Mozilla Flux

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Firefox 12・13でシステム要件の見直しへ

(2012/01/28追記)
mozilla.dev.apps.firefoxのスレッド『Firefox Support for Windows 2000 Coming to an End』において、Firefox 13から、Windows版に関し本文に記したとおりシステム要件の変更を行うと発表された。Firefox 12での変更は見送られた形だ。Mozillaの調べによると、この変更で影響を受けるユーザーは全体の0.4%だという。なお、Firefox 13 Nightlyは当初からMicrosoft Visual C++ 2010でビルドしたものが提供される予定である。

Firefox 12あるいは13でシステム要件が見直され、Windows版ではWindows XP Service Pack 2以降が対象になりそうだ。また、Mac版でもMac OS X v10.6(Snow Leopard)以降を対象とする方向で話が進んでいる。Firefox 9のシステム要件と比較すると、Windows 2000、XP無印、XP SP1そしてMac OS X v10.5(Leopard)が対象から外れることになる。

Windows版はFirefox 12からの見通し

先に要件が変更されるのはWindows版で、Firefox 12(2012年4月24日ころリリース予定)から実施される可能性が高い。実はこの話題、当ブログで2年半以上も前に『Firefox.nextのサポート対象はXP SP2以降となる見とおし』という記事として取り上げたことがある。その後、Firefox 4でも要件が維持される一方、XP SP2のサポート提供が終了した。ただ、今回の変更では、XP SP1以前ではFirefoxの起動すらできなくなる点に注意が必要だ。

Windows版のシステム要件が変わるのは、ビルド環境がMicrosoft Visual C++ 2010に移行するためである(Bug 563318)。Microsoft提供の文書によると、Visual C++ 2010 C/C++のランタイムはWindows XP SP2で導入されたAPIに依拠しているため、このランタイムを使用するプログラムはXP SP1以前のOSでは動作しない。

それでも、2011年12月下旬、MozillaでPlatform Engineering部門のDirectorを務めるJP Rosevear氏が、Firefox 12からビルド環境をVisual C++ 2010に移行してはどうかと提案しているところをみると、メリットのほうが大きいとの判断があるのだろう。そのメリットの1つはパフォーマンスアップである。他にも64bit環境にインストールすることで4GBの仮想メモリにアクセスできるようになるとか、従来のVisual C++ 2005に合わせた修正が不要になるといった消極的なメリットもある。

上記の提案の裏で、準備は着々と進行中だ。2011年11月下旬の時点で、既に基本的なテストは終えた。また、同年12月上旬には、アップデート機能を利用する際、OSのサービスパックのバージョンをチェックする仕組みがFirefox 9に投入された(Bug 668436)。あとはコンセンサスが形成されるのを待つばかりだ。

影響を受けるユーザーの数はさほど多くないとみられるが、該当する場合、ユーザー側の対策については悩ましい問題がある。Firefox 12でシステム要件の変更が実施されると、Firefox 11に対するアップデートが提供されなくなるわけだが、企業ユーザー向けの延長サポートリリース版(ESR版)を使用するにしても、現在のところ最初のESR版はFirefox 10がベースになる見込みだ。つまり、Firefox 11が登場した時点(2012年3月13日ころリリース予定)で、ESR版に切り替えるのか、それともいったんアップデートした後でダウングレードするのかを決めねばならない。検討の猶予はあまり残されていない。

Mac版はFirefox 13からの見通し

Mac版のシステム要件の見直しは、mozilla.dev.planning『Discussing Mac OS X 10.5 Support Plans』で議論されている。MozillaのJosh Aas氏は、Firefox 13(2012年6月5日ころリリース予定)でMac OS X v10.5(Leopard)をサポートから外すことを提案している。

その理由は、Mac OS Xユーザーのうち10.5ユーザーの占める割合が2011年11月8日現在24%で、毎月1〜2%ずつ減少していること、Appleが比較的迅速に新バージョンをリリースしている上、各バージョンで変更された部分も大きいのでサポートコストを抑える必要があること、10.5ユーザーは既にWebGLなどFirefoxの機能の一部を使えない状態にあること、そしてAppleが10.5のサポートを停止したことの4点だ。

Aas氏の提案に対しては当然反対意見も出ているが、説得力のある根拠が示されない限りこの提案が通ると思われる。かつて当ブログで『Firefox.nextはMac OS X 10.4もサポートから外す方針』という記事を書いた。Firefox 3.5の次のバージョンでMac OS X 10.4をサポートから外すという話題で、このときもAas氏の提案が発端になっていた。結局10.4をサポートしなくなったのはFirefox 4からであり、3.6ではなかったものの、高速リリースサイクルを採用して新機能をスピーディーに提供する方向にシフトしたMozillaは、どういう選択をするだろう。最新版のサポートコストは減らして、そこから生じる問題はESR版で解決しようとするのではないか。

影響を受けるユーザーの対策については、Windows版と同様の問題がある。ESR版との差がより開く分、Firefox 11がリリースされたときの判断はより難しいものとなろう。