Mozilla Flux

Mozilla関係の情報に特化したブログです。

バグに関する話題 090302版

最新のShiretoko Nightly(3.1b3pre, ID:20090301033810)で目立つのは、browser.identity.ssl_domain_displayのデフォルト値が、0から1に変更されたことだろう(Bug 480357)。これによって、SSL接続時には「Effective TLD + セカンドレベルドメイン」がfavicon右横に表示される。設定一般についての詳細は、「鳥獣保護区」の該当記事を参照していただきたい。

たとえばMozilla Wikiにアクセスすると、サイトアイコンにmozilla.orgの文字が現れる。背景は従来どおり青なので、EV SSL接続と勘違いすることはない。今回の変更は決定事項ではなく、ユーザーのフィードバック次第で元に戻すこともありうるそうだが、筆者はこのままいくべきだと考えている。たしかに、URLを表示可能な領域が減るのを嫌う人もいるだろう。だが、SSL接続時は、ユーザーがサイトアイコンをクリックして認証局を確認するのが望ましい。その望ましい行動を促すうえで、サイトアイコンが色以外にも表示を変えるのは効果があると思う。このメリットは、URLの表示領域が少し減るデメリットを大きく上回っている。

次のトピックに移ろう。Alice0775氏が取り上げているバグの話題に興味を惹かれた。未解決のまま放置されているが、そのせいでユーザーがFirefoxをメインブラウザとして使うのをためらってしまうようなバグがあるという。そのうちの一つが、"Bug 372039 - [Fx3] Slow and laggy scrolling with fixed background, high CPU usage"である。スタイルシートで背景画像を固定したWebページでは、高いCPU負荷がかかり、スクロールが遅くてカクカクしたものになるとの報告だ。

このバグレポートにはテストケースが付いている。これがとてもよくできていて、ベンチマークとしても使える。画面左上のボタンを押すと、ページが自動的にスクロールし、最後に経過時間を表示してくれるのだ。

次のWebブラウザを対象に、3回ずつ計測してみた。また、タスクマネージャでCPU使用率をチェックし、最高値をピックアップした。
Firefox 3.0.6
Firefox 3.1 Beta 2
Shiretoko(3.1b3pre, ID:20090301033810)
Google Chrome 2.0.166.1(WebKit/530.1)

Fx 3.0.6 Fx 3.1b2 Fx 3.1b3pre Chrome 2.0
1回目 8006ms 4664ms 4674ms 4428ms
2回目 7775ms 4656ms 4578ms 4429ms
3回目 7984ms 4810ms 4634ms 4378ms
CPU負荷 39% 67% 61% 68%

本バグは、当初Firefox 3を対象にしたものだった。計測してみると、3.0.6はたしかに遅い。その一方で、CPU負荷は最も軽いことがわかる。

これに対し、Firefox 3.1 Beta 2を見ると、スピードが大幅に改善した代償として、CPU負荷は非常に高くなった。だが、それを3.1の欠陥といえないことは、速さに定評のあるChrome 2.0と比較すれば明らかだ。最速のスクロールを誇るChromeは、CPU負荷でFirefox 3.1 Beta 2に並ぶのである。

Shiretokoはスクロール速度とCPU負荷の両面で3.1 Beta 2に勝る。つまり、3.1 Beta 3はBeta 2から着実に進歩している。

もちろん、経過時間やCPU負荷はユーザーの環境次第で大きく変動するだろう。それでも、だいたいの傾向はこれで把握できた。PCの性能向上を踏まえれば、CPU負荷がかかってもスクロールが速いほうが使い勝手はよさそうだ。また、現時点で既に、Firefox 3.1の開発版はスクロールが「遅くてカクカクしたもの」にはなっていない。3.1正式版が出る頃にはなおさら、メインブラウザとして使うのをためらう理由にはならないはずである。

最後に、以前取り上げた"Bug 479739 - Make location bar autocomplete even faster"のパッチがTrunkに入っていることを指摘しておきたい。Minefield/3.2a1preでは既にスマートロケーションバーの処理が高速化された。現在、Branchへのチェックインを承認してもらえるよう申請しているところだ。ユーザーからのフィードバックを集めるならBeta 3が最適なので、承認されるのではないかと密かに期待している。