NetApplications社の月例統計によれば、2009年12月時点におけるFirefox全体のマーケットシェアは、24.61%(前月-0.11%)である。2009年中の25%越えはならず、予想外の展開となった。
StatCounterのデータも同様の傾向を示しており、Firefoxの12月のシェアは31.97%(前月-0.24%)である。2つの有力な指標がシェア低下という結果になっており、その確度は高いといえよう。
では、Firefoxのシェアはどこに流れたのか。競合するWebブラウザのシェアを眺めてみる。
IE | Safari | Chrome | Opera | |
---|---|---|---|---|
2009年10月 | 64.64% | 4.42% | 3.58% | 2.17% |
2009年11月 | 63.62% | 4.36% | 3.93% | 2.31% |
2009年12月 | 62.69% | 4.46% | 4.63% | 2.40% |
Google Chrome(以下Chrome)である。SafariやOperaも多少増えてはいるが、0.70%の上昇を見せたChromeには遠く及ばない。例によってInternet Explorerが1%弱のシェアを失っていることも考慮すると、まさにChromeのひとり勝ちだ。Safariのシェアをあっさりと抜いてしまったことも特筆に値する。
Chromeの躍進は、StatCounterのデータからも裏付けられている。12月と11月のグラフを比べると、Chromeのバーがはっきりと長くなっている。
〈12月〉
〈11月〉
12月にChromeのメジャーバージョンアップが実施されたわけではない。とすると、やはりGoogle Chrome Extensions(拡張機能ギャラリー)がBeta版として公開された影響なのだろう。かなりの数のアーリーアダプターがChromeの拡張機能が本格的に提供されるのを待っていたところ、ギャラリーの公開を機に一斉に使い出したのでシェアが伸びたわけだ。
この現象が一過性のものなのか、それとも定着するのか、はたまた大躍進の第一歩なのか。Firefoxのシェアが現に下がったこともあり、非常に注目されるところだ。
次に、NetApplications調べによるバージョン別のシェアでは、Firefox 3.5が16.32%(前月+1.16%)、Firefox 3が6.91%(前月-1.22%)である。Firefox 3についても、予想に反して7%を割った。その落ち込み分をFirefox 3.5が吸収できていない点が、全体シェアの数値に響いている。
他のブラウザに目を向けると、IE6のシェアは20.99%まで低下し、IE8の20.86%と僅差となった。ただ、IE8の互換モードだけで2.80%もあり、これを加えると完全に逆転する。IE6にはさまざまなエディションがあるようだが、それらを合わせても2%にも満たないとみられ、実質的にIE6は首位の座を譲った。
12月はStatCounterのデータを基にMozillaのエバンジェリストAsa Dotzler氏が『firefox 3.5 is the most popular browser in the world』という記事を書き、これを受けて日本でもFirefox 3.5がシェアでトップに立ったかのような報道がなされた(ITmedia News『Firefox 3.5、ブラウザ市場でシェア1位に』など)。しかし、NetApplicationsのデータでは、トップにはほど遠い。
Dotzler氏は職業柄シェアの推移を詳細に追っているようであり、上記の記事を書いた12月20日(米国時間)の時点で、Firefoxの伸びが止まっていることや、Chromeの好調さを把握していた可能性が高い。にもかかわらずFirefox 3.5が順調に普及しているとアピールするのは、恣意的との批判を免れない。
冷静にシェアデータを眺めれば、さらにもう1つの懸念材料があることに気づくだろう。それは、Chrome 4.0が0.75%であるのに対し、Firefox 3.6が0.30%しかない点だ。どちらも現在Beta版の段階にあり、1月中に正式版がリリースされそうな点も同じである。開発段階に大きな差がないのに、シェアの差は明らかとなっている。特定のブラウザを熱心にアピールしてくれる層がChromeに流れすぎるのは、Firefoxのマーケティングという観点からすると問題だ。そして、Firefoxの開発総責任者Mike Beltzner氏は、このことを完全に理解しているように思われる。Firefox 3.7(または3.6.2/3.6.3)を3月末〜4月初めにリリースすることにこだわっているのも、Chrome 5.0に先んじたいからではないか。
最後に、1月のFirefoxシェアを予想する。12月の波乱で、予想はとても難しくなった。Firefox 3.6がリリースされて注目を集めるとしても、確実に25%を超えるという保証はない。ただ、IE8がIE全体の落ち込みをカバーできておらず、脅威にならないと判明したことだけは救いだ。悪くてもFirefoxは現状を維持することだろう。
(10/01/10追記)
CNET Japan『12月世界ブラウザシェア、「Chrome」が「Safari」を上回る--Net Applications調査:ニュース』の次のような指摘は的を射ていると思う。
Chromeのシェアが急激に拡大したのは、Googleが「Mac OS X」およびLinuxコンピュータ向けに最初のChromeベータバージョンをリリースしたためである。それまでは、開発者プレビューバージョンのみが公開されていた。