Mozilla Flux

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日本語版Firefox 58では初期登録のフィードリーダーが3つに

以前の記事で紹介したように、日本語版Firefox 57において初期登録のフィードリーダーが大幅に変更された。具体的には、Live Dwango Reader(LDR)が削除された一方で、AOL Reader、Feedly、Feed WatcherおよびInoreaderが追加された(Bug 1383654)。

しかし、AOL Readerは2018年1月3日をもってサービスが終了する。これを受けて、同年1月23日(米国時間)にリリース予定のFirefox 58では、AOL Readerが初期登録から外される(Bug 1423585)。これで、残るフィードリーダーは次の3つに絞られた。

  • Feedly
  • Feed Watcher
  • Inoreader

ちなみに、Firefox本体に登録されたフィードリーダーを使用する際は、まずメニューパネルからカスタマイズ画面を開き、「購読」アイコンをツールバーに追加する。

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Firefox Quantumのカスタマイズ画面

Webサイトに登録可能なフィードがある場合は、この「購読」アイコンが有効になるのでクリックし、ドロップダウンメニューからライブブックマークの代わりに自分で使っているサービスを選択すればOKだ。

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フィードリーダーの選択画面

Firefox 58以降も続く高速化と応答性向上 2018年もパフォーマンス2倍が目標

2018年も飛躍的進歩へ

Firefox Quantumのリリースは大きな注目を集め、そのスピードの速さと軽快さは、多くのユーザーから驚きをもって迎えられている。一方、非難の声が一部にあるのも事実だ。いわく、Chromeと同程度の速度でChrome互換の拡張機能が使えるだけであれば、Firefoxを選ぶ理由がない、と。

だが、Firefoxが2017年に達成した高速化を、2018年も達成するとしたらどうだろう。Mozilla Corp.でSenior Vice President, Firefoxを務めるMark Mayo氏は、「今年(2017年)Firefoxのパフォーマンスは2倍になった。2018年も再び2倍にするのが暫定的な目標だ」と米CNETの取材に対し答えている。同社のFellowを務めるDavid Bryant氏(Emerging Technologiesグループの事実上のトップ)も、Firefox 57時点のFirefox Quantumは序章に過ぎないと述べている。

通常、この手の表現はマーケティング的に「盛っている」ものだが、こと2018年のFirefoxに限っては、あながち誇張とも言えない。これは以前の記事に書いたことの裏返しになるが、QuantumプロジェクトはFirefox 57時点で半ばしか達成しておらず、残りの成果物が2018年前半に投入されていくスケジュールになっているのだ。また、Quantumプロジェクト以外にも、Firefox Quantumのリリースに間に合わなかったもろもろの新機能があって、完成したものから順にFirefox 58以降で有効化されていく。さらに、Quantum Flowが実証したように、細かな修正も積み重なると大きなパフォーマンスアップにつながるわけだが、2017年中に作られた下地がそこで生きてくる。

投入予定の新機能について

Firefox 58

処理速度の向上に関しては、JavaScript Start-up Bytecode Cache(Bug 1405738)が大きいだろう。Webページ閲覧時に生成されたJavaScriptのバイトコードを、アイドル時にキャッシュしておき、再訪時に利用する機能だ。GoogleやFacebookのようにJavaScriptを多用するページでは、読み込み速度が15~20%も短縮される場合があるという。加えて、Windows版ではビルド環境がVisual Studio 2017 v15.4.1に変更されており(Bug 1408789)、コンパイルされたバイナリの性能が上がる

応答性の向上に関しては、Places Async Transactions(Bug 1404267)を挙げることができる。履歴とブックマークのデータベース(Places)におけるトランザクションが非同期化され、Firefox本体が行う他の処理が阻害されない。特にFirefox Syncを利用している場合に、効果を実感できるだろう。

