Firefoxで新規タブを開いたときの画面に、さまざまな機能を持たせようというAbout:newtabプロジェクト。『Code Sprints続報』で触れたように、Firefox 3.5への導入を目指すものなのだが、Beta 4のコードフリーズが近づいた現在も、まだ開発が継続している。
About:Tabアドオンは、バージョンが0.0.34、0.0.35（以上「Another朝顔日記」参照）と更新され、0.0.36を最後にしばらくアップデートがない。バージョン履歴には0.0.33までしか掲載されていないので、それ以後の詳しい変更内容は不明だが、『Firefox New Tab: Latest Iteration & Next Steps』によれば、インライン検索機能を加え、Cognitive Shieldを廃止した点が大きな要素であるらしい。
インライン検索機能は、ユーザーが検索バーに特定のサイトを追加していなくても、そのサイト内での検索が新規タブから可能になるという機能で、履歴とブックマークのデータベース（Places）を参照しているそうだが、サイト内検索をうまく拾える場合と、そうでない場合があるようだ。また、Cognitive Shieldは、『新しいFirefoxのタブは円形になるはずがない』で紹介した機能だが、ユーザーがシールドをクリック可能なものと誤解する例が多かったため、目障りにならないようにするはずが、かえって目障りになるという皮肉な結果を招いた。現在は、フォントや背景色などを工夫して、各項目をFirefoxの画面全体の中に溶け込ませることで対処している。
次のバージョンでは、『Firefox New Tab: Visual Update』で紹介されている新デザインが採用される。そこでは、項目をユーザーの中心視野から外すという当初のコンセプトは捨てられ、横長の枠が画面中央に六つ並ぶ。最もアクセス頻度の高い二つのサイトについては、サイトの左上を切り取ったサムネイルが併せて表示され、目立つようになっている。画面の横幅を活用して表示に余裕をもたせたことや、一時期カットされていたサムネイルが復活したことが特徴だ。サムネイルがサイトの左上を切り取るのは、ロゴなどが置かれている例が多いためである。なお、初期設定では二つだが、他のサイトもサムネイルを表示する設定に変えられる。
『Firefox New Tab: Now With More Pixels!』では開発者の一人Sean Martell氏が解説を加えている。それによると、クリップボードの情報を基にしたアクションが画面の上部に提示されたときは、サイトの表示数が自動的に調節されるそうだ。
また、画面右下の設定パネルから、新規タブを開いたときに表示する内容を選択できるようになった。About:Tabのほか、空白やホームページにも設定できる。これは、ユーザーに対する配慮であるとともに、拡張機能に対する配慮でもあるのだろう。たとえば、About:Tab 0.0.36はGoogleツールバーと衝突するため、Googleツールバーが提供する新規タブへの追加機能は利用できなくなってしまう。他のアドオンについても同じとみられるが、Firefoxの本体機能として取り込むなら、アドオンの動作を阻害することは許されない。そのための設定パネルだと理解できる。
ところで、疑問なのはこのAbout:Tabをいつ本体に統合するつもりなのかということだ。手順からすると、拡張機能として完成した後、本体に統合するためのパッチを作成し、Trunk（mozilla-central）で様子を見てから1.9.1 Branchにパッチがチェックインされるはずである。また、これとは別に文字列のローカライズも必要となる。どちらも一定の作業期間を設けなければできることではない。
もし、Firefox 3.5 Beta 4を最終β版とするなら、そこで仕様を確定させるのがふつうだ。リリース候補版で既存の機能やパフォーマンスにチューニングを加えることはあるだろうが、新機能を追加することは考えにくい。なぜなら、新機能のフィードバックを踏まえた別の候補版を用意しなければならなくなるからだ。
とすれば、Beta 4のコードフリーズが目前に迫っているのに、拡張機能としての完成すらまだのAbout:Tabは、Firefox 3.5に統合できないことになる。だが、その旨のアナウンスはない。4月7日付けのDevelopment Meetingでは、「New Tab?」と書かれていたので、最近までFirefox 3.5への統合を諦めてはいなかったと思われる。それとも、既にFirefox.nextでの統合へと目標を切り替えており、当分の間アドオンとして存続させるつもりなのか。
