Mozilla Flux

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コードネーム:Taskfox

Taskfoxは、Ubiquityの一部をFirefox.next(3.5の次のバージョン)に統合するプロジェクトのコードネームである。その目的は、ユーザーが今のところ多くのステップを経なければならない、情報の取得やタスクの実行を、簡単な命令(コマンド)を打ち込むだけでこなせるようにすることにある。

"Ubiquity & Firefox - Introducing Taskfox"によれば、Taskfoxには三つの原則があるという。それは、次のようなものだ。

  • Taskfoxはユーザーによるタスクの達成を手助けせねばならない
  • TaskfoxはすべてのFirefoxユーザーにとって有用なものでなければならない
  • Taskfoxは速く、安全で、拡張可能でなければならない

タスクの達成という点では、ユーザーがこれまで行ってきた操作の流れを邪魔しないことが重要だ。Firefoxでユーザーがコマンドを打ち込むのに適した場所は、すでに文字を打ち込むことに慣れている場所ということで、ロケーションバーに統合することにした。Ubiquityのように専用画面を起動する必要はない。

すべてのユーザーに有用という点では、いかにローカライズするかが重要だ。Firefox 3.5は70ロケール(言語)以上に対応する予定であり、Firefox.nextではさらに増えるだろう。しかし、すべてのロケールは「一級市民」として扱われ、どの国・地域のユーザーもTaskfoxを利用できる。また、検索エンジンと同様にロケールごとのコンテンツプロバイダが設定される。ただ、自然言語によるタスクの処理までは目標に含まれない。

スピードの点では、パフォーマンスを一切低下させないことを目指す。また、拡張性の点だが、Ubiquityのような形で新しいコマンドを追加すると、セキュリティの問題を生じるので、これは採用しない。他方で、アドオンを利用した拡張は認める。そのためのAPIも提供される予定である。Mozilla Add-onsのチェックを通すので、セキュリティや品質を確保できると考えられるためだ。

具体的に、どのような形で統合されるのか。FirefoxのUIデザイナーであるAlex Faaborg氏が、初期のモックアップを公開しているので、それを見てみることにしよう(元の図は巨大なため筆者で分割した)。

まず、大づかみなデザインから。ポイントは、ロケーションバーの右端にドロップダウンメニューが出現するところだ。ユーザーがコマンドを入力することももちろん可能なのだが、あらゆるユーザーにこの機能を使ってもらおうと思えば、ユーザーにコマンドを覚えることを強制するのは無理がありすぎる。そこで、コマンドを絞ったうえ、すべてをドロップダウンメニューから呼び出せるようにする。なお、現在右端に出る「→」のアイコンは、「Go」コマンドに置き換わる。

コマンドを打ち込むか、あるいはメニューから選択した場合、ロケーションバーの左端にコマンド名を示すアイコンが現れる。同時に、何を入力すればいいのかを示す短い文が薄く表示される。アイコンはコマンドに応じて色分けされ、色自体はファビコンに合わせる。

コマンドはバックスペースキーを押せば削除することができ、削除後は通常のロケーションバーに復帰する。問題は、たとえば"Twitter"という単語を検索する場合で、このモックアップの仕様だと、単語を打ち込んだ時点でコマンドとして解釈されてしまう。こうした目的語とコマンドのバッティングは他でも起きるため、今後調整方法を探ることになるだろう。

「Go」と「Google」の二つはやや特殊なコマンドだ。ユーザーが「http://」のようにURLを入力するときは、自動的に「Go」が出現する。また、ユーザーが単語を入力してリターンキーを押したときは、「Google」コマンドを実行したものとして扱う。ただ、単語検索後の状況を判断して、次の機会に訂正候補を提案する機能も備える。

ユーザーがコマンドを設定した後、目的語を入力する場面では、通常なら自動補完候補が表示される画面にプレビューが表示される。Amazonであれば商品の候補、地図であれば結果画面の一部だ。

次に、モックアップによれば、初期設定で登録されているコマンドは八つ。「Google」「Map」「Twitter」「Wikipedia」「Calendar」「Ebay」「Amazon」「Skype」がそれである。とはいえ、これらは代表的なサービスを挙げたものなので、ユーザーの設定によって変更が可能だ。たとえば、「Google」はデフォルトの検索エンジンを代表するコマンドなので、デフォルトをYahooに変えればコマンド名も変更される。「Map」なども同様である。

では、サービスの種類はこれらに限られるのだろうか。想定利用例を見ると、そうではないようだ。メールソフトの呼び出し、チケットの予約、天候のチェック、特定の曲や映画タイトルの検索といったケースが書かれており、そのすべてではないにせよ、いくつかは採用されるだろう。とはいえ、増やしすぎるのも考え物だ。アドオンでコマンドを追加できるのだから、適切な切り分けが求められよう。

なお、モックアップにはUbiquityと同様にコマンドライン型の入力画面を使う場合や、検索バーと統合する場合もいちおう含まれているが、ここでは割愛する。コマンドライン型は、専用画面の呼び出しが要るうえ、ユーザーがコマンドを記憶していないと使いづらい。検索バーのほうは、「あらゆるサービスからの検索」ということで少しは統合の可能性があるけれども、内容的にはロケーションバーと同じパターンになるだろう。ただし、幅の狭さをどう扱うかという余計な問題を抱えることになる。

FirefoxとUbiquityの統合については、当ブログでずっと追いかけてきたが、Faaborg氏のモックアップはさすがに洗練されていると感じる。ふつうのユーザーがそのまま使っても違和感のないデザインにかなり近づいた。これまではUbiquity開発者であるAza Raskin氏がデザインを考えていたため、Ubiquityの機能をできるだけ多くFirefoxに組み込もうとして、やや無理が出ていた。そういったしがらみがなく、かつブラウザをデザインするプロでもあるFaaborg氏が本格的に加わったことで、力業でUbiquityをFirefoxに押し込むのではなく、FirefoxがどこまでUbiquityを自然に取り込めるかを追求できるようになったのではないだろうか。次のモックアップがとても楽しみになってきた。