Mozilla Flux

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ブランチ開発版を使う楽しみ

Firefox 3.1の開発状況を知るうえで、ナイトリービルドであるShiretoko(現在は3.1b3pre)のチェックは欠かせない。Shiretokoはmozilla-1.9.1 Branchの開発版であり、3.1 Beta 2のリリース後に投入された修正が反映されているからだ。

とはいえ、最新の修正や実験的な機能はTrunk(3.2a1pre)にまず投入される。とにかく新しいものに触れたいのであれば、そちらを使うほうが目的にかなっている。では、Firefox 3.1がどのような姿になるかを事前に知る以上に、ブランチ開発版を使う理由があるだろうか。

もちろんある。まず、Shiretokoは単純に、より高速で安定した3.1 Beta 2として使うことができる。これは、開発ポリシーと関係していて、重大なバグの修正や開発総責任者が投入を承認した修正しか追加されていないため、基本的に安定性が落ちることはないのだ。そして、JavaScriptを高速化するTraceMonkeyは改良が続けられ、バグを潰すことで足を引っ張る原因も減っているので、処理速度も向上している。

たとえば、SunSpiderベンチマークでJavaScriptエンジンの性能をチェックしてみると、筆者の環境では次のようになる(3.1b3preはID:20090110042042を使用)。
3.0.5: 6711.8ms +/- 0.7%
3.1b2: 2519.4ms +/- 1.4%
b3pre: 2385.0ms +/- 0.7%
誤差を考慮しても、Shiretokoが3.1 Beta 2よりスピードアップしているのが見て取れる。

もう一つのメリットは、日々バージョンアップしていく様子を体感できるという点。MozillaZineのFirefox Buildsフォーラムには、日々スレッドが立てられ、修正状況を追跡できるようになっている。これを見ながら、TraceMonkeyに大幅な修正が入ったと知ればベンチマークで数値を計測し、UIのバグが修正されたと知れば操作してみて確認する。これが楽しい。

たしかに、β版はまとまった開発成果を享受できるが、数ヶ月に一度の変化なので、最初は素晴らしいと感じても、使っているうちに慣れてしまう。それに比べて、Shiretokoなら飽きることがない。もちろん、ほとんど修正が入らない日もあるし、修正があっても自分のとは異なるOSのものだったり、滅多に使わない機能のものだったりもする。それでも、数日に一度は気になる修正を見つけることができるだろう。

ほかに強いて挙げれば、他の人が使っていない素晴らしいものを使っているという、ちょっとした優越感を感じられるところだろうか。

これらとは逆に、Shiretokoを使うデメリットも当然ある。最大のものは、開発者が想定していなかった不具合が出てくる危険があることだろう。前述したポリシーのおかげで、Trunkのように地雷が埋まっていることはないはずなのだが、開発版なので保証はゼロ。この点は肝に銘じておく必要がある。

また、未対応のアドオンは多い。そこで、NIghtly Testor Toolsを使って対処することになる。幸い、Firefox 3.1は3.0.xとの間で高いアドオン互換性を備えているといわれる。テーマだと難しいかもしれないが、拡張機能のほうは強制インストールさせてもだいたい動作する。

プロファイルを管理するなど、扱いに多少の知識が必要となる点もデメリットに挙げられよう。が、これはβ版を使う場合も同じだ。プログラム本体は別のフォルダにインストールされるが、通常版とプロファイルを共有すると不具合が出やすくなる。この点は、「Firefoxまとめサイト」の該当記事をチェックすれば解決するだろう。

そのほか、最新版は英語版(en-US)に限定されるが、これはやむを得ない。ローカライズの作業はたいへんなのだから。日本語版を使い慣れていれば、メニューやメッセージが英語でも、だいたいの意味はつかめると思う。

あと、ユーザーエージェントを判別するタイプのWebサイトだと、不具合が出ることがある。一例として、これを書いている時点で、ShiretokoからYahoo! JAPANにアクセスすると、次のようなメッセージが表示され、メニューやカレンダーなどの機能が利用できない。

Yahoo! JAPANトップページの全機能をご利用いただくには、下記の環境が必要となります。
Windows:Internet Explorer 5.5以上 / Firefox 2.0以上 Macintosh:Safari 2.x以上

文字列に"Firefox"が入っていないだけで、3.0.xの上位バージョンが弾かれるのは理不尽だが、こうした措置をとっているサイトは残念ながらちらほら見かける。Shiretokoを使うなら、こうした目に遭うことも覚悟しないといけない。
(09/01/15追記)どうやらYahoo!では「2009」という文字列だけが問題で、Shiretokoだからダメなわけではなかったようだ(Bug 471816)。お詫びして訂正する。

以上のようなデメリットを知っても、自分は大丈夫だ、使ってみたいという人がいれば、mozilla.orgのダウンロードページから最新版をダウンロードして、一度試してみてはいかがだろうか。