Mozilla Flux

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KompoZer 0.8 Alpha 2が早くも登場

リニューアルされるKompoZer』の続報である。Alpha 1のリリースからわずか一ヶ月半で、Alpha 2がリリースされた。今回はWindows版、Mac OS X版、Linux版が最初からそろっている。Alpha 1では、Mac OS版はLinux版から数週間遅れて出てきたのだが、そのタイムラグがなくなったわけだ。

Alpha 2に新機能の追加はなく、バグ修正がメイン。また、MozillaZine.jpフォーラムにこの件のスレッドも立った。なので、本来ならMozilla短信で扱うレベルの情報である。しかし、もじら組のamigomr氏が「前途多難に見える」と悲観的に取り上げているので、見過ごせなくなった。

まずは修正事項から見ていこう。Alpha 1に対して寄せられたバグ報告の50%程度をAlpha 2で解決した。修正された主なバグは次のとおり。

  • 切り取り/コピーが壊れている
  • CSSエディタでツールバーのアイコンが消失するバグその他
  • フォント設定ウィンドウで「getIntPref」エラー
  • メニュー項目の「View > HTML source」が働かない

こうしたバグ修正の甲斐もあって、KompoZer 0.8 Alpha 2はNvu 1.0やKompoZer 0.7よりも安定性が高まったという。次のターゲットはサイトマネージャの改良で、今はローカルファイルしか扱えなくなってしまっているが、リモートのファイルも適切に処理できるようにする。そのほか、”DOM sidebar”のバグ修正やCSSエディタをCSSツリーにリンクすることなども計画されている。

Alpha 1では、単純にソース全体を表示するモードを撤去したのだが、ユーザーからは不満の声が強い。とはいえ、Nvuのカスタマイズされたコードを流用すると動作が重くなりすぎるばかりか、バグも多いので、実装は後回しにならざるを得ない。ただ、改訂作業を行っているFabien Cazenave氏は、コメント欄などで、Alpha 3ではSeaMonkey Composerのコードを組み込むことで暫定的に対応すると述べている。なお、この場合構文のハイライト表示はされない。

全体的に見れば、KompoZer 0.8の開発は着実に進んでいるとみるべきだろう。SeaMonkey/Thunderbird開発者のRobert Kaiser氏は、この開発成果がSeaMonkey Composerだけでなく、Thunderbirdにも利益をもたらすだろうと述べている。Thunderbird 3でさえ、メール編集のコンポーネントはMozilla Composerの古いコードを引きずっているばかりか、管理者も事実上いない状況だ。KompoZer 0.8あるいは0.9がGecko 1.9.1に対応するようになれば、Thunderbird 3とレンダリングエンジンが共通になるので、移植もしやすくなることだろう。Thunderbird 3.xでKompoZerのコードが取り込まれることも充分ありうる話だ。

Cazenave氏は、さらに、『Future of KompoZer』の中でKompoZer 0.9に関する将来像に言及している。それによると、KompoZerをOpenKomodoをベースにビルドすることを考えているらしい。より詳しくいえば、プログラムのソースコード編集とデバッグに特化したScintillaというコンポーネントがまずあって、これをMozillaアプリケーションに対応させたSciMozというコンポーネントがある。OpenKomodoがSciMozを利用しているので、そのコードをKompoZerでも使うという流れだ。

先進的だが動くコードがなかなか更新されないBlueGriffonと比べて、KompoZer 0.8は「早めにリリース、しょっちゅうリリース」というオープンソース開発の鉄則を守り、漠然とではあるが将来像も見えている。道のりが険しいことは確かだが、そう将来を悲観したものでもないだろう。

(09/04/14追記)
Re: KompoZer 0.8 Alpha 2が早くも登場』というリアクションが返ってきた。

手短に感想を書いておこう。まず、KompoZer 0.8というかなり小規模のプロジェクトに対して、ナイトリーできっちり固めてからAlphaにしろと要求するのは酷な気がする。それから、注目を集めたいならKompoZerのオフィシャルサイトで大々的に発表すればいいが、そうせずにCazenave氏の個人サイトで公開している事実は、もっと考慮されていい。

次に、主観的にHTMLの手打ちを最高と思うかはともかく、客観的にWYSIWYGのHTMLエディターに需要がないと言えるのか。みんながみんなブログを使っているわけでもないだろう。「ごくごく一部のユーザのニーズ」と断言する根拠は? 国内/非市販/開発継続中のものに限定しても、Crescent Eveez-HTMLあたりは有名なはず。ニーズが乏しければ開発は打ち切られていそうなものだ。ちなみに、当ブログではどの検索語でページにヒットしたか統計が出るのだが、3月に「KompoZer」を含む語句で175件のヒットがあった。KompoZerの存在もまだ忘れられてはいない。

あと、SeaMonkey Composerはブラウザスイートを使う人向け。KompoZerのような単独のソフトにも需要があることは言うまでもない。加えて、ソフトウェアの将来像は、漠然とでも見えていれば開発の方向性に迷わずに済むのだから、「見えている/見えていない」の二分法で割り切らねばならないものではない。