Mozilla Flux

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Fennec 1.0 Beta 1がリリース

Nokia N810版Firefox Mobile(Fennec Maemo)のBeta 1が、ついにリリースされた。Milestone 12に相当するバージョンだ。

リリースノートによると、多数の点が変更されている。スピード面では、Firefox 3.5と同様にTraceMonkeyがサポートされ、JavaScriptの処理が大幅に高速化した。それだけでなく、起動時間、パンやズームの処理など、全般的に速くなっている。また、Firefox 3のスマートロケーションバーを取り入れ、ブックマークをサポートし、アドオンマネージャやダウンロードマネージャが統合され、プラグインも扱えるようになるなど、フルブラウザにかなり近づいた。

FennecにはPC版(Windows、Mac OS X、Linux)も用意されているため、N810というインターネット端末を所持していなくても試用が可能である。アドオン開発者にとってはもちろん、一般ユーザーにとっても、ユーザーインターフェイスなどを確かめることができるのでうれしい。

では、実際にWindows版を使ってみよう。

まず、起動してみると、新しいスタートアップ画面が表示される。シンプルでわかりやすいものを目指したようで、"Fennec Beta 1 - Need for Speed"によれば、起動時間の短縮にも寄与したそうだ。

画面を左下にずらすと、メニューが出てくる。右上にはブックマークを呼び出すボタンがあり、その下のスターアイコンはブックマークの登録用だ。戻るボタンを大きくしているところと合わせて、Firefox 3と共通している。

ロケーションバーをクリックすると、履歴に基づいて、いくつかの候補が表示される。ユーザーが文字を入力すると、絞り込みが行われる。画面最下段の検索サイトをクリックすると、ロケーションバーに打ち込んだ文字を検索してくれる。

ページを表示させてみると、日本語も文字化けしない。マウスホイールを回したところ、ページのスクロールではなく、拡大表示になった。スクロールはペンでページをずらすのが基本らしく、マウスの場合もドラッグ&スクロールで操作することになる。

プラグイン対応が今回の目玉の一つで、紹介用のビデオでは、YouTubeのビデオがちゃんと再生されている。だが、手元の環境だと音は出るのだが、動画が表示されない。環境の問題かもしれないが、原因は不明だ。ただ、音が出ている以上、プラグインを認識していることは確かである。

セキュリティ面でも抜かりはなく、EV SSLにまで対応している。パスワードマネージャもあり、Gecko 1.9.2a1preをベースにしていることから、パスワードは暗号化されたうえでデータベースのレコードとして保存されるので、安全性が高い。

画面を右にずらすと、タブ画面となり、「+」に似たアイコンをクリックすると新規タブを開く。タブの切り替えや削除もワンタッチだ。もう一つのボタンはWeaveのものなのだが、クリックしても何も表示されない。Nokia版ならうまく動くのかもしれないが、メニューがないのでお手上げだった。

アドオンマネージャは、Firefox 3そのもの。やはりここでもWeaveのオプションをクリックできない。他のアドオンについてだが、"Fennec 1.0 Beta 1"によれば、ペンジェスチャを提供するものもあるようだ。

設定画面は最小限のシンプルなもの。Enable JavaScript tracingは、TraceMonkeyのオン/オフを切り替える項目だ。ちなみに、手元の環境でテストしてみたところ、SunSpiderベンチマークを余裕で完走する。「2772.8ms +/- 6.5%」という結果は、Firefox 3.1 Beta 3と互角であり、マシンパワーさえあればPC並にJavaScriptを処理できることがわかる。

ブックマークは、フォルダを使った管理もでき、UIもよく練られている。タグを付けることも可能で、スマートロケーションバーからタグによる絞り込みが効くので便利だ。

次に、技術的な点も少し触れておこう。まず、Windows版を前提にすると、fennec.exeのサイズは124KBで、その背後に20MBのxulrunner(ランタイムパッケージ)が控えている。これは、Geckoレンダリングエンジンをベースにしている以上当然の構造ともいえるが、最新のGeckoをベースにしている点に違いがある。現在、xulrunnerの最新版は1.9.0.7、要はFirefox 3.0.7相当で、Firefox 3.5とは別系列だ。Fennecは、Gecko 1.9.1ベースになる予定であり、最先端のxulrunnerアプリケーションという側面ももっていることになる。

また、前記"Need for Speed"には、スピードアップが図られた点が列挙されている。描画エンジンは、冗長な描画を省くようにした。ページのロードやズームの際も、必要最小限の描画だけを行うようにし、数倍も高速化した。DOMクエリーも減らしたという。

そして、"Fennec 1.0 Beta 1 - New and Notable"は、次のマイルストーンで改善される点に言及している。drawWindow命令のパフォーマンスを引き上げ、呼び出す回数を減らす。XPConnect(JavaScriptとC++の橋渡し)のオーバーヘッドを改善する。Placesデータベースに関しては、起動時や初期化処理の際に呼び出しを減らす。こういった改良が加えられつつあり、現に成果が出ているそうだ。

実際に触れてみて、パフォーマンスの高さを感じることができた。実動作環境では多少違った印象になるとしても、携帯機器でフルブラウザを使える魅力はまったく衰えない。「モバイルを、統一され、オープンで革新的なWebに統合する」ことは、Mozillaの中期的な目標の一つだ。つまりMozillaが本気で取り組んでいることを意味し、素晴らしい結果が出つつある。Firefox本体にフィードバックされるべき点も多いのではないだろうか。

(09/03/20追記)『Fennec Beta 1とWeaveの連携』も参照。