また、Quantum DOMの成果となるBudget Throttling(Bug 1377766)も見逃せない。これまでもFirefoxにはバックグラウンドタブにおけるスクリプトの処理を抑制する技術が組み込まれてきたが、Budget Throttlingはその最新のものとなる。大まかな仕組みはこうだ。タブごとに処理時間の割当てが行われ、毎秒その処理時間が増加していく一方で、タスクが実行されるとその実行時間分だけ処理時間が減少する。割り当てられた時間がマイナスのときはタスクが実行されないので、バックグラウンドで繰り返し実行されるスクリプトは処理が抑えられる。ただし、音声を流す処理、リアルタイムコネクション絡みの処理(WebSocketsやWebRTC)とIndexedDBの処理はその例外となる。Budget Throttlingは、応答性の向上だけでなく、消費電力の低減にも効果があるとされる。

Firefox 59

Introduction to WebRender – Part 1 – Browsers today – Mozilla Gfx Team Blogで説明されているように、Geckoのグラフィックス・パイプラインは、DOMツリー → フレームツリー → ディスプレイリスト → レイヤーツリーの流れで処理されていき、compositorがレイヤーツリーを合成する。新機能のOff Main Thread Painting(OMTP)は、「ディスプレイリスト → レイヤーツリー」の処理であるPaintingをメインスレッドとは別のところで行い、Firefox本体の応答性を高める(Bug 1403957)。

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Geckoのグラフィックス・パイプライン

また、Retained Display ListsBug 1352499)は、ディスプレイリストと呼ばれる描画命令のリストを構築するにあたって、常にスクラッチから行うのではなく、基本的にリストを保持しつつ部分的にアップデートしていく。YouTubeやTwitterで描画がスムーズになるという。

Firefox 60以降

Quantumプロジェクトの掉尾を飾るのがQuantum Renderである。このサブプロジェクトでは、ServoのグラフィックスエンジンであるWebRenderをGeckoに移植する。最近のGPUは強力で、高精細なゲームをスムーズに処理できるのだから、Webページも同じように処理できるはず。この発想をベースに、Rust言語製のQuantum RenderはWebページを表示する際、ゲームエンジンのようにGPUを活用。Painting/Compositingの区別を取り払い、スクリーン全体を描画することで常時60fpsを実現するのである。

もっとも、従来とはアーキテクチャがあまりに異なっているし、GPUやグラフィックドライバーによる差異も吸収しなければならないので、開発には予想以上に時間がかかっている。今のところ機能の範囲を絞ってFirefox 60に投入されるのではないかとみられているが、Mozilla Corp.でDirector, Firefox Browsersを務めるJeff Griffiths氏は、Firefox Quantumの名称をFirefox 61/62まで使い続ける可能性を示唆しており、Quantum Renderの有効化が遅れる可能性もある。

また、同様にGPUを活用したRustベースのフォントラスタライザとしてPathfinderがあり、Firefoxに統合されることが決まっている。現時点でもSVGレンダリングを含め基本的な処理は行えるようになっているので、リリース時期はQuantum Renderとそう変わらないだろう。

技術的負債の除去

2017年のFirefoxは、使用可能なプラグインをAdobe Flashに限定し、Windows版の動作環境もWindows 7以降とした。Firefox Quantumでは旧式アドオンのサポートを打ち切った

これらの思い切った措置により、2018年のFirefoxは互換性の維持に煩わされることなく新機能を実装できるようになったし、古い環境を考えずにリファクタリングも行えるようになった。既にXBLはQuantum CSSやGeckoの処理を複雑化させるなど問題が多いとして段階的な削除が始まっている。こうした動きは2018年の間じゅう続くだろう。

シェアの拡大を目指して

Mozillaの目標は、デスクトップ版Firefoxのグローバルなシェアを2020年までに20%にすることだ。そのためにはChromeからシェアを奪う必要があるわけだが、Mozillaのマーケティング戦略としては、自己の価値観に沿って市場で積極的な選択を行う層(これを"Conscious Choosers"と呼んでいる)がネットユーザーの約23%を占めるので、その層を狙うということになっている。

