Mozilla Flux

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リニューアルされるKompoZer

KompoZerとは?

先週、KompoZerの新バージョン、0.8 Alpha 1がリリースされた。当初はLinux版のみだったが、現在ではWindows版も公開されている
(09/03/12追記)Mac OS X版もリリースされた

KompoZerは、WYSIWYG型のHTMLエディタである。つまり、HTMLのタグを挿入していくのではなく、Webブラウザに表示される内容とほぼ同じ画面でWebページの編集作業を行える。そのルーツは、Mozilla Application Suite(現在はコミュニティベースのSeaMonkeyに移行)に含まれていたMozilla Composerに遡る。Mozilla Application Suiteのブラウザ部分がFirefoxに、メーラ部分がThunderbirdに受け継がれたように、HTMLエディタ部分のMozilla Composerは、Nvuに受け継がれた。

Nvuは、(旧)Macromedia Dreamweaverなどの市販ソフトに対抗可能なオープンソースのソフトとして開発が進められ、2005年にはバージョン1.0がリリースされたものの、2006年に開発とメンテナンスが中止されてしまった。KompoZerは、Nvuの非公式なバグ修正版リリースと位置づけられている。最新の安定版はバージョン0.7.10だが、リリースされたのは2007年8月30日とずいぶん前になる。

KompoZerとBlueGriffon

リニューアルされたKompoZerは何が新しいのか。最大のポイントは、レンダリングエンジンのバージョンアップにある。KompoZerは、Gecko 1.8.1がベースだ。Firefox 2.0系列に搭載されていたエンジンである。これに対し、KompoZer 0.7.10は、Gecko 1.7というFirefox 1.0系列に搭載されていたエンジンをベースにしていた。しかも、Nvu向けにカスタマイズされたもので、15,000行以上の修正が加えられていたという。

現在開発中のGecko 1.9.1(Firefox 3.1に搭載)を使えなかったのは、そのような形でエンジンが強固にカスタマイズされていたためだ。改訂作業を行っているFabien Cazenave氏によれば、まずはGecko 1.8.1に対応させ、大量のXPFE(XPToolkitから作られるフロントエンド)を取り除いてから、1.9.1にアップグレードする計画だそうだ。

実は、Nvu開発者のDaniel Glazman氏も、新しいWebオーサリングツールの開発を進めている。BlueGriffonと呼ばれるソフトがそれで、最初のマイルストーンが2008年10月2日にリリースされた。2009年1月14日にリリースされた最新の開発版では、Gecko 1.9.2a1preという開発版のレンダリングエンジンを採用している。また、KompoZer 0.8 Alpha 1がVisual Studio .NET 2002で開発されているのに対し、BlueGriffonはVisual Studio 2008で開発されているものとみられる。

データだけだと、最新型のBlueGriffonに対する旧型のKompoZerという図式になってしまうが、実際にインストールして使ってみれば、そんな簡単な話ではないことがすぐにわかる。ゼロから作り直したBlueGriffonが到底実用レベルに達していないのに比べ、既存のソフトを改訂したKompoZerは、はるかに使い勝手がいいのだ。

Mozilla JapanのトップページをScrapBookで保存してからエクスポートし、HTMLファイルをKompoZer(上)とBlueGriffon(下)で表示させてみた。すると、BlueGriffonは配色がおかしい。また、ツールバーを見比べてもらえばわかるが、KompoZerのほうが断然機能が充実している。BlueGriffonのメニューバーはクリックしてもメニューが出てこないものも多く、明らかに作りかけだ。


0.8 Alpha 1の新機能

KompoZer 0.8 Alpha 1にはいくつかの新機能が盛り込まれているが、"HTML source dock"もその一つだ。残念ながらWindows版ではまだうまく動かないようだが、要するに、メイン画面内でクリックした部分がドックの中にソースコードとして反映され、ソースコードを編集するとメイン画面に反映される仕組みだ。単純にソース全体を表示するモードは撤去されたが、メイン画面にタグをビジュアル化するモードが用意されているので編集に困ることはないだろう。

また、"DOM sidebar"は、DOMツリーや、各要素に対応したスタイルシートを表示してくれる。ステータスバーも、より効率よく情報を表示できるよう手が加えられた。キーボードショートカットも見直されている。

なお、初期のAlpha版なので、当然ながらバグは多い。安定版から乗り換えるのはおすすめしない。Cazenave氏は、ユーザーからのフィードバックを受けて、できるだけ早い時期にAlpha 2をリリースしたいとしている。また、0.7系列用の言語パックは適用できないので、この点も注意が必要だ。

将来的には?

UIのバグを修正し、アドオンマネージャを機能させる。"Site Manager"を外部アプリケーションに対応させる。Firefoxの拡張機能として"KompoZer lite"を作る。といったあたりがCazenave氏の予定だ。また、Gecko 1.9.1に対応後は、その成果をSeaMonkey Composerに取り込む話も出ている。BlueGriffonといい意味で競い合い、洗練されていくことを期待したい。

(10/01/10追記)
「KompoZer」で検索してこのページへ来る人が多いようなので、関連記事へのリンクを置いておく。『KompoZer 0.8 Beta 1