Mozilla Flux

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Firefoxが速く前に進むために

プラハで開かれたMozCamp EU 2009では、重要なプレゼンテーションが少なからず行われたようだ。Firefoxの開発総責任者Mike Beltzner氏の『Firefox.next: going faster』もその一つである。

同プレゼンの背景を解説したものが、Beltzner氏の『Firefox.next: moving faster』という文章。そこでは、5周年を迎えたFirefoxが、これまでよりも短期間で頻繁にリリースする形式に移行する理由が述べられている。

Firefoxはいまや業界の3巨人と競争するようになった、とBeltzner氏はいう。プレゼン資料にはIE、Google Chrome(以下Chrome)そしてSafariのロゴが見え、3巨人がMicrosoft、Google、Appleを指すとわかる。この競争はMozillaが望んで創り出したもので、インターネットとユーザーに利益を与えるが、かといってFirefoxがここで脱落するわけにはいかない。オープンWebテクノロジーがたんにコモディティ化することを許さず、エキサイティングで豊かでインタラクティブな体験をユーザーに向けて提供していく。プレゼン資料では、協働的・集合的開発モデルを維持するとしているが、要するに大企業の手にWebの未来を委ねてよいのかという問題意識が念頭にあるのだ。

激しい競争についていくことを考えたとき、新バージョンのリリースに1年以上をかけるのはリスクが大きい。その間に起こる環境の変化に、対応できなくなる可能性があるからだ。そこで、より速く、より効率的に開発を進めていくために、小さなプロジェクトを積み重ねて、キリのいいところでリリースする方針が採用された。

プレゼン資料では、Firefox 3.6の開発期間を6ヶ月としている。当初の4ヶ月強よりも後退しているのは気にかかるが、3.5が6月末に出たので、遅くとも年内にはリリースされることになる。

次のFirefox 3.7の開発期間を5ヶ月、4.0のそれを6ヶ月としている点は興味深い。3.7が2010年5月前後、4.0が11月前後という計算であり、3.6の開発がやや遅れているにもかかわらず、強気のスケジュール設定だ。

主な機能として挙げられているものを見てみよう。Firefox 3.6では、Personas、プラグインのアップデート、ビデオのフルスクリーン表示、CSS gradients、js ctypesとなっている。もちろん、これらに加えて応答性、安定性、処理速度の3つも強化する。

Firefox 3.7では、Weaveが統合される。ただし、完全統合ではなく、ブックマークの同期だけにとどまる可能性が高い。タブのマネージメントという項目は、何を指すのかはっきりしないものの、タブプレビューパネルのことか。そして、新しいテーマ、アニメーション、プラグインの別プロセス化と続く。ここでいうアニメーションとは、たぶんTab animationが中心だろう。

Firefox 4.0でJetpackが統合され、新しいユーザーインターフェイス(UI)が採用され、コンテンツとクロームのプロセスが分離されることは、既にロードマップの中で明らかにされている。

しかし、タスクベースのブラウジングとコンテンツ作成ツールがこのリストに含まれているのはどういうわけか。前者はTaskfoxの名称でUbiquityの一部を統合するもの、後者はPrismの統合を指すものと思われるが、どちらもFirefox 3.7で実現する予定だったはずだ。それが4.0へと後退している。UIの確定に時間がかかるであろうTaskfoxはともかく、Prismは、同等の機能が既にChromeに実装されていることを考えると、当初の計画どおり3.7に投入すべきであろう。

4.0の先はまだ決まっていない。いちおう2011年にFirefox 4.1となっているが、あくまで仮称の段階。とはいえ、短期間で頻繁にリリースするスキームである以上、2011年の上半期中には次のバージョンが登場するはずだ。開発者の負担は大きいが、このペースを維持できればユーザーを惹きつけておくことができそうである。