だが、本当の意味でシェア拡大に寄与するのは、そうしたマーケティング上のあれやこれやではなくて、Firefoxの速さと軽さ、そしてそれがユーザーに受け入れられたときに生まれる「勢い」だ。もともとFirefoxはその方法で25%を超えるシェアを獲得した。逆に、痒いところに手が届くアドオンが豊富に使えることは、シェア低下の歯止めにはならなかった。Firefoxがかつてのシェアを取り戻そうとすれば、圧倒的な速さと軽さを実現し、維持するほかないし、旧式アドオンを支える仕組みはその足を引っ張っていたのだから、切り捨てる以外の選択肢はなかった。

WebExtensions移行プロジェクトの現場責任者であるAndy McKay氏は、プロジェクトの開始当初パニック状態にあり、落ち着いて取り組み始めてからも、Mozilla Corp.内でかなりの反対に遭ったと告白している。Mozillaが旧式アドオンを捨てることの重さをわかっていなかったはずはない。それでも、このタイミングでやらねばならなかったのである。決断の正しさは、2018年に明らかになるだろう。

Windows版Firefox Quantumではてなブックマーク拡張の日本語入力がおかしくなる問題の一時的な回避策

2017年10月18日にはてなブックマークFirefox拡張がバージョン3.0.0へとアップデートされ(最新バージョンは3.0.2)、Firefox Quantum以降に対応するようになった。ところが、Windows版Firefox Quantumで日本語入力がおかしくなる問題が発生している。

具体的には、ツールバー上のアイコンをクリックすると表示される、コメントの入力領域にIMEで入力する際、候補ウィンドウが常に画面の左上隅に出現する(Bug 1419285)。IMEの種類には関係がなく、Microsoft IMEはもちろん、ATOKやGoogle日本語入力でも現象は共通だ。候補を確定してしまえば文字列が入力領域に現れるとはいえ、拡張機能の使い勝手が損なわれることおびただしい。

実は、この問題はWebExtensionsベースの拡張機能が表示するパネルであれば、どこでも起きうるもの。はてなブックマーク拡張側の不具合ではない。Windows版Firefox 56においてWebExtensionsベースの拡張機能にはまとめて1つのプロセスを割り当てたのだが、この状態だとIME入力時にパネルにうまくフォーカスが当たらず、上記の現象が発生してしまうようなのだ。拡張機能の別プロセス化はマルチプロセス機能(e10s)の有効化が前提であり、e10sが全面有効化されてかつ拡張機能がWebExtensionsに限定されたFirefox Quantumで、問題が一挙に顕在化したというわけ。

現在Mozillaの開発者が対処にあたっており、Firefox 58では修正される見通しである。それまでは、拡張機能の別プロセス化を解除することで問題を一時的に回避できる。about:configの画面からextensions.webextensions.remoteの設定をfalseに変更すればOK。ただ、拡張機能の別プロセス化は、拡張機能がFirefox本体を巻き込んでクラッシュしたり、本体の応答性を低下させたりするリスクを減らすために導入されたものなので、上記の設定変更によってそうしたリスクが高まることに注意してほしい。

(17/12/29追記)
上記Bug 1419285はFirefox 58で修正された。extensions.webextensions.remoteの設定がtrueのままでも、はてなブックマーク拡張への日本語入力は正常に行える。設定を変更している場合は、1月下旬にFirefox 58へアップデートした際、元に戻しておくべきだろう。

Firefox Quantumでトラッキング防止機能の全面有効化が可能に

トラッキング防止の新設定

Firefox 42以降、プライベートブラウジングモードではトラッキング防止機能有効化されるようになっているが、Firefox Quantumでは通常モードでもこの機能を有効化する設定が追加された(Bug 1393627)。トラッキング防止機能を有効化した場合、たとえばGoogleアナリティクスなどもブロックされるが、目に見える効果として大きいのは、一部の広告が出なくなる点だろう。

