Mozilla Flux

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Firefox 3.1の主な変更点を日本語で

Firefox 3.1の変更点に関する内容がまとまっていて、しかも日本語で読めるものとなると、ソースは自ずと限られる。今のところ、Mozilla Links日本語版に掲載されているFirefox 3.1 Beta 2のレビュー、『プライバシー、タブ、ウェブコンテンツが改修されたFirefox 3.1 Beta 2』がベストだ。元記事が要点をきれいにまとめていてわかりやすく、levelさんによる翻訳も堅実で読みやすいのがその理由である。

levelさんといえば、『Firefox 3.1で予定されている変更点』も項目をチェックするには便利だが、これで内容を把握するのは難しいだろう。やはり上記レビュー記事(以下、「元記事」)を読んだうえで、そこからリンクされているMozilla Links日本語版の別記事に順に目を通していくのが、一番効率のいい方法だと思う。

とはいえ、元記事一つですべてがカバーされているわけでもない。Firefoxの開発動向を追いかけている者の一人としては、多少物足りないところもある。そこで、元記事を補足する形で、Firefox 3.1の変更点を書いておきたい。以下は元記事をお読みいただいていることが前提なので、あしからず。

元記事の説明の補足

まず、タブの分離機能に関しては、『Firefox 3.1がタブの分離をサポート』という別記事が存在する。リンクが抜けているのは、原文にないからであって、翻訳者の責任ではない。その別記事には短い動画がついていて、分離したタブを新しいウィンドウに移す様子や、そのタブを元のウィンドウに戻す様子などを見ることができる。

このタブの分離機能は、まだ不完全だ。何かの拍子にタブの位置を少しでも動かすと、意図しない分離が起きてしまうという問題がある(Bug 465184Bug 465346:ともに英文)。Beta 3で修正される予定だが、修正のアプローチについて開発者の間で意見が食い違っているようで、応急処置を施すだけにとどめられるかもしれない。
(09/02/07追記)
タブの分離機能には、その後かなり手が入った。興味があれば『続報:Firefox 3.1のタブ機能が使いやすく修正』もご一読を。

タブ関連では、未訳の記事、『Firefox 3.1に向けて全面改修されたタブブラウジング』(英文)が本家Mozilla Linksにある。内容はほぼ元記事と重複するが、「最後のタブを閉じるとウィンドウも閉じる仕様に変更されたこと」と、「タブの移動や分離の際のアニメーションが新しくなっていること」は独自の情報だ。とくに前者の仕様変更は、開発者間で相当もめた末に入った修正なので、多くの一般ユーザーがFirefox 3.1を使うようになったときにどういうリアクションが起きるのか、注目されている。

スマートロケーションバーが自動補完候補を提供する際、ソースを絞る機能だが、Beta 3では、「ツール > オプション > プライバシー」で表示させた画面から設定が可能になることが確実だ。ただ、履歴やブックマークは指定できるが、タグは対象外のようだ。

プライベートブラウジングモードについては、未訳の本家記事『Firefoxのプライベートモードとご対面』(英文)が詳しい。そこでは、記録を残さないようにできる項目として、「[訪問]履歴、キャッシュ、ダウンロード履歴、セーブしたパスワード、検索[履歴]、クッキー」が挙げられている。また、プライベートモードを終了させると、直前のセッションが復元されるとしている。つまり、モードに入る前の状態に戻る。なお、ノーマルモードのウィンドウとプライベートモードのウィンドウを混在させることはできない。

元記事に「もはやスロッバーは冗長になり、デフォルトではツールバーから削除されました」とあるが、これは画面右上に表示される、ページロード中のアニメーションのことだ。昔はここにアニメーションが出て当たり前だったが、今やInternet Explorer 7でも廃止されているくらいなので、ほとんど違和感を感じないだろう。

MacBookのマルチタッチトラックパッドに関しては、『Mac OS Xのマルチタッチをサポートした実験的Firefox』という別記事が、カラーマネジメント機能に関しては、『Firefox 3.1でカラープロファイルが有効になる』という別記事がそれぞれ存在している。とくに後者の記事は秀逸なので、ぜひ。

Firefox 3.1ではGeolocation APIが実装されるが、実はフレームワークが整備されただけで、既定のデータプロバイダーが設定されていないため、そのままでは何もできない。開発の進行状況から見て、3.1ではプラグインでの対応がせいぜいだろう。将来的には、データプロバイダーが増え、GPS以外にも、IP、WiFi、携帯電話などを経由して位置情報をやりとりできるようになることが見込まれる。そうなれば、現在地に応じてGoogleの検索結果が変わるとか、スマートロケーションバーの自動補完候補やブックマークの内容が自動的に切り替わるといった処理も可能になるだろう(リンク先は英文)。

