Mozilla Flux

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アドオンの互換性チェックを原則廃止するFirefox 10

(2012/01/28追記)
Mozilla Add-ons Blogにて予定どおりFirefox 10からこの措置が実施されるとの発表があった(『Add-on Compatibility for Firefox 11』)。対象となるのはFirefox 4以降に対応した拡張機能で、バイナリコンポーネントを含むアドオンや、テーマ、辞書、言語パックは対象外となる。

Firefoxの高速リリースサイクルに対する一般ユーザーの不満で最大のものは、バージョンアップ時にアドオンが使えなくなることだろう。Mozilla Add-ons(AMO)が登録されているアドオンをチェックし、互換バージョンを自動的に更新するなど、ある程度の対策は施されているが、更新の対象にならない登録済みアドオンも当然存在する。そして、未登録のアドオンに対してはAMOも手の打ちようがない。

Firefoxユーザーの85%が何らかのアドオンをインストールしているという。そのユーザーのうち何割かが、アドオンの互換性がないことを嫌ってバージョンアップをしなかったり、いつまでも互換性を得られないことに失望してFirefoxの利用をやめたりすれば、定着しつつある高速リリースサイクルを根底から揺るがしかねない。

そこで、Mozillaは、原則としてFirefoxによるアドオンの互換性チェックをなくすことにした。Blair’s Brain『Solving Firefox’s add-on compatibility problem』とMozillaWikiのFeatures/Add-ons/Add-ons Default to Compatibleに詳細が記されている。具体的には、Firefox 10(2012/01/31リリース予定)から、extensions.strictCompatibilityのデフォルト値がfalseになり、メジャーバージョンが上がっても、原則としてアドオンが自動的に無効化されることはなくなる。

もちろん、一切の例外なく互換性のチェックを外してしまうと、Firefoxの動作の安定性を保てないし、アドオン作者の意思に反する場合も出てくる。なのでいくつかの例外を置き、該当する場合は従来どおりアドオンを無効にすることになった。現在設定されている例外の内容は次のとおりである。

  • アドオン作者がアドオンのinstall.rdfにおいて従来どおりの互換性チェックを求める設定をしたとき
  • AMOのテストで互換性なしと判断されたとき
  • アドオンがバイナリコンポーネントを使用しているとき
  • アドオンが非常に長期にわたってアップデートされていないとき(Firefox 4またはToolkit 2.0と互換性があるかどうかがその基準)
  • アドオンが将来のバージョンのFirefoxとのみ互換性があると宣言しているとき

残念ながら、Firefox 3.6までにしか対応していないアドオンは上記の例外に当てはまる。とはいえ、絶対数は多くないはずだ。また、バイナリコンポーネントを使用するアドオンの代表格として、セキュリティスイート(ウィルス対策ソフト)に付属するツールバーが挙げられる。しかし、これも企業が提供しているアドオンであれば、新バージョンのリリース時期に合わせて更新される可能性が非常に高い。Firefoxのシェアを考慮すれば、ユーザーが競合製品に流れないようにするのが、メーカーにとって合理的な行動になるからだ。

おそらく、今後AuroraチャンネルやBetaチャンネルで議論になるのは、「AMOのテストで互換性なしと判断されたとき」というケースだろう。今回の新機能を実装済みのNightlyビルドで試してみたところ、筆者が常用している15のアドオンのうち、5つが無効のままだった。クラッシュなどを避けるため必要な措置ではあるのだが、ユーザーに中途半端な印象を与えることも確かだ。

ユーザーの不満への対処として、また、(Google Chromeのような)自動アップデート採用に向けた布石として、今回の新機能は評価できる。しかし、大々的に宣伝してユーザーに過剰な期待をもたせるのは避けたほうが賢明だろう。