設定を開くには、まずFirefoxのウィンドウの上部右隅からメニューパネルを開き、歯車のアイコンがついた「オプション」をクリックする。次いで南京錠のアイコンがついた〔プライバシーとセキュリティ〕をクリック。画面を下にスクロールさせていくと、トラッキング保護*1の欄が出てくる。初期設定は「プライベートウィンドウのみ」になっているが、これを「常に」に変更するとトラッキング防止機能が有効化される。

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Firefox Quantumの新しいトラッキング防止設定画面

ちなみに、『ブロックリストを変更』というボタンを押すと、リストの選択画面に移る。初期設定は簡易ブロックだが、より強力な広範ブロックを選ぶことも可能だ。*2

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ブロックリストの選択画面

トラッキング防止機能の効果を確かめるため、同一のWebページで有効・無効を切り替えてみよう。本機能が無効(初期設定)の場合、記事の上側や右側に広告が表示されるのは、よくあることだ。本機能を有効化するとそうした広告が除去され、これに伴ってページの読み込みも高速化される。

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左:初期設定 右:トラッキング防止機能有効

トラッキング防止機能が働いているときは、アドレスバーに盾のアイコンが表示される。サイト単位で有効・無効の切り替えを行うこともできるので、ふだんは有効化しておき、表示が崩れる場合だけ機能を無効化するといった使い方も可能だ。機能を有効化した直後にチュートリアルが出るようになっているので、内容を覚えておこう。

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トラッキング防止機能のチュートリアル

Polarisイニシアティブの到達点

Firefoxのトラッキング防止機能は、提携先であるDisconnectトラッキング防止リストを使用している。追跡者のリストはオープンにされており、見直されることもある。また、すべての追跡者がシャットアウトされるわけではなく、Do Not Track(DNT)の設定を尊重するWebサイトが除外されるほか、ユーザーの利便性も考慮されているようだ。

Mozillaは、ユーザーのオンラインプライバシーの保護向上を目的とするPolarisイニシアティブの一環として、2014年11月にこの機能の開発をアナウンスし、前述のとおりFirefox 42で製品版に取り込んだ後も、全面有効化に向けた研究・開発を続けてきた。Firefox Quantumに導入された設定画面も、2016年1月にFirefox Nightly 46(開発版)で実装されていたものだ。

2016年9月下旬にはTracking ProtectionがFirefox Test Pilotの実験に追加され、2017年2月中旬まで実験が続けられた。そこで得られた知見は、"Test Pilot Tracking Protection Graduation Report"という記事にまとめられている。実験の際、ユーザーがトラッキング防止機能を無効化したWebサイトは少なかったようだが、ユーザーからのフィードバックを受けたMozillaがDisconnectと協議し、たとえばTwitterに投稿された画像がブロックされないように調整したそうだ。

その後も1万9000人以上を対象にした詳細な実地試験を経て、2017年8月にはトラッキング防止機能を有効化しても、恐れていたほどWebサイトの表示は崩れないとの結論が得られた。この結論がFirefox Quantumにおける設定追加の前提となっているとみられる。

Firefox Quantumでトラッキング防止機能の全面有効化が可能となった背景には、こうした過去の研究・開発の積み重ねがある。Polarisイニシアティブの1つの到達点と言えるだろう。拡張機能を入れなくても、設定を変更するだけで実効性のあるプライバシー保護の措置を講じられるというのは、素晴らしいことではないだろうか。

(17/11/23追記)
本記事掲載後、Firefox Private Browsing vs. Chrome Incognito: Which is Faster? - The Mozilla Blogが速度向上に焦点を当ててトラッキング防止機能を紹介している。速くなったと評判の「Firefox Quantum」をもっと速く使う方法が明らかにされる - やじうまの杜 - 窓の杜がこれを比較的詳しく取り上げているが、要するにMozillaに調査によれば、ページの読み込みに要する時間が半分以下になったという。

