Mozilla Flux

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Firefox.nextの分裂

改めて整理しておこう。Mozillaは、先月方針を転換するまで、Firefox 3.5の次のバージョンとして、Namorokaのコードネームで呼ばれるFirefox.nextを想定していた。これは、最短で10か月というスパンをおいてリリースされるはずだったが、各開発チームからアイデアや意見を募っていくうちに、どうやらとてもその期間では収まりそうになくなってきた。

そこで、当初6か月としていた開発期間が1年に延びてしまったFirefox 3.5の二の舞になるのを避けるべく、もっと小刻みにリリースを重ねていくことにした。結果、Firefox.nextはFirefox 3.6、3.7、そして4.0へと分裂したのである。Namorokaも、Firefox 3.6のコードネームとして扱われる。

Firefox 3.6は11月(おそらく上旬)に最終版が出るとされている。そのようなアナウンスが、完全に公式とは言えないまでもなされている以上、マイコミジャーナル『Firefox 3.6、高速起動とキビキビレスポンス』が「2010年に登場することになるとみられるFirefox 3.6」と書くのは勇み足だろう。

もちろん、アナウンスを踏まえても実際には延期されるのではとの見方もある。たとえば、くでんさんの次の発言がそうだ。

現在入っている変更の何をどこまで有効にするのか分からないけど、9月までに「開発」は終えて、あとひたすらバグ取りをしたとしても、11月リリースとか無理なような……2ヶ月しかないんだよ?例によって早くて来年の3月とか4月になりそうな。

しかし、新機能の投入という意味での開発は、現時点でも相当程度まで終わっているように思う。たとえば、Firefox Sprints改めFirefox Projectsを見てみよう。フロントエンド側のプランをまとめたものだが、Firefox 3.6を対象とするものに限ると、マルチタッチ機能の改善のほかには、起動速度の向上と動作速度を速く「感じさせる」工夫が残っているだけだ。後半の二つは、できるところから手を付けていく形になるだろうし、明確なゴールがあるというより、細かな修正の積み重ねになると考えられる。つまり、リリースを遅らせる要素にならない。

言い換えれば、Firefox 3.6はAlpha 1からスピードと安定性は変わっても、機能的にはあまり変わらないだろう。levelさんは、Mozilla Links日本語版『Firefox 3.6 Alpha 1 レビュー』の訳注で「個人的には Personas はなんとかなるのではないか、というより間に合わせるべきだと思う。」と述べ、Firefox 3.6にPersonasを統合すべきと主張されているが、この統合は3.7以降の課題となる。

ましてや、前記『Firefox 3.6、高速起動と〜』が次のように述べるのは、調査不足といわざるを得ない。

MozillaはMozilla Labsで取り組まれているプロジェクト(Prism、Ubiquity、Personas、Jetpack、新タブデザイン、タブ新ページデザインなど)の機能をFirefoxにマージしていく方向性を打ち出している。ただし今のところ、Firefox 3.6にどの機能がどこまでマージされるかはわからない。

現実には、Mozilla LinksのPercy Cabello氏が前記の記事で述べるとおり、どれ一つとしてFirefox 3.6には統合されないと見てよい。おそらく、デフォルトでオフになっているとはいえ、既にコードが投入されているCtrl + Tabやタブプレビューパネルでさえも、Firefox 3.6の段階ではオンにならないだろう。

目に見える変化は、Firefox 3.7を待たねばならない。とはいえ、Firefox 3.6がリリースされて間もなくブランチを作成するとされているので、11月ころには骨格が固まっている機能しか投入できない。Makoto Kato氏がおそらくご自身の作業について述べているであろう次の発言は、Firefox 3.7の開発全体に当てはまりそうだ。

やりかけのものは、1.9.3行きだなって、1.9.3に突っ込むとしても、秋の頭にはある程度完成しておかないとダメだな

そうなると、Firefoxの根幹に関わるような大きな変更は、4.0でという話になる。その4.0のリリースまでにあまり間が空いてしまうと、競合するWebブラウザに追いつく隙を与えることになる。そこで、大きなプロジェクトについては独自のブランチを持っておき、ブランチでの開発が進んで機能的に成熟してきたら、Trunkにマージする方向でMozillaは計画を進めているようだ。Firefox 3.5の開発時にはTraceMonkeyだけだったが、最近PlacesとElectrolysisがプロジェクトブランチに加わった

さらに、二つの「コードライン」が近々加わるという。そこに「第二のTrunk」が含まれている可能性も否定できないが、何らかのプロジェクトを対象にしたものとみるのが無難か。いずれにしても、MozillaはFirefox 3.7と4.0の間を一年も空けるつもりはないはずだ。せいぜい10か月、早ければ7〜8か月といったところか。

(09/08/11追記)
本家Mozilla Links『Firefox 3.6 on November, focus on Personas and responsiveness』は、「It was also confirmed that it will integrate the Personas add-on that allows quick and easy look customization by adding a pair of images as backgrounds for the toolbars.」と伝える。前後の文脈から、Firefox 3.6でPersonasが統合されると断定していることが読み取れる。

しかし、上に挙げたFirefox ProjectsのWebページで、「Personas Uplift Exploration」のターゲットは「1.9.3」と明記されており、これはFirefox 3.7で統合予定であることを意味する。また、Partner Repackという形でなら、現在でもFirefox 3.5.2に同梱されるケースはある(Bug 507614)ものの、このようなセットが標準になるという情報は今のところ出ていないはずだ。

それとも、Percy Cabello氏は秘密の情報を入手しているのか?