり、最近は、チェックボックスをクリックしてリスクを理解した旨を示せば、AMOのアカウントがなくてもインストールできるまでになった。
それでも、実験的アドオンは自動アップデートの対象にならないという違いが残る。正式のアドオンに昇格するためには、エディターによるレビューを受けねばならないが、この審査にはかなり時間がかかるのが現状だ。したがって、アドオン作者が魅力的なアドオンを新しく作っても、ユーザーがAMOで手軽に利用できるようになるまで、かなり待つ必要がある。
こうした問題を解決すべく、AMOは、より柔軟で包括的な信頼システムの構築を目指すことにした。『Add-on Review & Distribution Model』に概要が記されている。それによれば、アドオンの信頼度を数値化する点がポイントで、計算に当たっては次のような要素を考慮するという。
- エディターによるレビュー
- アクティブユーザー数
- ユーザーレビューに基づくレーティング
- ユーザーの報告に基づく規約違反のフラグ数
- 自動化されたアドオン検証ツールの評価(パッケージング、ポリシーの遵守、一般的なセキュリティ問題など)
- サポート情報の有無
- 開発者の手による他のアドオン
従来は、アドオンの信頼性に関してエディターによるレビューがすべてだったが、新システムでは他の要素も含めた総合的な判断となる。一定の式に当てはめて算出されたスコアは、アドオンを振り分ける基準に使われる。次の表はその一例だ。大半のアドオンが緑で表示されたカテゴリーに収まると想定されている。
スコアが高いアドオンほど大きな権限が与えられる仕組みであり、カテゴリー自体も新設される。たとえば、インストールにはユーザーがチェックボックスをクリックする必要があるものの、以後は自動アップデートの対象になるというカテゴリーだ。ただし、ここに振り分けられるためには、アドオン検証ツールによるチェックをパスせねばならない。
また、チェックボックスが取り払われたカテゴリー、つまり現在の正式アドオンと同じものだが、そこに振り分けられるためには、エディターのレビューを通ることが必須になるようだ。
さらに、高いスコアのアドオンは自動的に承認されるとする点も目新しい。著名なアドオン作者による人気アドオンのアップデートなら、おそらく、アドオン検証ツールが問題なしと報告すれば、そのまま承認されるのではないだろうか。
構想段階とはいえ、かなりのインパクトを持ったシステムであることが窺える。実現の暁には、正式アドオンと実験的アドオンの境目はかなり曖昧なものとなり、ユーザーはこれまで手を出さなかったアドオンを利用する方向に向かうだろう。コレクション機能と同様に、この信頼システムもアドオン利用のロングテール化を促進するツールなのだ。
なお、AMOの構想には付録が二つある。一つはアドオン配布チャンネルの複数化で、具体的には、あるアドオンのリリース版用チャンネルと、Beta版用チャンネルをアドオン作者が併用できるようになる。もう一つは、サードパーティ製アドオンのリストをAMOが取り扱うというもので、ホスティングまで行うわけではないが、AMOの検索結果に含まれるようになる。個々のアドオンの情報は、一日に一回更新されるそうだ。