Mozilla Flux

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Firefox.nextの新機能候補リスト

Firefox.next(3.5の後継バージョン)で採用される新機能について、実はMozillaWiki内に暫定的な候補リストが存在している。長大なもので、補足説明もあまりないことから、主に項目名によって内容を推測するしかないという、厄介なシロモノだ。

また、「Firefox.nextのテーマ」と題する文書も別にあるのだが、こちらも漠然とした内容で、あまり手がかりにならない。Firefox 3.5の最終リリース時期が見えていない現時点では、準備にあまり時間を割けないだろうからやむを得ない。

リストに話を戻すと、項目数があまりにも多いため、一回の記事ではとても捌ききれない。大雑把なところから順に検討していこう。

まず、リストの冒頭には、これがドラフトであって実際のプランではないとの断り書きが付されている。たしかに、具体的なプランに落とし込むには実現可能性や作業期間の見積りが不可欠だが、Firefox.nextをどのくらいのスパンでリリースするのかを決めない限り、そうした見積りも行えない。加えて、Firefox 3.5のリリースまでに項目の追加や削除もあるはずだ。あくまで暫定候補として受け止めねばならない。

次に、開発総責任者であるMike Beltzner氏のチェックを経ない限りリストを編集してはいけないと書かれている。そして、「Source」欄には開発責任者クラスを含め有名どころが並んでいる。これらのことから、リストの各項目が、たんなるブレインストーミングを超えて、まじめに導入の可否を検討するレベルに達していると推測できる。箸にも棒にもかからないような内容なら、申請前かチェックの段階で切られているだろうから。

もう一つ、「Area」欄に「Browser」もあれば「Platform」もあるのが特徴で、Code Sprintsのようにフロントエンドだけが対象というわけではない。ただ、TraceMonkeyの文言がないところをみると、既存機能の単純な改良は省かれているようだ。

ちなみに、これを書いている時点で、ページの最終更新日時は「25 February 2009, at 22:27」(UTC:協定世界時)となっている。ちょうどMike Shaver氏がFirefox 3.1の名称変更を議論したいと述べていたころだ。後で実際に変更されることになったのはご承知のとおり。その時期に「Firefox/3.next/hitlist」と名付けられた理由を考えてみると、3.5の次もまだ3.xの名称を使う、言い換えれば4.0にするつもりはないという意図が背景にあるとも受け取れる。

以上を大枠として、もう少し手がかりを探すと、「+」欄に数字が記載されているのが目につく。この数字の順に項目を並べ替えることも可能だ。その意味を考えてみると、数字がない項目も多いこと、大きな数字の項目ほど少ないこと、Firefox.nextに導入されることが確実な「Ubiquity uplift」が「7」となっていることを総合して、数字が大きいほど意味があることは間違いない。

とはいえ、それが開発の優先順位を意味するかというと、同様に導入確実な「Prism uplift」が「4」とされているなど、腑に落ちない点もある。Bugzillaのvoteのように、賛成票の数を表しているのかもしれない。ただ、リストの編集者は前述のとおり名のある開発者たちなので、たくさん賛成票を集めた機能は最後まで残る確率が上がるだろう。

ここで、「+」欄の値が3までの機能を挙げておく。なぜ3で区切るかといえば、Personasの改良版を指す「lightweight theme support」が3にランクされており、導入確実なPersonasと同じランクの機能であれば、やはり導入される可能性が高いと考えられるからだ。つまり、最低ここまでは入るだろうということ。

(09/04/06追記)
「lightweight theme support」はPersonasの改良版とは別物のようだ(『Firefox.nextで「軽い」アドオンが加わりそう』参照)。すると、Personasを扱った項目がリストからなくなってしまうのだが……。

ランク3までなら導入されるはずという前提も崩れるが、その後に判明した動向から見て、以下の機能がFirefox.nextで実装されることは間違いなさそうだ。<追記終>

  • new tab experience(8)
  • Ubiquity uplift(7)
  • tab switching / navigation / find(6)
  • improve awesomebar performance(5)
  • add-on install/uninstall/disable without restart(5)
  • inline PDF support for OSX(5)
  • offline application storage(5)
  • compositor(5)
  • new customizable and configurable start page(5)
  • Prism uplift(4)
  • startup time(4)
  • lightweight theme support(3)
  • make tabbbar a XUL toolbar(3)
  • awesomebar to search through / display open tabs(3)
  • Weave uplift(3)
  • identity management(3)
  • about:me analytics package for browsing habits(3)

