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次のFirefox ESRはバージョン59ではなく60 その影響を探る

Firefox ESR(延長サポート版)は年に1回、メジャーアップデートが実施される。その時期には法則性があって、Firefoxのバージョン番号から10を引くと7の倍数になる。直近だとFirefox 52なわけだが、最初のESRがバージョン10からスタートしたため、こうした中途半端な数字になっている。

本来であればFirefox 59が次のESRとなるはず。ところが、Firefox/EnterprisePolicies - MozillaWikiによれば、Firefox 60を次のESRとするという。言い換えると、次のESRのリリース時期が、2018年3月から5月へと延期されたわけだ。

延期の背景には、法人ユーザー向けに"Policy Engine"と呼ばれるFirefoxのカスタマイズ機能を提供する計画があるようだ。従来、こうしたカスタマイズはおおむね旧式拡張機能によってカバーされてきた。だが、Firefox Quantumで拡張機能のWebExtensions限定化が実施され、状況が大きく変わった。たとえばCCK2 WizardはFirefox ESR 52での利用が推奨され、globalChrome.cssはuserChrome.css/userContent.cssへの移行を検討せねばならなくなっている。Mozilla公式のカスタマイズ機能が求められるゆえんだ。

Firefoxの新コンポーネントとなるPolicy Engineの開発に一定の期間を要するため、ESRのリリース時期がイレギュラーとなった。この理由を見るかぎり、おそらくリリース時期の変動は今回限りの措置だろう。Firefox ESR 60の次は、ESR 67ではなく66になるとみられる。

次期ESRの登場が後ろ倒しになった影響で、Firefox ESR 52系列のサポート期間は延びることになりそうだ。新ESRと旧ESRは2バージョンの間並行してリリースされ、これが移行の猶予期間になっている。猶予期間を削るわけにはいかないだろうから、新ESRのリリース時期を遅らせた分だけ、旧ESRつまりESR 52のサポートを長く続けざるをえないというわけだ。サポート終了が2018年8月下旬になるので、旧式アドオンを使うためESRチャンネルに乗り換えたユーザーや、Windows XP/Vista上のユーザーにとっては朗報と言える。

また、ThunderbirdもFirefox ESRと同じWebエンジン(Gecko)を使用しているので、メジャーバージョンアップの時期がずれてくるだろう。次期ThunderbirdはFirefoxと異なり旧式アドオンのサポートを続ける一方で、アドオン側の対応が求められており、未対応のアドオンは初期設定で無効化される。アドオン作者が開発に使える時間が増えれば、対応するアドオンが揃う可能性は高くなる。

ちなみに、Policy Engineはシステム管理者による利用が想定されているものの、ESRチャンネル以外でも有効化することは可能なようだ。カスタマイズ用の「ポリシー」は、一部機能の制限やブックマークの追加などが中心だが、初期設定でメニューバーを有効化するといったUIの調整についても議論されているという。仮にUIのカスタマイズが柔軟にできるようなら、部分的にuserChrome.cssを代替できるかもしれない。

(17/12/29追記)
本記事執筆後、次期「Firefox ESR」は「Firefox 60」ベースに ~現行版「Firefox ESR 52」は少し延命 - 窓の杜がこの話題を取り上げ、Firefox ESRの英語ページの図がアップデートされて、Firefox 60を次のESRとする一方、ESR 52系列のサポートが52.9まで続く形になっていることを指摘した。また、米国時間の2017年12月21日にはMozillaから正式なアナウンスも出ている。それによると、Firefox ESR 52.9のサポートが終わる2018年8月28日までは、Windows XP/Vistaのサポートも継続される。

また、上記アナウンス後にThunderbird開発者のJörg Knobloch氏は、次期安定版がThunderbird 60になると明言した

なお、本文で触れたPolicy Engineは、プロトタイプの開発が進んでいる(Bug 1419102)。