Mozilla Flux

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Bespin:Webベースのコードエディタ

Mozilla Labsが、新しいソフトウェアを発表した。Bespinという名の、Webブラウザ上で動作するコードエディタである。最初のα版であるバージョン0.1が公開されている。ただし、利用には登録が必要だ。

Bespinは、HTML 5のCanvasを全面的に利用してさまざまな機能を実現している。Canvasとは、ブラウザ上に図を描くために策定された仕様で、プラグインを使わずにJavaScriptベースで図を描くことを可能にする。実際には、まずCanvasを基にGUIツールキットを自作し、そこからBespinを組み立てているそうだ。こうした事情から、Canvasに対応していないブラウザでは動作しない。つまり、Firefox 3やSafari(Google Chrome)、OperaならOKだが、IEはダメということ。

Webベースの強みを生かし、リアルタイムのコラボレーションができる点は、Bespinの大きな特長といえよう。複数のユーザーでファイルを共有しながら編集作業を進められるようになっていて、ある人が打ち込んだコードは、他の人の画面にリアルタイムで反映される。また、ファイルをマス目で区切られたマップとして表現する機能もある。これは、大きなファイルを共同で編集する際、どの部分で編集がおこなわれているのかを直感的につかめるようにするものだ。

コラボレーションは、エディタ本体がスムーズに動作してこそ使い物になるが、その点も疎かにはしていない。数千行のファイルを読み込んでも動きは依然として滑らかだ。また、JavaScriptをはじめ、さまざまな種類のコードを扱うことができる。

画面の最下部には、コマンドラインが設けられており、UNIXライクな命令を実行できる。命令を自分で定義することも可能だ。Emacsなどを参考にした機能だとか。さらに、プラグインによってBespin本体を拡張する仕組みも備える。

そのほか、Dashboardと呼ばれるファイルの管理機能を有するが、ツリー型のファイラでは頻繁にスクロールする必要があるため、コラム型になっている。画面の下部にはこれまでに開いたセッションの履歴が表示される。

将来が楽しみなソフトだが、なんといってもまだバージョン0.1なので、バグも多い。たとえば、同じプロジェクト名でログインできる人の数が限られてしまうとか、コピー/ペーストがうまくできないといった点が報告されている。加えて、BespinをIDE(統合開発環境)と呼ぶ向きもあるようだが、少なくとも現段階では、その域に達していない。コンパイラやデバッガと統合されていないことが大きいが、プロジェクト管理やバージョン管理など、実装されていない機能が多すぎる。開発者たちも、IDEの名称を注意深く避けているように思われる。