Firefox 3.6の次に来るものが、コードネーム「Lorentz」であることは確定している。だが、その名称をFirefox 3.7にすべきか、それとも3.6.2/3.6.3にすべきかが決まらない。事は、たんに名前の問題では済まないからだ。
これまでのMozillaであれば、迷わずFirefox 3.7の名称を選んだことだろう。セキュリティと安定性に関するリリースは、大きな機能の追加を厳格に制限してきた。しかし、mozilla.dev.planning「Firefox "Lorentz" and 1.9.2/1.9.3」での議論を眺めていると、開発責任者の一部は、その制限を取り払いたがっているような気がしてならない。
Lorentzのプロジェクト責任者であるBenjamin Smedberg氏は、プラグインの別プロセス化(OOPP)が3月に準備できたとして、新しいアップデート機能が4月にずれ込む場合、Firefox 3.6.2でOOPPを投入し、3.6.3で残りを入れることもできるとする。「Firefox 3.7」の看板を掲げると、予定された新機能は一気に実装しなければならないが、3.6.x方式ならばできたところからリリースしていけるわけだ。
3.6.x方式は、Firefoxの開発スケジュールが遅れがちなことを考えても、理にかなっている。上に挙げたOOPPにしても、予定どおり3月に完成する保証はない。そこで、Flashプラグインの別プロセス化を先行させることでコンセンサスができており、しかも開発者ミーティングではWindows版のFlashに限るかもというところまで後退した。下手をすると、OOPPの完成は3.6.4や3.6.5を待たねばならない。それでも、3.6.x方式なら少しずつ対象を広げていける。
もう一つ重要なのは、3.6.x方式を採用することで、アップデートによってアドオンを無効にする必要がなくなる点だ。Firefox 3.6のケースとは異なり、Lorentzが自動アップデートによって提供されることはほぼ確実といえる。アドオンがいきなり無効になれば、ユーザーに与える影響は大きい。できるだけユーザーに負担をかけない扱いが望ましい。
他方で、本当に互換性を維持できるかという問題もある。アドオンが無効にならないのだから、本体とアドオンの衝突によって不具合が生じるのも止められない。加えて、セキュリティアップデートとそうでないものの境目も曖昧になる。開発者とすれば、自分が開発した機能をすぐにでもユーザーに使ってほしいだろう。これまでは謙抑的な運用をしてきたから、パッチの投入を申請した開発者を納得させることもできた。だが、Mozilla自身がルールを破ってしまえば、「どうして俺のはダメなんだ」という意見も出てこよう。
まだ決定はされていないが、Lorentzが非常に難しい状況にあることは間違いない。