最高ランクは「new tab experience」だった。これが『「新しいタブ」にタスクを追加する実験』で紹介したAbout:Tabを指していることは明らかだろう。現在も試行錯誤が繰り返され、毎日のようにバージョンアップしているのだが、仕様が固まったときは、そのままFirefox.nextの仕様になりそうだ。

次点の「Ubiquity uplift」に関しては、『UbiquityとFirefoxの融合に向けて』などで触れた。同記事以後もモックアップの改善案が出されているものの、基本線は変わらない。

tab switching / navigation / find」は、Firefox 3.5から外れたタブの操作機能で、[Ctrl]+[Tab]キーでの切り替えや、タブリストの一覧表示にパネルとサムネイルを用いるものだ(『Firefox 3.2のタブ機能をさわりだけ』)。

improve awesomebar performance」は、『ロケーションバーの検索速度をアップさせる試み』で紹介したもののほか、トランザクション・マネージャの改良とデータベース・スキーマの改訂を含むと該当項目のコメント欄にある。

add-on install/uninstall/disable without restart」は、ユーザーが長らく待ちわびた機能といえるだろう。再起動なしのアドオン操作が実現されれば、Firefoxの使い勝手はかなり違ってくるはずだ。ちなみに、データはやや古いものの、アドオンマネージャには開発のロードマップが存在する。加えて、Firefox 3のリリース以前に作成されたデザイン案も、Firefox.nextで流用されるかもしれない。

inline PDF support for OSX」は文字どおりの機能だ。また、「offline application storage」は、HTML5サポートの一環と思われる。
(09/03/16追記)
inline PDF supportは、おそらくインライン表示という意味で、プラグインなしにPDFを読めるようにするのではないと思う。

compositor」は、内容が難しいため筆者もうまく理解できていないのだが、描画内容を組み立てる司令塔のようなプログラムらしい。これが実装されれば、Alice0775氏が「ブラウザとして致命的な欠陥」と呼ぶバグも解消される見通しだ。
(09/03/16追記)dynamisさんのコメントも参照。

new customizable and configurable start page」は謎の機能である。スタートページをユーザーがカスタマイズできるというのだが、何をどのようにカスタマイズするのだろうか。

Prism uplift」と一つ飛ばして「lightweight theme support」については、『Firefox 3.2を補強する三つの柱』で紹介済みだ。「startup time」はそのままで、起動時間の短縮を図るもの。手段は不明だが。

make tabbbar a XUL toolbar」は、前記『Firefox 3.2のタブ機能を〜』で書いたタブバーのツールバー化のことだ。カスタマイズの柔軟性は高まるが、タブ操作系アドオンへの影響は大きい。

awesomebar to search through / display open tabs」は、二つの機能が記載されている。前者は、何を検索するのかが問題だ。ページ内検索とWebページ検索が候補になる。Webページ検索だとすると、Google ChromeのOmniboxと同じになるから、当然UIにも影響してくる。ただ、後者の「display open tabs」と並列されている点も考慮すべきかもしれない。これは、Code Sprintsの「Tab Matches In Awesomebar」を指していると考えられる。あくまでFirefoxの内部で完結する処理であり、これを踏まえると、ページ横断検索という第三の候補が浮上する。たとえば、ロケーションバーに検索したい文字列を打ち込むと、最左端のタブから検索を始め、あるタブ内でヒットすれば、そのタブがアクティブになるといった形だ。

Weave uplift」は、意外な発見だった。WeaveはFirefox.nextから外れ、Firefox Mobileとの連携に力を注ぐと考えていたからだ。しかし、Firefox.nextとの統合も充分ありうると判明した。現在もアドオンとして提供されているとはいえ、オプション画面には「詳細」の右に「Weave」が入る仕様で、クライアント側の統合は比較的容易なことが窺える。ただ、桁違いにユーザー数が増えるので、サーバーが耐えられるかは疑問だ。

identity management」に関しては、Firefox.nextのテーマを記載した前記文書にヒントがある。「logging in to services」と「smarter/auto form fill」がそれだ。パスワードマネージャを拡張し、ノートンIDセーフのような方向性を目指すのだろうか。とすれば、自動ログイン機能なども含まれるのかもしれない。

about:me analytics package for browsing habits」は、Code Sprintsの一環だ。もちろん、Firefox 3.5に間に合ったとしても、その強化版がFirefox.nextに入るのだろう。

主要な機能をざっと眺めただけでも、かなりの分量になった。今回扱いきれなかった項目にも興味深いものは多い。それらは別の機会に紹介するつもりである。