HTML 5で採用予定のvideo/audio要素をサポートした件では、『FirefoxにネイティブのOgg VorbisとTheoraサポートが追加された』という別記事があるので、そちらを参照。Vorbis形式とTheora形式のファイルであれば、プラグインがなくても再生できるようにしたものだ。そのため、たとえばFLV形式のファイルを再生する場合であればAdobe Flash Playerプラグインが提供している、動画や音声のコントロール機能を、Firefoxが自前で用意しなければならない。元記事が画像入りで説明しているのは、そのコントロール機能の実装が進んでいますよ、という話である。

(09/01/17追記)
Googleのファビコンが1月9日に変更されたが、「新秀の介の日記」で既報のとおり、Googleからの要請によりFirefoxの検索アイコンは維持される

(09/02/28追記)
「新秀の介の日記」で報じられているように、Googleから「やっぱりファビコンを変えてくれ」という話が出て、検索バーに新ファビコンが入ることになった

元記事の内容の補足

別記事『Firefox 3.1 Alpha 2レビュー』には出ているのに、元記事では省略されてしまった要素がいくつかある。たとえば、「インタフェースの一貫性を高めるために、ブックマークと履歴サイドバー、アドオンの入手、ダウンロードマネージャ、パスワードマネージャなど検索が必要なあらゆる場所で新しい検索ウィジェットが利用できるようになりました」。つまり、あちこちに検索窓が付けられたので、検索がしやすくなっている。

また、「CSS 2.1セレクタの::beforeと::after、CSS3プロパティの-moz-border-image(まだ最終仕様ではないためにベンダープリフィックス付き)、word-wrap: break-word、text-shadow、box-shadow、column-ruleのすべてが利用できるようになりました」。これは、スタイルシートのサポートが強化されたことを意味する。とくに影つき文字を表示するtext-shadowは、CSS2(1998年5月12日W3C勧告)のころから存在していたプロパティで、サポートされるまでに10年以上かかったことになる。

Gmailへの対応については、別記事『GmailをFirefoxのメールクライアントにする』を参照。その記事はFirefox 3を対象としているので、いろいろ事前準備が必要とされているが、3.1ではそれが不要になり、しかもセキュアな接続を使用するようになっている。

あと、ヘルプメニューには、「マルウェアを提供すると誤って識別されるWebサイト」を報告するメニューが加わっている。

なお、Beta 2リリース後の記事として、『Firefox 3.1でメニューポップアップ時のサウンド』がある。アクセシビリティの観点から修正が評価されて記事になったのだが、修正担当者がMozilla Japanの中野雅之氏であることはもっと知られていい。

(09/04/05追記)
「最近の履歴を消去」の初期設定については、『落ち穂拾い #4』参照。プライバシー情報の消去がオプションダイアログから外された理由については、開発総責任者の弁によれば、設定と管理の分離という思想があるのだとか。オプションダイアログは、Firefoxが保持するデータの設定だけを扱い、そのデータを消去あるいは監視する処理とは分けるという意味だ。だから「最近の履歴を消去」はツールメニューから呼び出す仕様になっているわけだ。

元記事に追加すべきトピック

Firefox 3.1の変更点であるにもかかわらず、本家Mozilla Linksでもカバーされていないトピックがあるので、この場で簡単に紹介しておく。

まず、「このサイトの履歴を消去」(Forget About This Site[リンク先は英文])という機能。履歴のメニューから「すべての履歴を表示」させ、履歴一覧で特定の項目を右クリックしてコンテクストメニューを出すと、このタイトルが見つかるだろう。そのページが含まれるWebサイトの履歴を、ドメイン単位でまとめて消してくれるので便利だ。

もう一つ、新しいSSLエラーページ(リンク先は英文)が採用されていることも見逃せない。Mozillaで「セキュリティ・ユーザーインターフェイス・デザイナー」という肩書きをもつJohnathan Nightingale氏の解説によれば、変更のポイントは4点あるという(リンク先は英文)。

  1. エラーコードではなくふつうの言葉で問題点を伝える。
  2. サイトではなく接続の信頼性の問題である点を強調する。
  3. ユーザーにどのような選択肢があるのかはっきりさせる。
  4. 「例外を追加」を選択した場合、自動的に証明書を取得する。

百聞は一見にしかず。日本語版の比較画像を用意した。上が旧エラーページ、下が新エラーページだ。これでだいたいの感じがつかめるはず。

(09/02/07追記)
さらにもう一つ。ロケーションバーの一番右端にある、ドロップダウンメニューを表示させる▼のボタン。これをクリックすると履歴が12個現れるが、Firefox 3.1では、ユーザーがタイプした履歴だけを表示することにした。本当によく利用するページがすぐに見つけられるようにとの配慮だ。

その後の動向

(09/05/09追記)Mozilla Links日本語版『Firefox 3.5 Beta 4 リリース』参照。