また、Tracking Protectionの公式な訳語が、「トラッキング保護」から「トラッキング防止」に変更されることになった。関係者の迅速な対応に感謝したい。

*1:本記事ではあえて公式とは違うトラッキング「防止」の呼称を用いている。通常、プライバシー保護といえばプライバシー「を」保護することを指すが、ここでいうトラッキング保護機能は、トラッキング「から」ユーザーを保護するものだ。プライバシー保護のためのトラッキング保護機能という呼び方は、どうも据わりが悪い。

*2:リストの切り替えには本体の再起動を要するが、Firefox 58では不要になる(Bug 1363969)。

旧式拡張機能からの移行例

新形式の長所と短所

Firefox Quantumでは旧式の拡張機能が一切使えないようになっており、サポートされるのはChromeの拡張機能と共通する部分の多い新形式(WebExtensions)のものだけだ。Firefox 56以前で使用していた拡張機能が既にこの新形式に移行している場合はいいが、そうでなければ同じような機能を提供する別の拡張機能を探す必要がある。

もっとも、新形式の拡張機能は従来よりも制約が大きい。旧式拡張機能の時代に、Firefox本体を大幅に書き換えることさえ許容していた結果、さまざまなバグの温床となったうえ、拡張機能の互換性を維持することが重荷にもなっていたことに対する反省を踏まえ、新形式では拡張機能ができることを絞ったのだ。特に、Firefox本体のユーザーインターフェイス(UI)にはごく限定された範囲でしか介入できないようになっている。そのため、従来のようなオールインワン型の拡張機能(Tab Mix Plusなど)は作成が極めて難しくなっている。

新旧の差は相当なもので、旧式拡張機能の新形式への移行は同じコンセプトの拡張機能を作り直すのに等しいという意見が出るほどだ。しかも、Firefox 56までの間に新旧のハイブリッド形式に移行しておかないと、設定の受渡しもできない。

その代わり、拡張機能のインストール・アンインストールや有効・無効の切り替えの場面で、Firefox本体の再起動が例外なく不要となった。これによって、新しい拡張機能を気軽に試すことができるし、一部の拡張機能をふだんは無効にしておいて、必要になったら有効化するといった使い方でも支障がなくなる。それに、拡張機能がFirefox本体の速度や応答性を低下させる度合いは、かつてと比べ大きく軽減されている。

新形式の長所はそれだけにとどまらない。拡張機能の互換性が重視されているので、たとえば今インストールした拡張機能が2年後にも正常に動作している可能性は高いだろう。安定性の面では、今のところWindows版のみだが、拡張機能全体に1つの独立したプロセスを割り当てているため、Firefox本体を巻き込んで落ちるケースも少なくなるはずだ。加えて、Firefox Syncを利用して拡張機能が設定を同期させることも容易になった。

筆者のケース

今まで使っていた拡張機能がバージョンアップしないとか、バージョンアップしても機能が限定されてしまったという場合、前述のとおり新形式の拡張機能には仕様上の限界があるので、好みの環境を作り上げていくには、単機能の拡張機能を新たに見つけ出して、うまく組み合わせる必要がある。

Firefox Quantum以降、本体のアドオンマネージャーには〔旧式の拡張機能〕欄に「代わりのアドオンを探す」というボタンが付いており、新しい拡張機能を見つける際の助けになってくれる。また、英語が前提ではあるがExtension Finderというツールもある。

筆者の場合、Firefoxの開発版を常用しているので、早い段階から旧式拡張機能の廃止という問題に取り組まねばならなかった。現在も試行錯誤の途中ではあるが、インストールしている拡張機能は、ひとまず次のようなリストに落ち着いている。

