Mozilla Flux

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Firefox 4.0のモックアップを扱った記事が見逃したもの

MozillaWikiのFirefox/4.0 Windows Theme Mockupsが話題のようだ。CNET Japan『モジラ、「Firefox 4.0」のモックアップを公開--「Chrome」風のアプローチも』や、@IT『Firefox 4.0の新UIモックアップはChromeそっくり』などで採り上げられている。

Firefoxが注目されるのはいいことだが、Mozillaにとってはやや不本意なモックアップの扱われ方だろう。なにしろ、Chromeそっくりのスケッチ(『Windows版Firefox 3.7のUI変更は小幅、しかし4.0で全面リニューアルの予定』参照)に対するフィードバックを踏まえて、現行版と同じタブ配置の「Tabs-on-Bottom」をVersion Aという目立つところに持ってきたのに、Version Bの「Tabs-on-Top」だけがクローズアップされるのだから。

しかし、それよりも、モックアップに触れた各記事が重要な細部を見逃している点こそが気になる。前記CNETの記事は、「Firefoxの場合、タブを一番上に配置することは、『Electrolysis』のコンセプトと上手く合致する。」などと意味不明のことを平気で書くレベルなので仕方ないが、 前記@ITの記事も、ボタンの色を変えつつ統合するギミックやプログレス「ライン」に着目する鋭さはあるものの、もう一歩踏み込みが足りない。

たとえば、「Tabs-on-Bottom」のモックアップ。『FirefoxのUIデザイナーが「検討中のものだよ」と釘を刺す』にFirefox 3.7のものがあるので見比べてほしい。検索バーとステータスバーがなくなっている*1ほか、ブックマークメニューのアイコンが目立つようになっているのがわかるだろう。このアイコン、3.7のモックアップでは、ブックマークツールバーのオン/オフを切り替えるだけの役割だったのに、4.0のモックアップではブックマークそのものを呼び出すことも想定している。Google Chromeでさえ、ブックマークツールバーを捨てていないから、機能的にいって、ブックマークメニューのアイコンは次の「Tabs-on-Top」にも残さざるを得ないのではないかと考えられる。

「Tabs-on-Top」はどうだろう。こちらも、ステータスバーがないのは一目瞭然だが、ロケーションバーの左端に検索バーのアイコンがあるので、両者が統合されているのもわかりやすい。そして、そのアイコンの隣に、カプセル型に囲われたアイコンとエンジン名が見える。これは、Taskfoxで採用されているUIである。ということは、ロケーションバーと検索バーの統合は、Taskfoxの延長線上で考慮されている可能性が高い。今のところモックアップには出てこないが、検索結果のプレビュー画面が用意されそうだ。
(09/07/30追記)
スクリーンショットは、タブを使用したプレビュー画面かもしれない。コメント欄参照。

二つのモックアップを眺めたとき、タブの配置は従来どおりかもしれないし、Chromeのように変えるかもしれないというのだから、実はクローズアップされているほどには大事な話ではない。それよりも、前記スケッチへの批判を受けてもなお、ロケーションバーと検索バーの統合、それにステータスバーの削除は維持している点にこそ着目すべきだ。とくに、ステータスバーの削除は、『Mozilla短信 #14』でも簡単に触れているとおり以前から計画されていたらしい。今回のモックアップでも、プログレスバーをプログレス「ライン」としてロケーションバー直下に置くのは、ステータスバーをなくすアイデアと強く結びつく。

やはり、モックアップを最初のスケッチと比較する作業が不可欠だ。両者で変わっていない部分は、Mozillaのデザイナーたちが維持したいと考えているからそのままになっていると判断するのが自然だろう。ロケーションバーと検索バーの統合、そしてステータスバーの削除の二つは、その筆頭候補である。

ただ、Firefox 4.0は、どんなに早くとも2010年末にならないと登場しない。検討の時間はたっぷりあるので、方向性を決めつつあるFirefox 3.7のデザインとは違い、今後まったく別物に生まれ変わる可能性も残っている。

*1:Firefox 3.7のモックアップにもステータスバーが見当たらないものの、3.7でそこまで踏み込むかは疑問だ。