Mozilla Flux

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AustralisがFirefox Nightlyに投入間近 Firefox 29でUIを刷新(追記あり)

Firefoxのユーザーインターフェイス(UI)を変更するAustralisプロジェクトが、節目を迎えようとしている。米国時間の2013年11月18日、mozilla-centralリポジトリにコードがマージされ、Firefox 28 Nightlyに反映されるとみられる("Australis landing soon")。Firefoxメニューが廃止され、新たにパネルベースのメニューが提供されるなど、見た目や使い勝手の違いはかなり大きい。これほどの変化は、Firefox 4以来だろう。

しかも、CNET Japan"「Firefox」ブラウザの新デザイン「Australis」--後戻りできない大改定"で紹介されているとおり、Australisによる変更箇所は膨大であるため、ユーザーが設定でオフにすることはできない。代わりにHollyと呼ばれる予備のブランチを設け、mozilla-centralからAustralis関連のコードを差し引いたリポジトリを維持する。Australisの統合をいったん撤回(バックアウト)することになった場合、予備のリポジトリが速やかにメインに切り替わり、正式版のリリースに支障がないようにするわけだ。この手法は、既に2011年の段階で確立されており、混乱が生じる可能性は低いだろう。

問題がないと判断された場合も、Mozillaは慎重を期してAuroraチャンネルへの投入は1回見送る予定だ。つまり、Firefox 28 AuroraにAustralisは含まれず、次のバージョンから含まれるようになる。そのため、正式版としてユーザーの手に届くのも、2014年4月15日リリース予定のFirefox 29からだ。

Mozillaが懸念しているのは、パフォーマンスの低下である。この問題に取り組んできたため、Australisの投入は半年ほど遅れてしまった。当初の予定ではFirefox 25で導入されるはずだったのだ。バックアウトが起きるとすれば、新たにこの問題が発見されたときだろう。

他方、ユーザーにとっては、アドオンバー(とステータスバー)が削除されたことが大きい。アドオンバー上のウィジェットは、ナビゲーションツールバーに移動する。Add-on SDKベースのアドオンであれば問題は起きないとされるが、XULベースのアドオンはまだまだ多い。動作に支障が出るものもあるだろう。

ちなみに、開発者向けに変更点をまとめた文書(英文ドラフト)がMDNで公開されている

新しいデザインに対しては、Chromeに似ているとの意見も多いようだが、コンテンツ領域を広くとったシンプルかつ合理的なデザインを目指した結果、重なるところが多かったというだけで、積極的にまねたわけではない。カスタマイズ機能も健在であり、気に入らなければアドオンやテーマと組み合わせて好みに合うように調整することも可能だ。

Firefoxにはサイレントアップデート機能が実装されているため、Firefox 29のリリース以降、Australisは急速に普及していくことが予想される。次のESRもAustralisベースになるはずだ。Nightlyを試さないまでも、Get AustralisのWebサイトで様子を見ておくのもいいかもしれない。

(13/11/20追記)
予定どおりAustralisがFirefox 28 Nightlyに投入された。Windows 7上でどのように変わったのか、簡単に紹介しておきたい。

まずは、新規プロファイルで起動してみる。ロケーションバーと検索バーがこれまでどおり分離されたままになっていることもあり、それほど違った印象は受けない。

複数のタブを開いて、メニューも表示させてみよう。表示中のタブとそうでないタブとのコントラストが強まっているが、正直なところ少し見づらい。メニューは、パネルにアイコンが大きく表示され、表示サイズを調整するボタンも付いている。

履歴を表示させる際、パネル内部でメニューがスライドする。面白いのだが、パネルの大きさが変わらないため、タイトルが途中で切れてしまうし、元のメニューに戻す操作も戸惑う人が出てきそうだ。

カスタマイズ画面。Firefox 25と比較すると、「Web開発」や「文字エンコーディング」はユーザーが明示的にメニューに追加する必要がある。アドオンのウィジェットを簡単にメニューに追加できるのはうれしい。ただ、短時間触ってみた限りでは、ブックマークツールバーの表示方法がわからなかった。

動作は全体的にスムーズだ。アドオンバーが削除された影響について、ツールバーに移行してくれなかったウィジェットもいくつかあった。カスタマイズ画面で改めて追加すればよいのだが、最初はビックリするユーザーも少なくないだろう。

フィードバックを受けて改良を進めていってほしい。

(13/11/24追記)
ブックマークツールバーを表示させる方法が見つかった。ブックマークボタンを押して一覧を出し、「ブックマークツールバー」の項目のサブメニューを表示させると、「ブックマークツールバーを表示」という項目がある。従来は一覧を出した時点でこの項目が出てきたことを思えば、ややわかりづらい。それに、従来はFirefoxメニュー内だと「オプション」のところに同じ機能をもつ項目があったのだから、カスタマイズ機能からトグルが可能なようにしてほしかった。

しばらく使ってみたが、パフォーマンス面ではほとんど不満がない。ただ、ブックマークにフォーカスを当てたときの表示が少しモッサリしているような気もする。

そのほか、上の追記にも書いたように、フォアグラウンドタブとバックグラウンドタブのコントラストが大きいこともあり、バックグラウンドタブにフォーカスを当てた際、複数のタブのうちどれを指しているかの判別はしやすくなっている。

ちなみに、Mozillaは、Australisを実装したFirefoxのリリース版が登場するのに合わせて、初回起動時に表示されるページにチュートリアル的なものを組み込む予定だ。Firefox本体に吹き出しで説明が表示され、チュートリアルを進めるとその説明も変化するという、インタラクティブなものとなる。