Mozilla Flux

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Fennec 1.0 Beta 2がリリース

Nokia N810版Firefox Mobile(Fennec Maemo)の1.0 Beta 2とWindows Mobile版Fennecの1.0 Alpha 2が同時にリリースされた。『New Fennec Releases』によれば、両者はフロントエンド/バックエンドともにコードベースを共通にしており、ユーザービリティのレベルが異なるにすぎないという。

リリースノートに記載された変更点は次のとおり。

  • 新しくデザインされたテーマ
  • JavaScriptエラーコンソールがビルトインされた
  • アドオンサポートの改良
  • たくさんのバグ修正
  • UIをより洗練されたものに

また、パフォーマンスと応答性が改善されているほか、ダウンロードマネージャにもかなり手が加えられている。全般的にユーザー体験の向上に力が注がれているようだ。

ちなみに、XULRunnerを基盤とするが、Gecko 1.9.2a1preベースで、BuildIDは「20090626084238」となっており、Firefox 3.5よりもTrunk Nightlyに近い。interruptible reflow(Bug 67752)など最新の開発成果が盛り込まれている代わりに、Gecko 1.9.1よりも安定性は劣る。今後も開発版のGeckoを使っていくのだろうか。

さて、Beta 2でも前バージョンと同様に、PC版(Windows、Mac OS X、Linux)が用意されている。さっそくWindows版を試してみた。

まず、起動場面だが、筆者の環境ではランタイムライブラリが欠けている旨のメッセージが必ず出る。しかし、Fennecはちゃんと起動し、以降の動作にも支障がない。不思議な現象である。

起動直後、スタートアップ画面はBeta 1と同じものが表示されるが、ロケーションバーが最初から出ていて、アイコンにも対応している点が違う。やはり、ロケーションバーはある方がいい。何をすればいいか迷わなくて済むからだ。

ツールバーのボタンもブラッシュアップが図られている。ただ、戻るボタンを進むボタンよりも大きくするのはやめた模様。

ブックマークのボタンを押すとライブラリに移動。機能はBeta 1と同じだがデザインが洗練されている。

スマートロケーションバーは健在で、各項目は、見やすさに配慮して白地の背景に黒字で表示されるようになった。また、サポートする検索サイトも増えた。

タブ表示に関しては、サムネイルが大きくなり、閉じるボタンも目立つ形に変更された。タブ追加のボタンも直感的に意味を把握しやすくなっている。

コンテンツの表示速度は向上し、通信のオーバーヘッドも減ったようだ。また、UIのレスポンスも良くなった。JavaScriptの処理性能をSunSpiderベンチマークでチェックしてみると、「2555.0ms +/- 0.9%」との結果で、Beta 1が「2772.8ms +/- 6.5%」だったので、着実にスコアが伸びている。ただ、筆者の環境ではFlashコンテンツがうまく処理されない。YouTubeでは、Beta 1と同様に音だけが出て動画が表示されなかった。

EV SSLには以前のバージョンでも対応していたが、表示方法が工夫され、対応サイトであることが一目で分かるようになっているし、表示サイズがコンパクトに抑えられている点も好感が持てる。

設定画面は、TraceMonkeyのオン/オフを切り替える項目が削除された点を除き、Beta 1と同じだが、設定状況が分かりやすくなった。画面最上段のメニューは、将来項目が増えたときに表示するメニューを選択するためのものとみられる。

アドオンマネージャは、Firefoxと共通のものから、独自UIに変更された。ただ、インストール済みのアドオン一覧とアドオンの取得画面が統合されているため、あまり多くのアドオンを一度に表示させることはできないはずだ。

ダウンロードマネージャの強化も見逃せない。ファイルのダウンロード時にダイアログが表示され、マネージャの動作はFirefoxと遜色がない。むしろ、検索に加えて並べ替えもワンタッチでできるぶん、機能は上だろう。


JavaScriptエラーコンソールは、about:configからbrowser.console.showInPanelの値をtrueに設定すると出現する。筆者の環境では値の変更がうまくいかなかったので、prefs.jsを直接いじった。コンソール自体はFirefoxと同等のものが実装されている。

全般的に、UIの洗練とパフォーマンスの向上とが相まって、使い勝手はかなりよい。3か月強の開発成果としては充分なものに感じられる。デスクトップ版の様子から察するに、マシンパワーや画面サイズの制約が大きいWindows Mobile版はともかく、N810版では期待のもてる仕上がりになったと評価できそうだ。

(09/06/28追記)
Windows Mobile版のパフォーマンスの改良点に関し、Brad’s Blogの『Fennec Beta 2 for Maemo and Alpha 2 for Windows Mobile』参照。