Mozilla Flux

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Firefoxのバージョン

クリスマスころからFirefoxの開発ペースがスローダウンしてるので、新しい情報があまり入ってこない。そこで、今日はFirefoxのバージョンについて、基本的なことを話しておこう。

まずは正式版。現時点で、3.0.5と2.0.0.20の二つがあるが、2.0.0.x系列はサポートが終了しているので、これ以上のバージョンアップはない。そればかりか、2.0.0.20はフィッシング対策機能がオフになっている。提供元のGoogleがサポートを終了したためだ。Mozillaはユーザーに3.0.5へのバージョンアップを推奨している。なお、2.0.0.20のユーザーには米国時間で1月12日に移行を促す通知が配信される予定。

今後バージョンアップするのは、3.0.x系列だけ。このバージョンアップは、「セキュリティと安定性のためのリリース」と呼ばれ、原則として新機能は追加されない。セキュリティホールを塞いだり、クラッシュの原因となるバグを潰したりすることに主眼がある。

これに対し、開発版では、いろいろ新機能が追加され、あるいは既存機能の向上がはかられる。次のメジャーバージョンアップでFirefoxがどうなるかを知るためには、この開発版に触れるのが一番だ。

開発版の中にも種類がある。比較的目にしやすいのは、α版とかβ版と呼ばれる、開発の区切りとなるバージョンだろう。Mozillaでは「マイルストーン」という呼び方をする。現時点では、Firefox 3.1 Beta 2が最新のマイルストーンだ。日本語版も用意されているので、プロファイルを分けて使えるスキルがあれば、気軽に試すことができる。

こうしたα版やβ版は、Mozillaが内部でテストを経てから公開している。開発元のMozilla Corporationには品質管理部門に20人以上のスタッフがいるが、担当スタッフが役割を分担し、マイルストーンが進むごとにより厳しいテストを実施するようになっている。α版であっても致命的なバグはないようにチェックされているため、インストールしたせいでパソコンの調子が悪くなるといった重大な問題は起きないはずだ。

だが、日々の開発を進めるためには、こうした厳重なチェックはむしろ邪魔になる。だからFirefoxやそのアドオンの開発者たちは、開発の成果がよりダイレクトに反映される開発版を利用している。α版やβ版は、開発者に近いところにいるユーザーに使ってもらうことでフィードバックを集める役割も大きいが、日々公開される開発版は、どちらかといえば、開発の成果を実際に動くプログラムの中で確認するものと考えたほうがわかりやすい。

この日々の開発版のことを、Nightly Buildsと呼ぶ。大雑把にいえば、毎晩更新されるFirefoxだ。現在2種類あり、それぞれコードネームが付けられていて、MinefieldとShiretokoという。

Firefoxの開発プロセスは木の成長に喩えられている。Trunk(幹)の開発が進んだところでBranch(枝)ができ、このBranchから正式版がリリースされる仕組みだ。Minefield(地雷原)がTrunkで、Shiretoko(知床国立公園から名付けられた)がBranchに当たる。

Shiretokoは、もともとFirefox 3.1自体の開発コードネームなのだが、現時点のバージョンとしては3.1b3preに相当する。Beta 3の前段階という意味だ。最新版は常に英語版(en-US版)なので、英語がうっとうしいという人には向かないけれど、性能的には3.1 Beta 2よりも優れているし、安定性でも上回る。なぜかといえば、3.1をリリースするうえで障害となるような重大なバグ(Blocker)に対する修正か、開発総責任者が承認した修正しか追加されていないからだ。言い換えれば、性能や安定性が向上する修正しか加えられていないのだ。しかも、それらの修正はいったんTrunkに入り、問題なしと判断されてからShiretoko向けに追加される。

開発陣のアナウンスでは、Firefox 3.1 Beta 2は仕様が固まったマイルストーンとなっている。なので、これをリリースする少し前にTrunk(mozilla-central)からBranch(mozilla-1.9.1)を切り出し、BranchをベースにFirefox 3.1 Beta 2を提供した。アドオン開発者には3.1 Beta 2をもとに既存のアドオンの対応を進めてもらい、Shiretokoで状況に変化がないか確認してもらいたいということらしい。現時点で、主要なアドオン(全体でアドオン利用率の95%を占めるもの)の50%が3.1 Beta 2に対応しており、移行は比較的順調のようだ。

もう一方のMinefieldは、最新の修正が投入(チェックイン)される本当の意味の開発版である。一日のうちに複数回更新されるHourly Buildsというものが作成されるのだが、この作成時に自動化されたテストが実行され、エラーが出たらチェックインは撤回(バックアウト)される。すると一見致命的なエラーは除かれていそうだが、そううまくはいかない。できあがったNightly Buildを動かしてみたところ、すぐにクラッシュするとか、特定の機能が使用不能になっているといった症状が出ることもまれではない。だから地雷原と呼ばれるわけだ。

それでも、Firefoxの最先端の機能を試してみたいなら、この地雷原をおっかなびっくり歩くほかない。現時点のバージョンは3.2a1pre。Firefox 3.1の次のバージョンは仮に3.2ということになっていて、そのα1、つまり最初のマイルストーンの前段階にあたる。この3.2a1preには、たとえば、完成度が不十分として3.1から除外された、タブプレビューパネルが搭載されている。

思いの外長くなったが、説明は以上だ。こうした知識を頭に入れてFirefox関係のニュースを見ると、より楽しめると思う。