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Firefox 55で刷新されたインストールプロセス Firefox 57でさらに改善へ

Firefoxを常用していると気付きにくいが、Firefox 55のリリースに伴ってMozillaはユーザーのインストールプロセスを刷新した。ここでいうインストールプロセスとは、ユーザーがデスクトップ版FirefoxのダウンロードページをクリックしてからFirefoxの初回起動が完了するまでを指す。以下の動画は、Windows版Chromeを使ってダウンロードページにアクセスしたという想定で、新プロセスについて解説したものだ。

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従来のプロセスにおける問題点は、February 2017 Onboarding Test – Verdi@Mozillaに掲載された別の動画で指摘されている。その内容をまとめると、次のようになる。1.ブラウジング開始までに必要なクリック数が多すぎる。2.インストーラやダウンロードページの工夫がインストール体験の向上に結びついていない。3.まっさらな状態でインストールされるため、Firefoxに乗り換えたユーザーが訪れたいWebサイトに直ちにたどり着けない。

問題1を解決するため、Mozillaはインストール完了に必要なクリック数を減らした新インストーラを開発した(Bug 1365998)。ただし、スタブ(軽量)インストーラが対象で、フルインストーラは従来通りである。併せて、ユーザーアカウント制御(UAC)のダイアログで特権の昇格が許可されない場合も、インストーラを終了させず、可能な限りインストールを続行するようにした(Bug 1350974)。また、Firefoxの初回起動時には、既定のブラウザに設定するかどうかを尋ねるプロンプトを表示しないようにした(Bug 1367073)。*1

問題2を解決するため、新インストーラは余分なメッセージを表示しないようになっている。ダウンロードページ側にも工夫が施され、ファーストビューに必要な内容が集約されている。画面が夜の風景なのは、Firefoxの初回起動時に表示されるページ(以下ファーストラン)で太陽が昇る演出になっているためだ。なお、新インストーラのアイコンも、インストール後にFirefoxのアイコンがデスクトップに現れることを意識して、緑の箱の中からFirefoxのアイコンが顔をのぞかせた絵柄に変更されている。

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ファーストビューに必要な内容を集約

問題2に関連して、ファーストランに表示されるFirefoxアカウント関係のメッセージも改良された。従来はアカウントの作成を促すようになっていたのだが、作成しないとFirefoxを利用できないと誤解するユーザーもいたそうだ。そこで、代わりにログイン画面を出しつつ、アカウントを作成した場合の具体的なメリットを提示するようにした。

他方、問題3の解決は今後に持ち越しとなった。Firefoxのホームタブは検索サービスの提供がメインで、新規タブもMozilla関連のWebサイトしか登録されていない。Firefoxに乗り換えたユーザーが従来のブラウザの履歴やブックマークをインポートしてくれれば、新規タブによく使うページを表示できるのだが、初回起動前に設定移行ウィザードを出す現在のやり方では、効果が薄いことが判明している。ユーザーはとにかくFirefoxを起動させたいので、処理を後回しにしてしまうのだ。そこで、インポートを自動化する計画だったのだが、パフォーマンスに悪影響が出るため採用は見送られた

Mozillaはインストールプロセス刷新を今回実行するまでに、試行錯誤を重ねている。New download and install flow for Firefox 55 – Verdi@Mozillaが事前テストの結果について言及しており、それによると問題1・2を解決した新プロセスは4つの点で成功を収めたという。

  1. インストーラの修正でインストール数が8%増加。
  2. インストーラ以外の修正でFirefoxの初回起動を完了したユーザーが2.4%増加。
  3. 新プロセスに対するユーザーのレーティングは従来と同じ。積極的に評価するユーザーも。
  4. ファーストランの修正でFirefox Syncに2台目のデバイスを接続するユーザーが14.8%増加。

新プロセスのレーティングが変わっていないのに成功と評価する理由が上記記事には記載されていないが、おそらくデメリットが目立っていないという趣旨だろう。新インストーラはオプション設定に移行するボタンや、インストール処理をキャンセルするボタンも省かれている。前者はフルインストーラで代替できるのでよいとしても、後者は誤クリックによってインストールが開始された場合にユーザーはアンインストールを余儀なくされることになる。その意味で、かなり割り切った仕様と言えよう。

Mozillaは、Firefox 57で手動インポートの手順を改善し、積み残された問題3の解決を図る。初期設定でホームタブと新規タブが統一され、利用頻度の高い「トップサイト」や直近の訪問・ブックマーク履歴を基にした「ハイライト」が表示されることを踏まえて、それらのタブに他のブラウザからのインポートを促すメッセージが表示されるようになる(Bug 1361294)。ユーザーが「インポートする」を選んだ場合に設定移行ウィザードが出るのは従来通りだが、移行が完了すると当然ホームタブ・新規タブの内容に反映される。これに対し、ユーザーがインポートを拒否するか、3活動日にわたって何も選択されなかったときは、メッセージは表示されなくなるという仕様だ。なお、この措置に伴ってFirefoxの初回起動時に設定移行ウィザードは表示されなくなる。

以上のほか、Firefox 57のスタブインストーラは、3バージョン以上古いFirefoxのインストールを検出するか、Firefoxがインストールされていない状態で既存のプロファイルを検出した場合、プロファイルのクリーンアップを行う選択肢を有効化した状態で示すようになる(Bug 1369255)。設定が初期化されるうえアドオンも削除されるので、インストール時には注意が必要になるだろう。

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左:古いFirefoxを検出した場合 右:既存のプロファイルを検出した場合

*1:プロンプトは2回目の起動時に表示され、表示回数は3回に限定される。Firefox 43に実装された機能だが、今回初めてリリース版で有効化された。