Mozilla Flux

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Windows向けFirefox 52で64bit版が主役に 2017年後半には自動アップデートも提供へ(追記あり)

Windows向け64bit版Firefoxは、2014年11月に発表されたプランからすると提供がかなり遅れており、Mozillaとしても慎重ならざるを得なかったのか、これまで新たな計画が明らかにされることはなかった。だが、ここにきてFirefox/Win64 - MozillaWikiに具体的なスケジュールが掲載されるようになり、本腰を入れてきた感がある。

上記のスケジュールは、1つひとつが簡潔な記載になっているため、読み解くには様々な情報と突き合わせる必要がある。現在判明しているところでは、まず、2016年9月下旬から10月上旬にかけて、新しいダウンロードページのテストが実施される。Firefox 50のリリース予定日が11月8日(米国時間。以下同じ)であることを踏まえたものとみられ、おそらくそのリリースに合わせて、MozillaのWebサイトのトップページから64bit版Firefoxのスタンドアローン型インストーラ(フルインストーラ)への導線が強化される。

次のステップはFirefox 52で、適格性のあるユーザーに対しては、軽量インストーラ(スタブインストーラ)が初期設定で64bit版をインストールするようになる(Bug 797208)。ここで、適格性のあるユーザーとは、搭載メモリが4GB以上のPCでWindows 7以降のOSを使用しているユーザーを指す*1。軽量インストーラはMozillaのWebサイト以外でも広く公開されており、多くのユーザーがこの時点で64bit版に触れる機会を持つことになるはずだ。脇役だった64bit版は、ついに32bit版を押しのけて主役となるわけだ。ちなみに、かつてのプランでは、軽量インストーラに64bit版が統合され、ユーザーが選択できるようになるのがフェーズ2とされていた。今回のスケジュールは、64bit版を初期設定にした点が目新しい。

最後に、2017年後半には、適格性のあるユーザーが32bit版を使用している場合、64bit版が自動アップデートで提供される(Bug 1274659)。かつてのプランでフェーズ3と呼ばれていた段階であり、ここまできてようやく、2014年11月に発表されたプランが完遂されたことになる。Firefoxのリリーススケジュールを見ると、2017年の後半にリリースされるのは3バージョン。すなわち、8月8日リリースのFirefox 55、10月3日リリースのFirefox 56、11月28日リリースのFirefox 57だ。MozillaWikiの改版履歴をチェックするとわかるが、当初は2017年第2・第3四半期となっていたものが、単に第3四半期とせず、後半に変更されている。つまり第4四半期にずれ込むことを考慮したわけで、Firefox 56が暫定的なターゲットではないか。*2

スケジュール通り進められるかどうかは、前提条件を確保できるか否かにかかっている。MozillaはFirefox 52でFlash以外のNPAPIプラグインのサポートを廃止することにしているが、この予定が延びてしまうと、64bit版を主役にするという計画にも狂いが生じる。また、FlashプラグインについてMozillaは自前でサンドボックス化を実現していくが、これに関連するバグを潰しきれるかという問題がある。さらにいえば、バイナリベースの拡張機能に関し、XPCOMによるものは既にFirefox 41で廃止されたが、js-ctypesによるものの廃止にあたっては、WebExtensionsによる代替機能の提供を考慮する必要があるかもしれない

64bit版への移行は、ポインタサイズが倍になる関係で消費メモリが25%増しになるというデメリットもあるが、処理の高速化に加えて、アドレス空間消尽の問題がなく、アドレス空間配置のランダム化(ASLR)が強化されてセキュリティが向上するなど、メリットも大きい。今回のスケジュールのまま開発が進むことを期待したい。

(17/02/12追記)
本記事執筆後に動きがあり、本文の内容は最新ではない。2017年10月上旬までにWindows向け64bit版Firefoxの自動アップデートが開始 - Mozilla Fluxを参照してほしい。

*1:Windows向け64bit版FirefoxはWindows 7以降でしか動作しない。

*2:ちなみに、OS X向けFirefox 53では、Windows向けに先んじてビルドがIntel 64bit版に一本化される見込み(Bug 1295375)。