Mozilla Flux

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OS X 10.6/10.7/10.8のサポートはFirefox 47まで Windows XPのサポートは当面継続(追記あり)

ESR版以外は8月まで

Mozillaは、FirefoxにおけるOS X 10.6/10.7/10.8のサポートを2016年8月で終了すると発表した。サポート終了後もFirefoxを使い続けることは可能だが、新機能やセキュリティアップデートの提供は受けられなくなる。現在の予定では、Firefox 47が2016年6月7日(米国時間。以下同じ)にリリースされた後、同年8月2日にFirefox 48がリリースされることになっているので、上記の発表に照らしてみると、OS X 10.6/10.7/10.8をサポートするのはFirefox 47までとなる。

他方、Firefox ESR 45ではOS X 10.6/10.7/10.8をサポートし続ける。ESR 45系列のサポートは2017年5月ころまでは続くとみられ、2016年8月以降もOS X 10.6/10.7/10.8上でFirefoxを使い続けるのであれば、今の時点で法人向け延長サポート版(ESR)に乗り換えるべきだろう。ただし、Appleが既にOS X 10.6/10.7/10.8のサポートを終えている点には注意が必要だ。Mozillaが対応するのもESR 45.8までである。

OS Xに関するサポート変更は、2012年11月にFirefox 17で10.5のサポートを終了して以来のこととなる。2016年3月11日に突如として提案が出され、主要開発者の間でも意見が分かれたものの、最終的に実行に移されることになった。

Windows XPのサポートは当面継続

こうなると気になるのはWindows XPのサポートだが、こちらは当面継続される。Firefox 46のリリース前に、XPはESR 45系列限定でサポートすることにしてはどうかとの提案が出されたものの、XP上におけるFirefoxの利用状況を調査している最中だとして、採用されなかった。Mozillaは、Windows版Firefoxに関し、バイナリファイルにSHA-2ベースのデジタル署名を付すこと(Bug 1079858)や、ビルド環境をVisual Studio 2015に移行すること(Bug 1124017)について、コストをかけてWindows XP(SP2以降)に対応させているし、直近のFirefox 46でもXP上でMP4/H.264/AAC形式の動画・音声ファイルを再生できるようにしている(Bug 1250766)。OS X 10.6/10.7/10.8との差は明らかだ。

2014年4月にサポートを終えたOSにMozillaが対応し続ける理由は、Windows XP上のFirefoxユーザーが多いからである。Mozillaの調査によれば、Firefoxのリリース版/Beta版ユーザーのうち約12%がWindows XP上で利用しており、このXP上のユーザーのうち約16%がXP SP2にとどまっている。他方、OS X上での利用者は10.6以降のバージョン全体で6.7%となっており、XPのサポートを終了した場合の影響が、OS X 10.6/10.7/10.8の場合の比ではないことがわかる。

しかも、別の調査によれば、Windows XP上でFirefoxを使用するユーザーのうち40%から53%は、CPUまたはRAMが要求水準を満たさずWindows 7以降にアップグレードできない状態にあるとされている。つまり、買換えを待たないとOSが更新されないわけで、XP上のFirefoxユーザーの数が短期間に大きく減少することはなさそうだ。

のしかかる負担

もっとも、Windows XPのサポートは、Mozillaにとって次第に重荷になりつつある。最近の例を挙げると、Firefoxは、ICU(International Components for Unicode)という外部のライブラリを統合しており、これによってUnicodeやJavaScriptの国際化をサポートしているのだが、このICUが2016年10月ころにリリース予定のバージョン58でWindows XPをサポートしなくなるのだという。ICU 58を導入しないとUnicode 9.0のサポートが遅れる一方、これをそのまま導入するとWindows XPのサポートを続けられなくなる、ということで議論になっている

これは1つの例にすぎないが、こうしたWindows XP向けの余分な作業が積み重なることで、Firefoxの開発の障害となることを懸念する声があるのも事実だ。

とはいえ、上記のとおりWindows XP上のFirefoxユーザー数は到底軽視できる規模ではないので、たとえばFirefox 48までアップデートしたユーザーに対し、Firefox ESR 45への移行を求めることになれば、おそらく混乱は免れない(だからこそサポートをESRに限定する旨の提案はFirefox 46のリリース前に行われた)。それに、GoogleがChrome 50以降、Windows XP/Vistaのサポートを終了させたことは、Firefoxにとってシェア回復のチャンスとも考えられる。

Firefox 52(2017年3月ころリリース)まではWindows XPのサポートを続け、その先はESR限定のサポートとするのが穏当なように思うが、どうなるだろうか。

(16/05/03追記)
OS X 10.6/10.7/10.8のサポートはFirefox 48まで継続されることが判明した。Mozilla Corp.でDirector of Engineering, Releases and Engineering Productivityを務めるLawrence Mandel氏が明らかにした。Firefox 49のリリース予定日は2016年9月13日なので、サポートを同年8月で終了するというアナウンスは正確ではなく、実際には9月半ばの終了となる。

(16/05/04追記)
Mozilla Corp.の従業員の中からも、Windows XPのサポートをFirefox ESRに回すとすればESR 52からだろうとの観測が出ている。ICUについては、開発の中心にいるIBMに対してという趣旨とみられるが、(大口のユーザーである)Mozillaが頼めば、XPのサポート終了をしばらく先延ばしにしてくれるらしい。

(16/05/05追記)
Bug 1269811 - Stop updates for Firefox 49 and later on MacOS X 10.6-10.8も参照のこと。既にFirefox Nightly 49ではOS X 10.6に対するアップデートの提供を停止したという。

(16/05/28追記)
OS X 10.6/10.7/10.8のサポートの件は5月3日に追記した内容のとおりなのだが、経緯は思っていたよりもややこしかった。もともとの計画は、本文に書いたとおりFirefox 47でサポートを終えるというものだった。しかし、Firefox 48でサポートを終えるのだと主要開発者さえも誤解したので、本当にFirefox 48でサポートを終える(=Firefox 49からはサポートしない)ことにした。

その結果、5月5日に追記したとおり、OS X 10.6/10.7/10.8上のユーザーに対してはFirefox 49へのアップデートが提供されなくなる。代わりに、Firefox ESR 45系列へのダウングレードパスが提供される可能性がある。