Adblock Plusは言わずと知れた広告ブロッカーだ。uBlock Originも新形式に対応しているので、どちらを取るか迷うところではある。新規にインストールするのであれば、ABP Japanese filtersの設定が簡単なuBlock Originのほうがよいかもしれない。

Chrome Store Foxifiedは当ブログで過去に紹介したことがある。Chromeウェブストアに登録されている拡張機能を、いわば強引にFirefoxで動かすためのツールだ。"Feedly はてブ"はこのツールを用いてFirefox版に変換したものを使っているが、ブックマーク数は問題なく表示されている。

Close Tabs to the Leftは左側のタブをすべて閉じる機能を追加するもの。個人的にはそこそこ使うので、オプションとしてFirefox本体に取り込んでほしい。

Font Finder (revived)はWebページ内で用いられているフォントを調べる際に使う。できればChrome向け拡張機能であるWhatFontのようなものが欲しいところ。あるいは、ウェブ開発ツールのインスペクターにこの機能が入っているべきなのかも。

Gesturefyはジェスチャー機能を追加してくれる。作り込まれた設定画面を備えており、マウスジェスチャーやホイールジェスチャーのカスタマイズも可能だ。筆者はホイールジェスチャーにタブの切り替えを当てていて、コンテンツ内でマウスの右ボタンを押したままホイールを回すことによって、タブの切り替えが行われるようにしている。

HoldTabは現在のタブ以外のタブについて、読み込みを保留しておけるので、たくさんのブックマークを一気に開く場合に重宝する。ただ、リンクを新しいタブで開くだけでも保留になってしまうため、ふだんは無効にしている。

In My Pocketは、かつて存在していた公式拡張機能のように、Pocketに保存した記事をリスト表示し、保存済み記事のURLを開いたときはアイコンの色が変わって知らせてくれる。これらの機能もFirefox本体に備わっているべきだと思う。

Neat URLはWebページのURLにくっついているパラメータを自動的に除去する。設定画面で対象パラメータを指定できる点もポイントが高い。余計なものを取り払うことで、そのページがはてなブックマークに登録済みかどうかの判別もしやすくなる。

Open in Google Chrome BrowserとOpen in MS Edge™ Browserは、文字通り現在開いているURLを他のブラウザで開き直すものだが、利用の前にNode.js製のネイティブクライアントをインストールしておかないといけない。各OS用のものが用意されていて、Windows版だとバッチファイルがあるので、インストール・アンインストールは難しくない。が、外部のアプリケーションと連携する際にこうした手間がかかるのは、新形式の拡張機能のデメリットだ。

Selection Context Searchは選択した文字列を既定以外の検索エンジンで検索可能にする。ユーザー側で検索用のURLを指定せねばならず、コンテキストメニューに表示される項目を調整する手間もかなりかかるため、不満もあるのだが、既定のGoogle以外に「英辞郎」と「Wikipedia」と「Bugzilla@Mozilla」を検索に含めたいというマニアックな要求を満たす方法としては、今のところこれしかない。

Tab Saverは特定のウィンドウにおけるタブ列のURLを一括して保存するツールだ。タブ列には年月日と日時(分単位)によって構成された表題が自動的に付加される。OneTabをシンプルにした感じで、Webページのタイトルやセッション情報も保存されないし、1分あたり1つしかタブ列を保存できない欠点もあるものの、操作の手軽さが気に入っている。

Tampermonkeyはユーザースクリプトの管理と実行を担う。Greasemonkeyが新形式に移行する際にスクリプトの互換性を犠牲にしてしまったので、乗り換えた。といっても、組み込んでいるスクリプトはDirect GoogleとTwitter原寸びゅーくらいだが。

