Mozilla Flux

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Personasの統合はFirefox 3.7に先送りすべき

本家Mozilla Linksが、PersonasはFirefox 3.6に統合されると報じ(邦訳『Firefox 3.6 は11月リリース予定、Personas と応答性に注力』)、しかもそれが前言を翻したものだった(『Firefox 3.6 Alpha 1 レビュー』参照)ので、前の記事に追記し、他の情報と合わないのでは、と書いた。

その後levelさんからコメントをいただき、Namorokaのプロジェクトページに記載があるとのご指摘を受けた。

確認してみると、NamorokaつまりFirefox 3.6の目標として「Integration of the Mozilla Labs Personas project」が掲げられていた。筆者の見落としだった。Percy Cabello氏もこれを発見し、意見を改めたのだろう。

levelさんは、拡張機能としてのPersonasが既に完成していること、マウスオーバーだけでプレビュー可能で、適用も一瞬であるため初心者層にも十分アピールできることをFirefox 3.6に統合する理由として挙げている。

Personasが広くエンドユーザーにアピールすることについては、まったく異論がない。levelさんもおっしゃっているとおり、数多いスキンの中から好みのものをどうやって見つけ出すかの問題は残るが、バリエーション自体は非常に豊富なので、その日の気分によっていろいろ変えていくことができる。これ自体はすごく楽しい。

しかし、拡張機能として完成していれば、本体に容易に組み込めるかといえば、そう簡単にはいかないと思う。もちろん、コードの移植は、一から開発するケースと比較するとかなりスムーズに進むだろう。ここで述べているのは、広い意味でのユーザーインターフェイス(UI)の話である。

すぐに思い当たるのは、テーマとの競合の問題だ。実際、中途半端にテーマとスキンが適用された状態になることはある。テーマを変えるか、スキンをオフにすればいいわけだが、ユーザーの立場からすれば、なぜ競合を解消した形で表示されないのか、となる。

また、現在のように左下隅に小さくアイコンが出るだけでいいのか。拡張機能としてのPersonasは、ユーザーが自発的にインストールするものだから、あらかじめアイコンも目にしているし、大まかにはどんな働きをするのか知っていると期待できる。これに対し、デフォルトでオンになった状態でFirefox本体に組み込まれるとなると、存在をアピールするところから始めないといけない。機能を簡潔に説明することも必要だ。

そのほか、細かい話をすれば、Personasの設定画面を本体の設定画面のどこに組み込むのかも検討の対象になる。Weaveのようにペインを増やすのだろうか。

このように、拡張機能が標準機能に昇格するとなれば、考慮すべきことは山積みである。だからこそ、もともとFirefox 3.7で統合するとしていたのだろう。Firefox 3.6の開発計画では、9月上旬にリリースされるBeta 1でUI関連の変更はすべて入ることになっているから、あと1ヶ月弱でパッチができあがっていなければならないはずだが、「Personas Uplift Exploration」のページにはほとんど記述がなく、そもそも前提となるデザインが固まっていないのではないかと思わせる。加えて、直近のミーティングでは「potential uplift of personas (under evaluation)」となっており、まだ評価中なのだから、結果として統合を諦める可能性も残っていることになる。

素人である筆者がこのブログで指摘した問題点など、Mozillaの開発者たちは当然理解しているはずだ。それでも、試行錯誤する時間もないまま、Personasの統合を推し進めようとするのはどういうわけだろう。

アピール不足を解消しようとした可能性は高い。訴求力という意味では、パッと見てわかる変化があるかないかは大きく、Firefox 3.5はその点で損をしている。Firefox 3.6も全般的な高速化が図られ、個人的にはスマートロケーションバーのスピードアップだけでも乗り換える価値があると思うが、それは使ってみて初めて感じられるポイントだ。Personasならそこをクリアできる。美麗なスキン、クールなスキン、かわいいスキン。適用後の場面を並べれば見映えがすることは間違いない。

もう一つの可能性として、Google Chrome(以下Chrome)への対抗意識がありそうだ。CNET Japan『グーグル、「Google Chrome」用テーマのギャラリーを公開』など、Google Chrome Themes Galleryはメディアの注目を集めた。次のChrome 3では、テーマ変更機能が標準で搭載されるものとみられる。

MozillaのエバンジェリストであるAsa Dotzler氏に言わせれば、29 vs 20,000で、Personasの圧勝である。どちらも再起動なしに適用され、メインウィンドウのスキンだけが変更される点も同じ。それなら、登録数が桁違いに多く、プレビュー機能も付いたPersonasのほうが上だという話になる。

だが、Firefox 3.7まで待つとなると、リリースは2010年5月以降。それまでにChromeがスキンを増やし、プレビュー機能も搭載してくると、差は目立たなくなる。Mozillaとしては嬉しくない状況だ。

とはいえ、Chromeに先行したという実績を作るため、Personasを強引に統合するのだとすれば、その選択は正しくない。率直に言って、統合を急がずFirefox 3.7に回すべきだ。Firefox 3.6は、新機能の追加を小幅に止め、スピードを重視し、リリーススケジュールを守る。それでいいと思うのだが。