Translate Nowは指定した翻訳エンジンによって翻訳されたWebページを別タブで開く。ドイツ語で書かれたsoeren-hentzschel.atの記事をGoogle翻訳で英語に変換して読むのに使っているが、本当はChromeのように自動翻訳機能をFirefox本体に実装してほしい。

uAutoPagerizeは次のページを自動的に読み込んで、現在のページに継ぎ足してくれる。設定画面で実行しないページを指定することも可能だ。旧式拡張機能の時代には同種のものがいくつかあったと記憶しているが、新形式に対応したものは今のところこれだけではないか。

"URL をクリップボードにコピー"は、主にドキュメント自体のURLをHTML形式でクリップボードにコピーしたいときに使う。テキストをあらかじめ選択しておくと、リンクの内容に反映される点もよい。

"ZoomImage - 画像拡大"はページ内画像の拡大だけでなく縮小・回転もこなす。画像を浮かせる機能もある。ただ、筆者の環境ではGesturefyのホイールジェスチャーとキー設定が衝突してしまう。

"テキストリンク (Text Link)"は、リンクになっていないURLをダブルクリックすることで、そのURLが新しいタブに読み込まれるというもの。信頼と実績のPiroブランドである。

"はてなブックマーク"は、はてなブックマークの公式拡張機能であり、Chrome版を移植したため従来のものとは使い勝手が大幅に変わっている。タブを切り替えるとブックマークコメントの入力ウィンドウが閉じてしまう仕様だけは何とかならないものか。

お役御免となった拡張機能

前記の新環境となった結果、FireGesturesはGesturefyに、GreasemonkeyはTampermonkeyに、image-resizerは"ZoomImage - 画像拡大"に、Load Tabs Progressively FixedはHoldTabに、Make Linkは"URL をクリップボードにコピー"に、Open WithはOpen in Google Chrome BrowserとOpen in MS Edge™ Browserに、それぞれ置き換えられた。

また、長らく使用してきたSave Sessionについては、「以前のセッションを復元」の項目がFirefox Quantum以降メニューパネルの最上位の階層に配置されるようになったこともあり、Tab Saverに道を譲ってもらうことにした。

他方で、移行ができなかった拡張機能もある。Clear Fields(フィールドの消去)、Configuration Mania(本体設定のチューニング)、FEBE(拡張機能のバックアップ)、IME自動無効(アドレスバーのフォーカス時にIMEを無効化)、Menu Wizard(コンテキストメニュー等の項目の並べ替えや隠蔽)は、Firefox本体のUIや設定をいじらせないというMozillaの方針により、機能的に実現不可能となった。新形式への移行はもちろん、代替拡張機能も存在しない。

マルチプルタブハンドラ (Multiple Tab Handler)についても、ツリー型タブ (Tree Style Tab)との連携にフォーカスされて使い勝手が変わってしまったので、移行を見送った。Firefox Quantumだとタブの複製機能は本体に実装されているし、左側のタブをすべて閉じる機能はClose Tabs to the Leftで間に合っている。将来的にタブの複数選択機能もFirefoxの標準機能に加わる見込みなので、しばらくの辛抱だ。

(17/11/26追記)
本記事執筆後、Selection Context Searchの代わりにContext Search WebExtensionを導入した。検索サービスを提供するWebサイトの検索窓からブックマークの"Searches"フォルダに、キーワードを設定した項目を登録しておくと、文字列選択時のコンテキストメニューにそれらが出てくる。検索サービスの管理がしやすく、上記フォルダ内に区切り線を入れておくとそれも反映されるので便利だ。

このように、本文のリストはあくまで本記事執筆当時のものなので、より便利な拡張機能が出てくれば乗り換えるのは当然だ。そこで、最新版を"Must-have Extensions"で公開することにした。Mozilla Add-ons(AMO)のコレクションである。よければ参考にしてほしい。

ちなみに、筆者の環境のユーザースクリプトについてだが、Direct Googleには引退してもらい、Google: Bypass Result Page Redirectgoogle cache comebackを追加したので、本文からDirect Googleを削除した。なお、参考記事も1つ追加した。